中部電力が維持流量発電所着工、改正河川法は小水力発電普及の嚆矢となるか
2014/05/08 法務相談一般, 民法・商法, その他
事案の概要
中部電力は岐阜県阿多岐ダムに併設する「阿多岐水力発電所」新設工事に関して、河川法に基づく着手届を岐阜県に提出し、5月1日に着工したことを発表した。小水力発電のための水利に関する手続きを許可制から登録制と変更した河川法改正が4月に施行されてから岐阜県内では初となる小水力発電所が着工されたことになる。
国土交通省は以前から発電用ダムの建設などの大規模コストをかけずに、河川や水路の流水を効果的に利用し発電を行える小水力発電を促進すべく法改正に取り組んできていた。4月から施行されている河川法の改正では、既に別の水利使用で河川管理者(国や自治体)から許可が下りている者が新たに小水力発電の水利使用を行おうとする場合においては、許可でなく登録を行えばよいように変更がなされた。他の水利使用に従属するいわゆる従属発電のための手続きが改正により円滑に行えるようになったことになる。
阿多岐ダムは大型の発電設備を持つ発電を目的としたダムではなく、河川環境の保全を目的としたいわゆる治水ダムとして昭和63年から管理が行われてきたが、今回の発電所は阿多岐ダムの維持流量(※注)を利用した小規模水力発電を行うものである。中部電力は2012年11月の段階で当該発電所の建設を発表しており、改正河川法施行後、登録制度を用いて速やかに着工へと移った。中部電力は2015年6月の運転開始を予定している。
※維持流量とは、渇水時であっても河川環境の保全のために常に維持される河川の流量のことである。流量の維持のためダムは一定量を放水し続けることになるので本事案ではこれを発電に用いることになる。
コメント
小水力発電は農業用水路など流量の少ないところでも発電が行える再生可能エネルギーとして注目を集めている。今回の発電所は既存の電力事業者による、ダムを利用した比較的大きなものと考えられるが、基本的に大きな初期投資のいらない小水力発電は発電事業への新規参入を考えるに当たっては魅力的であろう。農業法人など既存の水利使用がある事業者にとっては4月施行の改正法で参入も非常に円滑に行える体制が整ってきたといえる。
関連条文
河川法
(流水の占用の許可)
第二十三条 河川の流水を占用しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。ただし、次条に規定する発電のために河川の流水を占用しようとする場合は、この限りでない。
(流水の占用の登録)
第二十三条の二 前条の許可を受けた水利使用(流水の占用又は第二十六条第一項に規定する工作物で流水の占用のためのものの新築若しくは改築をいう。以下同じ。)のために取水した流水その他これに類する流水として政令で定めるもののみを利用する発電のために河川の流水を占用しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の登録を受けなければならない。
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