不正「B-CASカード」訴訟
2013/05/10 訴訟対応, 不正競争防止法, その他
事案の概要
2013年5月9日
テレビの有料放送を無料で視聴できる不正な「B-CASカード」を販売したとして、不正競争防止法違反などの罪で有罪判決を受けた東京都内の男2人(37歳男性、44歳男性)に対して、WOWOW、スター・チャンネル、スカパーJSATの3社は9日、37歳男性には162万4348円、44歳男性には177万2181円の支払いを求める損害賠償請求訴訟を起こした。有料放送事業者が不正B-CASカード問題で、民事訴訟を提起するのは初めてである。
WOWOW側は記者会見で「有料放送を不正に見ることは犯罪だということを広める目的もある」と話し、今後、別の有罪確定者に対しても順次訴訟を起こしていく方針を示した。
B-CASカードを発行・管理する「ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ」も同日、不正カードかどうかを調べる鑑定料など諸経費174万~240万円の支払いを同じ男らに求める訴訟を提起した。
解説・コメント
今回の不正「B-CASカード」の販売はテレビの有料放送を不正に無料で視聴させるものであるから、「技術的制限違反に対する不正競争行為」(不正競争防止法2条11号 ※下記の関連条文参照)にあたる。
そして、同行為は「不法行為」(民法709条 ※下記の関連条文参照)にも該当する。
WOWOWをはじめとする3社は同条を根拠に損害賠償訴訟を提起している。
有料放送事業者が不正B-CASカード問題で、民事訴訟を提起するのは初めてである。
今回の事件はテレビの有料放送を無料で視聴できる不正な「B-CASカード」の販売であったが、有料放送への不正な視聴手段は不正「B-CASカード」によるものに限られない。
そのひとつに無料動画サイトへの投稿が一例として考えられる。
有料放送の音声映像がインターネット上の無料動画サイトに掲載されれば、不特定多数の者が無料でそれを視聴できてしまう。
更に、一度上がった動画は共有・拡散する傾向にあるので、元の投稿動画を消しても再び別の者が投稿するという事態になる。
結果、一度ネット上に投稿された動画は事実上半永久的にそこに残ってしまうことになる。
これは不正競争防止法ではなく著作権法侵害の問題となるが、無料視聴者が不特定多数になる点で、その問題はより深刻といえるかもしれない。
関連条文
不正競争防止法2条11号(技術的制限違反に対する不正競争行為)
「他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴…をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴…を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を当該特定の者以外の者に譲渡し、引き渡し、…行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。) 」 ※
※今回の事件について適用される部分についてのみの抜粋
民法709条(不法行為)
「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 」
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