企業に差止め求める適格消費者団体が11団体に 訴訟リスクの見きわめがポイント
2012/11/15   消費者取引関連法務, 消費者契約法, その他

事案の概要

消費者庁は 平成24年11月13日に、消費者契約法の規定に基づき、NPO法人消費者支援機構福岡が適格消費者団体として新たに認定されたと発表した(下記関連リンク参照)。

今回の認定により、適格消費者団体の数は11団体となる。

コメント

適格消費者団体は平成18年の法改正により消費者団体訴訟制度が導入され、平成19年6月より運用されている。運用開始から5年半で11団体の認定と徐々に認定数を伸ばしている。現在、認定の申請をしている消費者団体はないものの、消費者保護が叫ばれる中、認定消費者団体の増加が予想される。

従来、消費者は企業から損害を受けた場合、個人で対応するしかなく、仮に訴訟を起こすとすると訴訟に個人で対応するための精神的、金銭的、時間的負担を負うことになっていた。消費者被害は個人個人の被害額は高額でないことも多く、消費者は上記のような負担を負ってまで訴訟を起こすことをためらう傾向にあった。

しかし、消費者団体訴訟制度が導入されたことによって、消費者は自ら訴訟を起こす負担を負うことなく、損害を申し出ることで企業の行為の差し止めを求めることができる。消費者団体訴訟制度が使われた場合には訴訟に伴う金銭的負担は適格消費者団体が負うことになるが、適格消費者団体は消費者支援基金の助成を受けることができる。この基金は企業や個人からの寄付金によって賄われている。

そのため、消費者は適格消費者団体に積極的に損害を申し出て差止めを求めることが想定され、適格消費者団体としても助成を受けることができるので訴訟に踏み切るハードルは従来よりも大幅に低くなっている。京都市消費者契約契ネットワークがKDDIに対して携帯電話利用サービスの2年契約で一定の場合以外は違約金が課される条項にかかる意思表示の差止めを求めた事案において、京都地方裁判所が一部差止めを認める判決を出したことが記憶に新しい。

さらに、消費者団体訴訟制度は消費者が適格消費者団体に差止め請求権を委譲する制度であると思われるので、依然として消費者には企業に対する損害賠償請求権や違法行為確認請求権があると考えられる。そうすると、企業としては紛争の相手方が増えるというリスクも同制度には存在している。もっとも、平成23年内閣府消費者委員会は適格消費者団体が消費者に代わって違法行為確認請求がなしえ、それが認められれば消費者の申請をもとに企業に対する損害賠償請求を認める新制度案をまとめていることから、紛争相手増加のリスクは減ると思われるが、一方で消費者団体訴訟制度が実効的な制度になればそれだけ適格消費者団体から訴えられるケースが増えることになる。

このように、法務担当者は従来に比べて訴訟リスクを慎重に見極める必要がある。新制度の行方も注視しておく必要がある。

関連リンク

  • 消費者庁ニュースリリース「新しい適格消費者団体の認定について」(PDFファイル)(リンク切れ)→アーカイブ(PDFファイル)

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