ブラック企業から若者を救え!-ブラック企業被害対策弁護団結成-
2013/08/06 労務法務, 労働法全般, その他
事案の概要
心身を破壊する程の過酷労働の強制、パワーハラスメントによって労働者が使い潰されるブラック企業が、社会問題化している。そのブラック企業の被害者を支援すべく、労働問題に詳しい若手弁護士たちが、先月31日に「ブラック企業被害対策弁護団」を結成し、記者会見を開いた。弁護団には、北海道から長崎県まで50人を越える弁護士が参加している。このほか、ブラック企業問題に取り組むNPO法人「POSSE(ポッセ)」や、労働組合とも連携を組んでいる。
被害者の多くは、大学や専門学校を卒業したばかりの若者である。就職難で、違法状態の職場でも我慢して働く者が増え、早期離職や過労死増加の要因の1つとなっている。しかも、労働組合がないなど訴え出る手段がなく、ほとんどが救済されないという。
弁護団は、「ブラック企業」を「違法な労働を強い、労働者の心身を危険にさらす企業」と広く定義し、年齢や就業形態に関わらず、幅広く相談に応じる。また、被害者が多い企業に対しては、集団訴訟を起こすことも検討している。さらに、このような相談・助言や、訴訟提起という弁護士ならではの活動のみに留まらず、人権侵害を前提とした企業活動の横行を防止すべく、被害事例や情報の集積を通じて、法律や政策の提言を行うことも予定している。
コメント
今回のように弁護団が結成されることで、被害者からの相談や被害、請求をまとめることができる。そうすることで社会に対するインパクトもより大きく、企業が賠償に応じるケースもあり得るため、今後の動向に注目すべきニュースである。
しかし、このようにブラック企業が社会問題化することで、労働者保護の機運が高まりすぎ、過度にブラック企業と認定して企業活動を萎縮させてしまうこともあり得る。ブラック企業という言葉そのものは、抽象的なレッテルに過ぎない。したがって、どのような場合がブラック企業にあたるのか、具体的な基準が必要となる。
先日行われた参議院議員選挙では、自民党がブラック企業対策の提言を出していたが、マニフェストからはそれがすっぽり抜け落ちてしまっていた。基準作りのきっかけになると思われただけに非常に残念なことである。しかし、本当に救済が必要なケースかどうかの見極めは、労使双方にとって重要な問題であり、公的機関による明確な基準作りは必要であると考える。弁護団の今後の活動と共に、政府がどのような対策を打って出るかにも注目したい。
この弁護団結成が、労使双方にとって、互いに敬意をもって働ける環境づくりのきっかけになることを願うばかりである。
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