大手損保各社、新規の中国暴動特約を停止及び既契約企業への保険料の値上げ検討
2012/10/05 海外進出, 民法・商法, 金融・証券・保険
事案の概要
9月での相次ぐ中国での日本企業への暴動事件を受けて、大手損保各社は中国での暴動被害を補償する保険の新規契約を中止、及び既契約企業に対しても今後契約更新を迎える企業も含めて保険料の引き上げを検討する。
近年中国に進出している日本企業は8月末時点で1万4394社、近年では年間約2000社が新たに進出している。通常の企業向け損害保険では、暴動による被害は補償の対象外だが、SRCC(ストライキ危険)特約に入ると、暴動やストライキによる物的損害や工場や店舗の休業で失った利益の補償を受けられる。中国進出している大半の企業は、このSRCC特約付き火災保険をかけている。このSRCC特約付き火災保険の新規契約や補償額を積み増しを中止し、特約部分の保険料の引き上げも検討している。現在は契約企業の被害調査を優先して進めており新規契約の再開は、年明け以降になるという。
かかる損保各社の措置の背景として、9月の中国での相次ぐ反日デモにより日本企業の商業施設や工場が従来の想定を超える被害を受け、保険料の支払いリスクが増している事や、補償額の一部を肩代わりする再保険会社も、日本企業が襲われるリスクが高まっている事(これをジャパンプレミアムという)から再保険料を引き上げる事で、損保各社の再保険料の支払い負担が増しているため契約企業から受け取る保険料を引き上げざるを得ないという事情がある。
このような事態の発生により、新たに中国に進出する企業はいわゆる「無保険状態」となり、近年の中国の景気減速や人件費の高騰などと相まって、今後の日本企業の中国戦略に大きな影響を与えそうだ。
コメント
新規のSRCC特約を停止及び保険料引き上げは、既に中国に進出している企業及び今後進出を予定している企業への影響は非常に大きい。
無保険状態で進出する事や人件費高騰のリスクを冒してでも、収益が臨めるのか、慎重な選択を迫られている。中国戦略から東南アジア各国への進出の方に海外戦略を変更する企業も今後更に多くなるのではないか。
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