高速改修に向け民間の投資を呼び込みへ、道路法等改正が成立
2014/05/29 法改正対応, 法改正, その他
事案の概要
首都高速道路等の高速道路老朽化の改修に向け、改修費用補填のため既存の高速道路高架下や上部空間を利用できるようにする規制緩和などを含んだ、改正道路法をはじめとする関連法が28日の参議院本会議で成立した。これにより道路空間の商用利用の促進が進み、利用料により莫大な高速道路改修費用の負担が緩和されることが期待される。今後は鉄道のガード下や駅ビルのような空間の利用の仕方が高速道路でもさらに期待される。また本改正では高速道路の計画的な更新のための財源確保のために料金体系を見直したり、管理コストの少ないスマートインターチェンジの導入を促進する内容も含まれている。
道路の空間的利用の制度の転換
これまでも道路の上下空間に建物を設置できる「立体道路制度」は存在した。本改正では道路の新築や改築時にしか利用できなかったこの制度を、既存の道路にも適用できるようにしている。立体道路制度はそもそも制定当初の背景として、道路の上下空間の利用をしない道路制度の原則に特例を設け、他の建造物の地下などにも道路を通せるようにして、新たな道路の用地確保が難しいときにも用地を確保できるようにするという目的があった。そのため既存の道路にも立体道路制度を適用することは誰でも使える公共性をもつ道路の前提を崩し土地利用秩序が乱れるとして、道路の新築や拡幅部分のみに適用していたのである。
こうした背景から脱し、本改正では既存の高速道路でも上下空間の利用許可が出せるようになり、さらに道路敷地のそばに建造物を建てられる用地がない(つまり道路の上下空間を利用するほかに方法がない)場合に限っていた利用の規制を緩和することとなっている。立体道路制度の大きな目的が従来の道路用地確保の観点から、道路空間の有効利用というところに移ったとも言える。実際の利用に関しては入札方式を導入したり土地利用の基準も緩和する内容となっており、修繕費確保に向け高速道路会社の利用収入の向上にも資するものとなっている。
高速道路の持続的な維持に向けて
改正では他に、今後計画的に高速道路の改修ができるように、高速道路の有料期間を延長している。(2050年から2065年まで延長)もともと高速道路は最初の建設費用の償還が完了すれば無料化する方針であったが、修繕費の償還も含めて期間を設定するという方針に変更されたため延長された。これは今後修繕費用などが生じた際にその世代だけで負担するという世代間の不公平を防ぐためのものである。
またETC搭載車両を対象に、高速道路の本線やバスストップ、サービスエリア、パーキングエリアから乗り降りできるようにする簡易なインターチェンジであるスマートインターチェンジを普及させるべく、財政支援を行う措置も本改正で盛り込まれた。スマートインターチェンジはサービスエリアなどの既存の施設を利用し、かつETC向けの無人料金所のみの施設であるため、導入も維持も低コストで実現可能である。高速道路の出入口を増やすことによって地域活性化のために高速道路を有効活用することが期待される。
コメント
有効に使えそうな制度がある場合には、既存の制度目的にとらわれずに利用を拡張できるよう制度を改正していくことは重要である。本改正における、道路の空間的利用を既存の道路でも可能にする制度改正はまさにこの点で優れていると言えるだろう。そもそもこれまで政府は既存の制度について、制定の背景からか、誰でも使える公共性という道路特有の性質の強調でもって正当化していたが、例えば現状首都高の高架下を民間利用に開放し有効に活用させることがどう道路の土地利用秩序を混乱させるかいまひとつ判然としない感じは否めないし、道路特有の性質を重んじる考えが一人歩きしてしまっていたのではないかとも感じられる。高速道路修繕問題のみならず、東京五輪の開催に向けて特に首都高の土地の有効活用はホットな話題になると思うが、状況に応じて使いやすい制度が整備されていくことが望まれる。
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