消費者庁が異例の対応、楽天に不当価格表示に適正化要請
2014/05/01 広告法務, 消費者取引関連法務, 景品表示法, その他
事案の概要
インターネット仮想商店街「楽天市場」において楽天社員が出店事業者に不当な二重価格を提案した問題について、楽天の内部調査報告を受けた消費者庁は4月30日、同社に対して表示適正化に向けた再発防止策の徹底を要請する異例の措置を行った。
問題の不当価格表示は、昨年11月のプロ野球球団・楽天イーグルスの日本一を記念したセールにおいて発覚したもので、出店事業者が販売実績のない架空の価格を併記することで実際の価格を安く見せかけていると判断されるおそれのある表示であった。販売価格の安さを強調するために架空の比較対象価格を併記する行為は景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)により禁止されている。
不当価格表示の発覚につき楽天は内部調査を実施し、社員18人が28業者に二重価格表示を持ちかけていたという調査結果と、営業倫理委員会の新設などの再発防止策を合わせた報告を、4月25日に消費者庁に対して行っていた。事態を重く見た消費者庁は、「具体的な違反行為は把握できなかった」との楽天の報告を受けて、事実確認が難しく現時点で景品表示法に抵触すると断言はできないものの、再発防止のために要請に踏み切った。
なお、楽天は24日付で常務執行役員ら役員4人を6カ月間10%の減俸処分とし、関与した社員と業者の処分については見送ったことを、4月25日に発表している。
コメント
インターネットを使った通信販売用Webサイトの増加に伴い、1999年2月改正でインターネット上の広告・宣伝も景品表示法の規制の対象となったが、不当な二重価格表示はそれ以前から問題として、景品表示法に基づき行政からの処分を受けてきた。紳士服やメガネなど処分対象の表示は多岐にわたる。二重価格表示それ自体は消費者の適正な商品選択や事業者間競争を促進するものであるが、不正があれば消費者に対し極めて背信的な行為となってしまう。コンプライアンス上、価格表示には十分に注意したいところである。
関連条文
不当景品類及び不当表示防止法
第四条 第一項
事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二重価格表示についての公正取引委員会の処分例
①小売業者が加工食品10品目及び日用雑貨品14品目につき新聞折込チラシで比較対象価格に「平日価格」として実際の販売価格より著しく高い価格を併記していたところ、比較対象価格は最近相当期間販売実績のない価格であり一般消費者に販売価格が著しく有利であると誤認させるものであるとして、表示が誤認させるものであった旨の公示と再発の防止を命令した処分。(排除命令 平成16年4月13日 平成16年第7号)
②小売業社が新聞折込チラシで背広服の販売価格について比較対象価格に「自店通常販売価格」として著しく高い価格を併記したところ、比較対象価格は架空のものであり、実際の販売価格を著しく値引きされた価格のように見せかけているとして、誤認を与えるものであった旨を公示し、今後同様の表示をしないように命令した処分。小売業者は不服として審判で争うも、勧告を受け入れる。(同意審決 平成6年4月20日 平成6年第3号)
関連コンテンツ
新着情報
- 弁護士
- 水守 真由弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号
- セミナー
- 石黒 浩 氏(大阪大学 基礎工学研究科 システム創成専攻 教授 (栄誉教授))
- 安野 たかひろ 氏(AIエンジニア・起業家・SF作家)
- 稲葉 譲 氏(稲葉総合法律事務所 代表パートナー)
- 藤原 総一郎 氏(長島・大野・常松法律事務所 マネージング・パートナー)
- 上野 元 氏(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 パートナー)
- 三浦 亮太 氏(三浦法律事務所 法人パートナー)
- 板谷 隆平 弁護士(MNTSQ株式会社 代表取締役/ 長島・大野・常松法律事務所 弁護士)
- 山口 憲和 氏(三菱電機株式会社 上席執行役員 法務・リスクマネジメント統括部長)
- 塚本 洋樹 氏(株式会社クボタ 法務部長)
- 【12/6まで配信中】MNTSQ Meeting 2024 新時代の法務力 ~社会変化とこれからの事業貢献とは~
- 終了
- 2024/12/06
- 23:59~23:59
- 弁護士
- 髙瀬 政徳弁護士
- オリンピア法律事務所
- 〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内一丁目17番19号 キリックス丸の内ビル5階
- 解説動画
- 大東 泰雄弁護士
- 【無料】優越的地位の濫用・下請法の最新トピック一挙解説 ~コスト上昇下での価格交渉・インボイス制度対応の留意点~
- 終了
- 視聴時間1時間
- ニュース
- 厚生労働省、企業にカスハラ対策義務化へ2025.1.10
- NEW
- カスタマーハラスメント、通称“カスハラ”。顧客や取引先などから過剰な要求を受ける、不当な言いが...
- 業務効率化
- ContractS CLM公式資料ダウンロード
- 業務効率化
- 鈴与の契約書管理 公式資料ダウンロード
- まとめ
- 独占禁止法で禁止される「不当な取引制限」 まとめ2024.5.8
- 企業同士が連絡を取り合い、本来それぞれの企業が決めるべき商品の価格や生産量を共同で取り決める行...
- 解説動画
- 加藤 賢弁護士
- 【無料】上場企業・IPO準備企業の会社法務部門・総務部門・経理部門の担当者が知っておきたい金融商品取引法の開示規制の基礎
- 終了
- 視聴時間1時間