近時の企業カルテルの様相が語るものとは。
2012/06/20 独禁法対応, 独占禁止法, その他
事案の概要
先月末から、企業カルテルに関する公正取引委員会の審決・告発が相次いでいる。
眠れる官庁と揶揄されていたのも今は昔。近年、公取委はカルテルについても積極的な取締活動を展開している。
1、溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯の製造販売業者による価格カルテル
6月13日、公取委は、A社に対して排除措置命令および課徴金納付命令の取消しを求める審判請求を棄却する審決を下した。
事案は、A社が他の事業者と共同して、「建材製品製造業者向け特定カラー鋼板のひも付き取引」での販売価格を引き上げる旨のカルテルを行ったというものである。
審判では、他の事業者が行っていたカルテルにつき、A社の合意参加があったかが争点となった。公取委は、①A社が他社とのカルテル会合に参加していなかったものの、懇親会に参加したり、他社と個別に接触を図って価格の情報交換をしていたこと、②A社の担当者が、会合に参加していなくても合意内容の連絡を受ける意思がある旨発言していたこと等の事実を認定し、カルテルの要件である合意があったとしている。
2、軸受製造販売業者による価格カルテル
6月14日、公取委は、B社ほか2社と、犯罪時に軸受販売業務に従事していた7名を、不当な取引制限の罪(独占禁止法89条1項1号、同3条)で検事総長に告発した。
事案は、B社ら3社が、平成22年5月下旬から8月下旬ころまでの間に、東京都内で会合を開催し、産業機械用軸受および自動車用軸受の販売価格を一定の割合・価格に引き上げる合意をなしたというものである。
3、塩化ビニル樹脂向けモディファイヤーの価格カルテル
5月13日、公取委は、C社に対して5億4361万円の課徴金の納付を命じる審決を下した。
元の事案は、モディファイヤーの原料価格上昇を受けて、平成11年中旬ころと12年夏から秋ころの2度にわたり、C社ほか2社の担当者が、互いに訪問する等の方法によって、モデルファイヤーの価格引き上げについての合意をなした、というものである。
コメント
価格カルテルが成立するには、当事者となる事業者間で合意(意思の連絡)があることが必要となる。そして、意思の連絡には、明示の合意がある場合と、黙示の意思の連絡がある場合の2タイプがあるとされている。過去の裁判例(東芝ケミカル審決取消事件・東京高裁判決平成7年9月25日)が後者についても合意の存在を認めたのは、今後、カルテル合意形成の方法が巧妙化し、隠密性を高めていくことに対応する余地を残すためであると考えられる。
そこで、上記3つに挙げた近時の例を見てみると、いずれも事業者の担当者が何らかの形で顔を合わせて、その場で明確な合意をなしていることが分かる。
時代が下っても、上記のような比較的「分かりやすい」カルテルが繰り返されている現状は、企業社会において、経済法令の遵守意識が必ずしも高まっていないことを物語っているのではないだろうか。
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