三光汽船 私的整理へ
2012/03/12 事業再生・倒産, 倒産法, 破産法, その他
概要
中堅海運会社の三光汽船(東京都)が、第三者機関の「事業再生ADR」を活用し、金融機関による支援で再建を目指す私的整理に入る方針を固めたことが9日、分かった。週明け12日にも発表する。
三光汽船は、自民党衆院議員の故河本敏夫氏が事実上のオーナーだった1985年8月に会社更生法の適用を申請して経営破綻。負債総額5200億円は当時、戦後最大だった。
同社は98年に更生手続きを終了し、事業を縮小して業務を続けてきた。
しかし、再び苦境に陥り、11年3月期連結決算の売上高は1247億円、純損益は141億円の赤字だった。
海運業界では、コンテナ船の供給過剰で運賃が大幅に下落し、大手海運会社も軒並み最終赤字となっている。
ADRは、過剰な債務を抱えて経営不振に陥った企業などが事業を継続しながら再生を目指す手法の一つ。会社更生法などの法的整理に比べて手続きの期間が短く、早期の再生が期待できる。
雑感
<海運不況>
燃料価格の高騰や円高などが重なり、海運各社の業績を悪化させているが、大きな要因となっているのは、主力事業の一つであるコンテナ船・アジア~欧州航路での運賃暴落である。
リーマンショック前の07年、海運業界は好況にわき、コンテナ船を大量発注した。その頃に発注したコンテナ船が今になって続々と完成しており、船が供給過剰になっている。この供給過剰により、運賃は前年より3割も落ち込んでいる。
ただ、供給過剰にもかかわらず、業界トップのマースク(デンマーク)はなおも大量発注を続けている。それはなぜか。
市況が悪化しているときは、船価も安いということが一つの理由だろう。
さらに、業界トップの力を活かして価格競争を持ちかけ、脱落者が出てくるのを待ち、自社の占有率を上げようとしているのではないかとも言われている。
日本の海運各社はこの我慢比べに耐えることができるのか。注目である。
<ADRとは>
「ADR」とは、「裁判外紛争解決手続(Alternative Dispute Resolution)」の略称で、訴訟や法的倒産手続のように、裁判所による強制力を持った紛争解決の手続を利用することなく、当事者間の話し合いをベースとして、紛争を解決しようとする手続の総称。
ADRのメリット
◯商取引を円滑に続けられる
通常の私的整理と同様に、本業をそのまま継続しながら、金融機関等との話し合いで
解決策を探れる
◯信頼性
法的整理を担う実務家と同レベルでの監督の下で進められる手続である
◯意見がまとまらない場合にも対応できる
意見がまとまらなければ、裁判所を利用した手続(特定調停や法的整理)に移行し、
ADRの結果を尊重して頂くことも可能
◯原則として、債権放棄による損失の無税償却が認められる
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