経済安全保障法務: 経済安全保障推進法の成立とその概要
2022/05/23 危機管理, 情報セキュリティ, 法改正
GBL研究所理事・元弁理士(現在非登録) 浅井敏雄[1]
今月(2022年5月)11日, 国民生活に欠かせない重要な製品が安定的に供給されるよう支援を行うなど, 経済安全保障の強化を図る「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律」(通称:「経済安全保障推進法」)(以下「本法」)が成立し5月18日に公布されました。[2] 同法は公布から2年以内(2024年5月17日まで)に段階的に施行(附則1条)されます。なお, 企業法務ナビでは本法の法案の段階で解説記事[3]を掲載しました。本法については, 衆議院・参議院の内閣委員会の附帯決議[4]がなされたものの, その内容は法案段階から修正されていません。本稿では, 同記事をベースに, 本法の概要を, 附帯決議要旨, 企業の要対応事項, 本法以外の経済安全保障関連の動き等を追加した上解説します。
【目 次】 (各箇所をクリックすると該当箇所にジャンプします) II 重要物資の安定的供給の確保(サプライチェーンの強靭化) III特定社会基盤役務(基幹インフラ役務)の安定提供(安全性・信頼性)の確保 |
I 経緯・背景
以下に, 筆者が本法制定に関係したと考える事象を挙げます。
・2013年12月, 日本政府, 1957年策定「国防の基本方針」に代え「国家安全保障戦略」策定。— 国家安全保障上の課題の一つとして, サイバー空間の防護が不可欠であること/国家の関与が疑われるものを含むサイバー攻撃から我が国の重要な社会システムを防護すること/中国の急速な台頭と様々な領域への積極的進出等が挙げられた。
・2014年, 中国で習近平主席が「総体的国家安全観」提唱。— これは, 政治, 経済, 文化, 科学技術, 資源等も含む幅広い分野において, 包括的・統一的に対外的・対内的な国家安全保障の実現を目指す概念・国家政策である。この総体的国家安全観およびそれを反映した「国家安全法」に基づき, 「反スパイ法」,「反テロリズム法」,「サイバーセキュリティ法」(CSL), 「国家情報法」, 「データセキュリティ法」(DSL)等が制定された。[5]
・2014年, ロシアが, クリミア侵攻時にサイバー攻撃によりクリミア半島の通信システム遮断。[6]
・2017年12月, 米国政府「国家安全保障戦略」(National Security Strategy)(2017年NSS)策定。— 「経済安全保障は国家安全保障そのもの」との認識明記。脅威の一つとしてサイバー攻撃の普及を挙げる。中露を戦略的競争者と位置付け警戒感強調。
・2018年8月, 米国政府, 同月成立の2019年度国防権限法に基づき, 米政府機関がファーウェイなど中国企業5社から製品を調達することを禁止[7]。米政権は5社の製品が中国政府のスパイ活動に悪用されることを懸念。[8]
・2018年12月, 日本政府, 中央省庁や自衛隊が使う情報通信機器の調達に関する「IT調達に係る国の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申合せ」策定。機器に不正なプログラムやウイルスが埋め込まれていればデータが外部に流出したり, システムが動かなくなったりしかねないとの報道[9]。
・2019年1月以降の新型コロナウィルス発生・蔓延において, マスク不足, ワクチン開発・供給問題などに関連して, 重要物資等のサプライチェーンの重要性が認識される。
・2020年4月, 日本政府, 経済分野における国家安全保障上の課題について必要な取組を推進するため, 国家安全保障局に経済班を設置。[10]
・2020年12月, 自民党政務調査会, 『提言「経済安全保障戦略」の策定に向けて』公表。— (内容)経済安全保障戦略の策定の必要性/わが国が採るべき経済安全保障上の基本方針/重点的に取り組むべき課題と対策などを提言。
・2021年3月~, LINE問題。— LINEが会員情報を含むデータを海外で保管していたことが安全保障上の懸念などから問題とされ, 中国国家情報法などに基づく民間保有データへのガバメントアクセスの可能性も指摘された。[11]
・2021年4月, 中国からと疑われる, JAXA等に対する2016年のサイバー攻撃事件発覚[12]。
・2021年4月, 政府, 「研究活動の国際化, オープン化に伴う新たなリスクに対する研究インテグリティの確保に係る対応方針について」決定。— 中国「千人計画」に日本人研究者が関与していたとの報道等を受け策定され[13]後述の研究費支出指針の改定につながったと思われる。
・2021年6月, 改訂版コーポレートガバナンス・コードとともに公表・施行された同コード附属文書「投資家と企業の対話ガイドライン」(金融庁策定)に, 機関投資家と企業の対話において, 重点的に議論することが期待される事項の一つとして, 経済安全保障への対応が追加された。[14]
・2021年6月, 基地周辺等を対象とする重要土地利用規制法成立(VI参照)。
・2021年9月, 日本政府「サイバーセキュリティ戦略」策定。— サイバー攻撃により経済社会活動, ひいては国家安全保障に大きな影響が生じ得るとの認識, 経済安全保障の視点を踏まえた IT システム・サービスの信頼性確保など。
・2021年10月, 日本政府, 経済安全保障担当大臣を設置, また, 総理所信表明演説で, 我が国の経済安全保障を推進するための法案策定を表明。[15]
・2021年11月, 日本政府, 第1回経済安全保障推進会議を開催[16]。同日, 経済安全保障法制準備室を設置。
・2021年11月, 日本政府, 経済安全保障担当大臣の下に設けられた「経済安全保障法制に関する有識者会議」の第1回会議開催。— 法制上の優先分野として, ①重要物資や原材料のサプライチェーンの強靭化, ②基幹インフラ機能の安全性・信頼性の確保, ③官民で重要技術を育成・支援する枠組み, ④特許非公開化による機微な発明の流出防止の4本柱が示された。[17]
・2021年12月, 政府による大学・研究機関等への研究費支出指針を改定(外国の人材登用プログラムへの参加等開示要求)(VI参照)
・2022年2月, 前記有識者会議, 「経済安全保障法制に関する提言」(以下「提言」)提出。—前記4本柱に関し提言。
・2022年2月, ロシア, ウクライナ侵攻。—侵攻前後, ロシアからウクライナに対し大規模サイバー攻撃。日米欧等, 国際的決済網“SWIFT”からのロシアの銀行締め出し含む経済制裁実施。
・2022年5月, 機微技術等の国内提供(みなし輸出)の規制強化通達施行(VI参照)
【経済安全保障推進法の法案提出から成立・公布まで】
・2022年2月25日, 内閣, 本法の法案を閣議決定し同日国会に提出
・2022年4月6日, 衆議院内閣委員会で可決・附帯決議(以下「衆院附帯決議」)
・2022年4月7日, 衆議院本会議で可決
・2022年5月10日, 参議院内閣委員会で可決・附帯決議(以下「参院附帯決議」)
・2022年5月11日, 参議院本会議で可決
・2022年5月18日, 本法公布(法律第四十三号)
II 法目的
本法(経済安全保障推進法)は, 安全保障を確保するためには, 経済活動に関して行われる国家・国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大していることに鑑み, — 基本的に「守り」中心
経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する基本的な方針を策定するとともに,
安全保障の確保に関する経済施策として, 以下の各制度を創設することにより, 安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進することを目的とする(1条, 要綱p.1)。
①特定重要物資の安定的供給確保(⇒国による同物資の指定/事業者の供給確保計画認定・支援措置/国による備蓄・事業者への調査 等)
②特定社会基盤役務(基幹インフラ役務)の安定的提供確保(⇒国による審査対象事業・事業者の指定/同事業者による重要設備の導入・維持管理等委託の計画事前届出/国による審査・必要な変更・停止等の勧告・命令 等)
③特定(先端)重要技術の開発支援(⇒国による研究開発情報・資金支援/官民パートナーシップ(協議会)/シンクタンク等への調査研究業務の委託 等)
④特許出願の非公開(⇒特許庁による特定技術分野等に属する発明のスクリーニング(第1次審査)→内閣府による安全保障上の観点からの保全審査(第2次審査)→保全指定(効果:開示禁止・情報適正管理・実施許可制等)/外国出願制限/国による損失補償 等)
衆院・参院附帯決議(両決議の内容をまとめて要約しています。以下同じ)
基本的な方針策定に当たっては, 経済成長・産業競争力に配慮し, 規制等が経済活動の自由を不当に阻害することがないよう, また, 事業者等の自主性が十分尊重され, かつ, 事業者間の適正な競争関係を不当に阻害することのないようにすること。
II 重要物資の安定的供給の確保(サプライチェーンの強靭化)
1 趣旨(要綱p.2)
・国民の生存や国民生活・経済に甚大な影響のある物資の安定供給の確保を図る制度を整備。
・政府は同物資を指定。主務大臣は民間事業者が策定した供給確保のための計画を認定し支援措置を実施。民間への支援だけでは対応が難しい場合には特別の対策を措置。
— 2010年に中国が日本向けレアアースの輸出を規制したような事態[18]に対応。
2 概要
(1) 政府による特定重要物資の安定供給確保の基本指針策定
政府は, 経済施策の一体的実施に関し定めた全体の基本的方針(「基本方針」)(2条)に基づき, 特定重要物資の安定供給確保に関する基本指針を定める(公布日から1年内)(6条, 附則1条2号)。
(2) 政府による特定重要物資の指定
以下の物資を政令で「特定重要物資」として指定する(7条, 要綱p.2)。
①国民の生存に必要不可欠または広く国民生活・経済活動が依拠している重要な物資(プログラムを含む)で, 当該物資又はその原材料等を外部に過度に依存し又はそのおそれがある場合において,
②外部の行為により国家・国民の安全を損なう事態を未然防止するため安定供給の確保を図ることが特に必要と認められる物資。
— 指定される具体的な特定重要物資としては医薬品, 半導体等が想定されている(22/2/12有識者会議資料p.2)。
なお, 本法上登場する「外部」または「我が国の外部」の定義はないが, 本法成立の経緯等から典型的には外国を含む外部の意味と思われる。
(3) 政府による安定供給確保取組方針の策定
・主務大臣は特定重要物資又はその原材料等の安定供給確保を図るための取組方針を策定する(8条)。
(4) 民間事業者による供給確保計画の策定/政府による支援措置
・民間事業者は, 特定重要物資又はその生産に必要な原材料等(「特定重要物資等」)(8条1項)の安定供給確保のための取組(生産基盤の整備/供給源の多様化/備蓄/生産技術開発/代替物資開発 等)に関する計画を作成し, 主務大臣の認定を受けることが可能(9条)。
認定を受けた事業者(「認定供給確保事業者」)は以下を含む支援を受けることが可能。
①主務大臣が指定する「安定供給確保支援法人」(31条1項)による助成金(31条3項1号)[19]
②同法人による, 事業者へ融資を行う金融機関への利子補給(31条3項2号)
③日本政策金融公庫による指定金融機関を通じた資金供給(ツーステップローン)(13~19条)
④「中小企業投資育成株式会社法」に基づき設立された会社による, 中小企業者が認定供給確保事業を行うために設立する会社の株式の引受け(26, 27条)
⑤中小企業に対する信用保険の付保(28条)
認定供給確保事業者は, 毎年度, 計画の実施状況を主務大臣に報告(12条)。主務大臣は, 必要に応じ計画実施状況等の報告・資料提出要求可(48条4項)。
(5) 「特別の対策を講ずる必要がある特定重要物資」と政府による取組等
・上記(4)の民間事業者への支援措置だけではその安定供給確保を図ることが困難な物資については, 主務大臣はこれを「特別の対策を講ずる必要がある特定重要物資」として指定できる(44条1項)。国は自ら備蓄等の必要な措置を講ずる(44条6項)。
・主務大臣は, 外部から行われる行為により上記物資又はその生産原材料等の供給が不足し又はそのおそれがあり, その価格が著しく騰貴したことにより特に必要なときは, 備蓄等した当該物資・原材料等を時価よりも低い対価で譲渡・貸付・使用させることができる(44条8項)。
(6) 外国からの特定重要物資等の輸入に関する補助金相殺関税, アンチダンピング関税, セーフガード措置の発動
・主務大臣は, 特定重要物資等について, ①補助金交付を受けたまたは②不当廉売された外国貨物の輸入, 又は, ③外国での価格低落その他予想されなかった事情変化による外国貨物の輸入の増加が, (a)我国産業に実質的損害を与えまたはそのおそれがあり, 又は我国産業の確立を実質的に妨げる十分な証拠があり, かつ, (b)外部から行われる行為により国家・国民の安全を損なう事態を未然に防止するため必要があると認める場合, 主務大臣に対して, 関税定率法(同法7~9条)上の, 補助金相殺関税, 不当廉売(アンチダンピング)関税, 関税割当(セーフガード措置)の発動に向けた調査を求めることができる(30条)。
(7) その他
・主務大臣は各物資の生産・輸入・販売を行う事業者・団体に対し, その生産・輸入・販売・調達・保管の状況について報告又は資料の提出を求めることができる(報告徴収)(48(1))。事業者等は, その求めに応じるよう努めなければならない(48(3))(努力義務。当初案から罰則削除[20])。主務大臣は, 認定供給確保事業者に必要な事項に関し報告・資料提出等を求めることができる(48条4項)。これに応じない場合は罰則がある(96条4,5号)
(8) 施行期日
・公布後6月以内~2年以内(段階的に施行)(附則1条)。
衆院・参院附帯決議
特定重要物資および安定供給確保支援法人および特定社会基盤事業者の指定に関する政省令は, 関係事業者, 関係事業者団体その他の関係者の意見に十分配慮し制定すること。また, 特定重要物資を指定する政令の制定に際しては, 必要な知見を有する者の意見も参照すること。安定供給確保措置については輸送手段の確保について十分配慮すること。
企業の要対応事項
①自社が調達・販売する製品・原材料が特定重要物資(プログラム, クラウドシステム含む)に該当するか把握。
②認定供給確保事業者の認定を受け助成等の支援を受けるか検討。
③特定重要物資を販売する場合, 国による安定供給確保措置の内容・影響(例:国家備蓄放出による価格への影響)を把握。
④主務大臣・国からの報告・資料提出に対応。
III特定社会基盤役務(基幹インフラ役務)の安定提供(安全性・信頼性)の確保
1 趣旨(要綱p.3)
・基幹インフラ役務(電気・ガス・水道等)の安定的な提供の確保は安全保障上重要。
・基幹インフラの重要設備は役務の安定的な提供を妨害する行為の手段として使用されるおそれあり。
・基幹インフラの重要設備が我が国の外部から行われる役務の安定的な提供を妨害する行為の手段として使用されることを防止するため, 重要設備の導入・維持管理等の委託を事前に審査。
— 米国政府によるファーウェイなど中国企業5社からの調達禁止と同様の発想と思われる。
2 概要
(1) 政府による基幹インフラ役務の安定提供の確保の基本指針策定(公布日から1年内)(49条1, 2項, 附則1条2号)
・対象事業者の指定に関する基本的な事項(当該指定に関し経済的社会的観点から留意すべ事項を含む)
・配慮すべき事項(重要設備等を定める主務省令の立案に当たって配慮すべき事項を含む)
・対象事業者その他の関係者との連携に関する事項 等
— なお, 国際約束・WTOとの関係について脚注[21]の提言の記載参照のこと。
(2) 審査対象(50 条1 項)
1) 対象事業(「特定社会基盤事業」)
以下の14分野の事業のうち政令で絞り込む。
電気ガス/石油/水道/鉄道/貨物自動車運送/外航貨物/航空/空港/電気通信/放送/郵便/金融/クレジットカード
2) 対象事業者(「特定社会基盤事業者」)
・対象事業を行う者のうち, 以下の全要件を満たすものとして省令で定める基準に該当する者を主務大臣が指定
①重要設備(機器・プログラム等を含む。具体的な重要設備は省令で指定)の機能が停止・低下した場合に,
②役務の安定的な提供に支障が生じ,
③国家・国民の安全(国民の生存・社会経済秩序の平穏)を損なうおそれが大きいものとして主務省令で定める基準に該当する者
— 「特定社会基盤事業者」については, 事業規模(利用者の数, 国内市場におけるシェア等)および代替可能性(地理的事情, 事業内容の特殊性等)の観点から基準を指定していくべきとされている(22/1/7有識者会合資料 p 9)
3) 対象事業者による事前届出/主務大臣による審査
対象事業者は, 重要設備の調達や導入・維持管理等の他社委託を行う場合, 事前にその計画書を主務大臣に届出要(52条1項)。違反には罰則あり(92条1項1号)。なお, 本法上の罰則には基本的に両罰規定あり(97条)。
<計画書の記載事項の例>(52条2項)
①導入の場合:重要設備の概要, 内容・時期, 供給者, 重要設備の部品等
②維持管理等の委託の場合:重要設備の概要, 内容・期間, 委託の相手方, 再委託等
4) 主務大臣による審査
・審査期間:原則として届出受理から30日間(但し, 必要なときは届出受理から最長4月間に延長)(この間導入等禁止:違反には罰則あり)(52条3,4項, 92条1項2号)。
・審査内容:重要設備が我が国の外部から行われる役務の安定的な提供を妨害する行為(「特定妨害行為」)の手段として使用されるおそれが大きいか否か(52条1項, 6項)。— 「特定妨害行為」の手段としては例えば, マルウェアやスパイウェアの事前埋め込み等が想定されていると思われる。[22]
5) 主務大臣による勧告・命令(妨害行為を防止するため必要な措置)
・審査の結果, 重要設備が「特定妨害行為」の手段として使用されるおそれが大きいと認めるときは, 妨害行為を防止するため必要な措置(重要設備の導入・維持管理等の内容の変更・中止等)を勧告(52条6項)。
・勧告後10日以内に勧告を応諾するかしないかの通知を義務付け(52条7項)。
・勧告を応諾するかしないかの通知がないときや, 正当理由なく応諾しない旨の通知があったときは, 勧告に係る措置を命令(52条10項)。違反には罰則あり(92条1項4号)。
6) 導入・委託後の勧告
重要設備の調達導入・維持管理等の委託後も, 国際情勢の変化等により, 当該設備が特定妨害行為の手段として使用されまたはそのおそれが大きいと認める場合, 当該事業者に対し必要な措置を勧告・命令できる(命令違反には罰則あり)(55条1, 3項, 92条1項4号)。
7) 主務大臣による情報提供
・主務大臣は, 対象事業者に妨害行為の防止に資する情報を提供するよう努める(57条)。
8) 主務大臣による調査
主務大臣は, 上記指定のため, 特定社会基盤事業を行う者に, 必要な報告・資料の提出を求めることができる(58条1項)。主務大臣は, 上記勧告等に必要な限度で, 特定社会基盤事業者に, 報告・資料提出要求, 立ち入り・質問・検査を行うことができる(58条2項)。
3 施行期日(53条, 附則1条但書3,4号)
①審査対象:公布後1年6月以内
②審査・勧告・命令:公布後1年9月以内
・対象事業者の指定から6月間は経過措置として適用を開始しない。
衆院附帯決議・参院附帯決議
特定社会基盤事業者の指定に関する省令は, 関係事業者, 関係事業者団体その他の関係者の意見に十分配慮し制定すること。(参院附帯決議)特定社会基盤役務の安定的提供確保制度において, 中小規模の事業者については, 国民生活・経済活動への影響が限定的であり, 規制対応が大きな負担となるから, 規制対象とするべきかどうかの検討は慎重に行うこと。
報告徴収(48条1項)および特定重要設備の導入等の後の勧告(55条1項)は, 経済活動への影響を考慮し, 安全保障を確保するため合理的に必要と認められる限度において行わなければならないことについて一層配慮すること。
企業の要対応事項
①自社が特定社会基盤事業者に指定される可能性検討。
②指定された場合, 重要設備(プログラム, クラウドシステム含む)の調達や導入・維持管理等の他社委託を行う場合, 主務大臣に計画書事前届出。
③維持管理等の受託者の場合も, 委託者(顧客)と計画書内容等協議。
④維持管理等の業務委託契約に, 関連する表明保証・誓約・契約発効条件・契約解除等に関する定めを置くか検討。
⑤外国企業にとっては, 日本企業の買収計画等において, その日本企業の買収対象事業が特定社会基盤事業であるか等が重要な検討要素となる可能性がある。
IV先端的な重要技術の開発支援
1 趣旨(要綱p.4)
・民間部門のみならず, 政府インフラ, テロ・サイバー攻撃対策, 安全保障等の様々な分野で今後利用可能性がある先端的な重要技術の研究開発の促進とその成果の適切な活用は, 中長期的に我が国が国際社会における確固たる地位を確保し続ける上で不可欠。
・このため, 特定重要技術研究開発基本指針を策定するとともに, 資金支援, 官民伴走支援のための協議会設置, 調査研究業務の委託(シンクタンク)等を措置。
2 概要
(1) 政府による特定重要技術研究開発基本指針の策定及び国による支援
・政府は, 特定重要技術の研究開発の促進及びその成果の適切な活用に関する基本指針を策定(60条)。
・政府は, 本指針に基づき, 特定重要技術の研究開発等に対し, 必要な情報提供・資金支援等を実施(61条)。
「特定重要技術」:先端的な技術のうち, 研究開発情報の外部からの不当な利用や, 当該技術により外部から行われる妨害等により, 国家・国民の安全を損なう事態を生ずるおそれがあるもの(61条)
— 具体的には, 宇宙・海洋・量子・AI等の分野における先端的な重要技術を想定(要綱p.4)
(2) 官民パートナーシップ(協議会)(62条)
1) 協議会の設置
・国の資金により行われる特定重要技術の研究開発等について, その資金を交付する大臣(「研究開発大臣」)が, 基本指針に基づき, 個別プロジェクトごとに, 研究代表者の同意を得て協議会を設置。必要と認める者を, その同意を得て構成員として追加。
2) 協議会の構成員
・研究開発大臣・国の関係行政機関の長・研究代表者/従事者・シンクタンク 等
3) 協議会の機能
・研究開発の推進に有用な[官民の]シーズ・ニーズ情報の共有や社会実装に向けた制度面での協力など, 政府が積極的な伴走支援を実施。
—共有情報としては, 具体的な社会実装イメージ, 政府[理研, 産総研等か?]が実施してきた研究の成果, サンプリングデータ, サイバーセキュリティのインシデント・脆弱性情報, 非公開とされた契約情報, 国民の安全・安心に係る政府機関の態勢に係る情報等が想定されている(提言 p 37脚注)。
・お互いの了解の下で共有される機微な情報について, 協議会構成員に対し, 適切な情報管理と国家公務員と同等の守秘義務を求める。
※守秘義務の対象となる情報は, 政府のこれまでの研究成果, サイバーセキュリティの脆弱性情報等を想定。
※研究成果は公開が基本。研究者を含む協議会が, 研究開発の進展や技術の特性, 政府インフラ, テロ・サイバー攻撃対策, 安全保障等での利用において支障のある技術に関し, 研究開発の促進方策や個々の技術の成果の取扱等を決定。
(3) 調査研究業務の委託(シンクタンク)(64条)
・特定重要技術の見定め(絞り込み)やその研究開発等に資する調査研究を, 内閣総理大臣が一定の能力を有する機関(特定重要技術調査研究機関)に委託し, 守秘義務を求める。
— シンクタンクのイメージ:全米科学アカデミー, 米国科学振興協会, RAND研究所(有識者会議第一回資料7 p 7)
(4) 施行期日
・公布後9月以内(附則1条)
衆院・参院附帯決議
特定重要技術の開発支援に当たっては, 宇宙科学技術, 海洋科学技術, 量子科学技術, 人工知能関連技術, バイオ技術の重要性に留意すること。
企業の要対応事項
①自社が開発する技術に特定重要技術に該当する先端技術があるか把握。
②官民パートナーシップ(協議会)参加をメリット・制約を踏まえ検討(なお, 他社と共同研究開発する技術については守秘義務による制約も考慮)。
V 特許出願の非公開
1 背景・趣旨
(1)背景
1) 特許の出願公開制度
我が国では, 特許出願日から1年6月後に, 原則として[23]全ての出願について, 出願発明を記載した明細書の内容が公開特許公報により一般に公表(出願公開)される(特許法64条)。その理由は, ①特許制度は, 発明された新技術の公開の代償として一定期間特許権という独占的な権利を与える制度であること, ②出願から特許付与後の発明公開までの間に生じ得る他者による重複研究, 重複出願, 重複投資等の弊害を防止することなどである。
2) 全出願公開による弊害(「提言」(p 43, 44)
しかし, 上記公開制度の結果, 公になれば我が国の安全保障が著しく損なわれるおそれがある発明まで公開され, たとえ公開すべきでないとわかっていても, 特許権を得るためには公開に供するほかないという状況を生じさせている。
例えば, 2015年の報道で, 日本のレーザーウラン濃縮技術に関する特許公報やこの特許技術に基づく機器が国際原子力機関(IAEA)の査察を受けた他国の極秘核研究施設で2004年に発見されていた旨報じられ[24], 機微な技術の特許制度を通じた公開の問題が注目された[25]。
3) 諸外国の状況
諸外国の多くは, 特許制度の例外措置として機微な発明の特許出願について出願を非公開とするとともに, 流出防止措置を講じ, もって, 当該発明が外部からの脅威に利用されることを未然に防ぐ制度を有しており, G20 諸国の中でこうした制度を有していないのは, 日本, メキシコ及びアルゼンチンのみである(「提言」(p 44)。(なお, 我が国でもかつては秘密特許制度が存在していたが戦後廃止された[26])
(2)趣旨(要綱p.5)
特許出願の非公開制度を導入することにより,
・公にすることにより国家・国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が記載されている特許出願につき, 出願公開等の手続を留保するとともに, その間, 必要な情報保全措置を講じることで, 特許手続を通じた機微な技術の公開や情報流出を防止。
・これまで安全保障上の観点から特許出願を諦めざるを得なかった発明者に特許法上の権利を受ける途を開く。
2 概要
(1) 政府による特許出願の非公開に関する基本指針策定
政府は, 特許出願に係る明細書等に記載の発明に関する情報の流出を防止するための措置(「特許出願の非公開」)に関する基本指針を定める(公布日から1年内)(65条1項, 附則1条2号)。
(2) 特許庁による技術分野等によるスクリーニング(第一次審査)
・特許庁は, 公にすることにより国家・国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が含まれ得る技術分野(「特定技術分野」)に属する発明が記載されている特許出願を出願から3か月内に内閣府に送付(66条1項)。出願人から保全審査の申し出をすることも可能(66条2項)
「特定技術分野」:核技術, 先進武器技術等の中から下記(3)①②の観点を踏まえて政令で絞り込んだもの
— 「提言」(p 47,48)によれば, 「デュアルユース(軍民両用)技術については, 技術分野を絞るとともに, 例えば, 国費による委託事業の成果である技術や, 防衛等の用途で開発された技術, あるいは出願人自身が了解している場合などを念頭に, 支障が少ないケースに限定するべきである。制度開始当初は第二次審査の対象となる技術分野を限定したスモールスタートとし, その後の運用状況等を見極めながら, 対象技術分野の在り方を検討することが適当である」とされている。
・第一次・第二次審査中及び保全指定中は, 出願公開及び特許査定を留保(特許付与留保方式)(66条7項等)
— 但し, 出願人が求めた場合, 出願公開・特許査定・拒絶査定の手続のみ残して実体審査することは可能。[27]
(3) 内閣府における保全審査(第二次審査)(67条1項)
・「保全審査」(=発明の情報を保全することが適当と認められるかの審査)における考慮要素
①国家・国民の安全を損なう事態を生ずるおそれの程度
②発明を非公開とした場合に産業の発達に及ぼす影響 等
・内閣府は, 保全審査のため出願人等に資料提出・説明要請可(67条2項)。審査に当たり, 国の機関[防衛省等]や外部の専門家の協力要請可, また, 国の関係機関に協議(67条3,4,6項)
・保全指定をする前に, 出願人に対し, 特許出願を維持するかの意思確認(14日以内)を実施(67条9,10項)
— 分割出願は禁止されていないから, 当該出願を維持しつつ, 保全指定対象発明に係る部分を削除した明細書等で分割出願しそれについて特許取得を目指すことは可能。[28]
(4) 保全指定(70条)
・保全指定の通知:保全対象発明を指定し, 出願人に通知(70条1項)
・指定の期間:1年以内, 以後, 1年ごとに延長の要否判断(70条2,3項)。保全指定継続不要と認めたときは指定解除(77条1項)
・指定の効果:出願の放棄・取下げ禁止(72条)/発明の実施の原則禁止・実施許可制(73条)/出願人他の発明内容の開示の原則禁止(74条)/発明情報の漏えい防止のための適正管理義務(75条)/他の事業者に発明情報の取扱いを認める場合の承認制(76条)/外国への出願(国際出願を含む)の禁止(78条)。実施禁止・開示禁止の違反(未遂を含む)には国外犯を含め罰則がある(92条1項6,8号, 2項, 3項, 94条)。
(5) 外国出願制限(第一国出願義務)(78条)
・日本でした前記技術分野に属する発明については, まず日本に出願しなければならないこととする第一国出願義務を規定(特許庁に該当するかどうかを事前相談可能:79条)
(7) 国による補償(80条)
・保全対象発明の実施の不許可・条件付き許可等により損失を受けた者に対し, 通常生ずべき損失を補償(80条)
3 施行期日(附則1条但書5号)
・公布後2年以内
衆院・参院附帯決議
特定技術分野を定める政令は, 安全保障の確保に関する経済施策, 産業技術その他特許出願の非公開に関し知見を有する者の意見を考慮して制定すること。非公開制度の運用は, イノベーションの意欲を削ぐことのないよう関係者の意見を聴いて慎重に行うこと。
保全対象発明の選定に当たっては, 産業への影響を考慮して対象をできる限り限定的なものとすること。その際, デュアルユース技術については, 国費による委託事業の成果である技術や, 防衛等の用途で開発された技術, あるいは出願人自身が了解している場合などを念頭に, 支障が少ないケースに限定すること。
損失補償に当たっては, 出願人が過度な不利益を被ることのないよう十分配慮すること。
企業の要対応事項
①自社に特定技術分野に属する可能性がある発明があるか, 研究開発段階から情報管理・把握。
②その可能性がある発明で日本でなされた発明について外国出願制限(第一国出願義務)違反防止の仕組み確立。
③その可能性がある発明について, 保全指定の可能性を踏まえた上で出願を行うか検討。
④保全指定された場合にはその発明の実施・開示禁止違反・情報漏えい・外国出願(国際出願を含む)の防止。
本法全体に関する衆院・参院附帯決議
安全保障環境が激変している状況を勘案し, 四分野に限らない経済安全保障に関する諸施策の実効性を伴う総合的な推進を図るための方策について, 本法の施行後適当な時期において検討を加え, その結果に基づいて必要な措置を講ずること。
国際共同研究の円滑な推進も念頭に, 我が国の技術的優位性を確保, 維持するため, 情報を取り扱う者の適性について, 民間人も含め認証を行う制度の構築を検討した上で, 法制上の措置を含めて, 必要な措置を講ずること。—具体的には, VI-4に述べる防衛技術等「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」制度を意味すると思われます。
VI その他経済安全保障関連の動き
1 重要土地利用規制法成立
2021年6月16日, 国家安全保障上支障となるおそれがある重要な土地等の取引やその周辺における利用行為の規制等を可能とする「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」(公布:6月23日)(いわゆる重要土地利用規制法)が成立しました(施行日:未確定(公布から1年3月内で政令で定める日:2022年9月22日まで))。
— 具体的には, 防衛関連施設(米軍基地, 自衛隊基地等), 海上保安庁施設, 原子力発電所・空港等の重要施設周辺約1km以内の土地, 国境離島[現在友人60, 無人465]の土地等について[29], 注視区域の指定, 土地等利用状況調査, 自治体への利用者等関係情報の提供要請, 利用者等への報告徴収・勧告・命令・損失補償, 買取等(5~11条)が規定されています。
2 政府による大学・研究機関等への研究費支出指針の改定
2021年12月17日, 政府が大学・研究機関等に研究費を支出する際の指針が改定され, 外国等への技術流出等を防ぐため, 研究者に対し, 研究費応募の際に, 外国関係を含め, 全ての研究費の応募・受入状況, 所属機関・役職(兼業や外国の人材登用プログラムへの参加, 雇用関係のない名誉教授等を含む)に関する情報の開示を要求するようになり, 2022年4月1日の研究費公募分から適用されています(「競争的研究費の適正な執行に関する指針(令和3年12月17日改正)」1, 2(2)②,⑥等)。[30]
3 機微技術等の国内提供(みなし輸出)の規制強化
2022年5月, 機微技術等の国内提供(みなし輸出)の規制強化通達施行[31]。— 外為法(25条1項)上, 従来, 入国後6ヶ月経過したまたは国内の事務所・企業に勤務する外国人を国内「居住者」として扱い「みなし」輸出管理の対象外としていた解釈運用を変更し, 「非居住者」に技術提供を行うのと事実上同一と考えられる場合, 換言すれば, 「居住者」が[外国の]「非居住者」の強い影響下にある場合には, みなし輸出管理の対象であることが明確化されました。(参照)浅井敏雄「経済安全保障法務:機微技術等の国内提供(みなし輸出)規制強化(5月実施)」企業法務ナビ, 2022/4/5
4 防衛技術等「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」制度法制化の可能性
今秋(2022年秋), 防衛技術等の国際共同研究等に必要とされる機密情報に係る「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」(同情報にアクセスできる人の適格性を審査・認証する制度)に関する法案が国会提出される可能性があると思われます(脚注[32]の報道資料参照)。
以 上
【注】
[1] 【本稿の筆者】 一般社団法人GBL研究所理事/UniLaw企業法務研究所代表 浅井敏雄(Facebook)
[2] 【経済安全保障推進法の審議経過・成立公布】 (参考) 衆議院議案情報(令和4年5月18日現在)
[3] 浅井敏雄「(経済安全保障法務)経済安全保障推進法案の概要」2022/03/18, 企業法務ナビ
[4] 【附帯決議の法的意味】参院サイト「附帯決議とは, 政府が法律を執行するに当たっての留意事項を示したものですが, 実際には条文を修正するには至らなかったものの, これを附帯決議に盛り込むことにより, その後の運用に国会として注文を付けるといった態様のものもみられます。附帯決議には, 政治的効果があるのみで, 法的効力はありません」
[5] (参考) 浅井敏雄「中国データ・情報関連法」2021/9/18, 第1章2
[6] (参考) 山田敏弘『サイバー攻撃の実験場, ウクライナで暗躍する親ロシア工作集団「UNC1151」』フォーサイト-新潮社ニュースマガジン, 時事ドットコムニュース
[7] 廣瀬 淳子「【アメリカ】2019 会計年度国防授権法」外国の立法 No.277-2(2018.11) 国立国会図書館 調査及び立法考査局 p 2「(2)中国政策」
[8] 日本経済新聞「中国5社を政府調達から締め出し 米国防権限法, 13日適用」2019年8月13日
[9] 日本経済新聞「機密漏洩防止へ調達指針 政府, ファーウェイ念頭」2018年12月10日
[10] (参考) NHK 『国家安全保障局に「経済班」設置』2020年4月6日
[11] (参考) 浅井敏雄「LINE事件と中国におけるガバメントアクセス規定」企業法務ナビ, 2021/04/26
[12] (参考) NHK「JAXAなどに大規模なサイバー攻撃 中国人民解放軍の指示か」2021年4月20日
[13] (参考) 読売新聞「【独自】中国「千人計画」に日本人, 政府が規制強化へ…研究者44人を確認」2021/01/01
[14] 「投資家と企業の対話ガイドライン」(2021年6月11日金融庁策定)3-1「...サイバーセキュリティ対応の必要性, サプライチェーン全体での公正・適正な取引や国際的な経済安全保障を巡る環境変化への対応の必要性等の事業を取り巻く環境の変化が, 経営戦略・経営計画等において適切に反映されているか。」
[15] (参考) 「第二百五回国会における岸田内閣総理大臣所信表明演説」2021年10月8日, 首相官邸
[16] (参考) 内閣官房「経済安全保障推進会議(第1回)」2021年11月19日
[17] (参考) 内閣官房「経済安全保障法制に関する有識者会議」
[18] (参考) 丸川知雄「2010年のレアアース危機」2016年6月23日, 東京大学社会科学研究所
[19] (参考) 現行の同様制度:経産省『「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」の3次公募(ウクライナ情勢の影響を受ける原材料等の安定供給対策分)について』2022年5月2日。事業目的・公募概要:「新型コロナウイルス感染症の拡大に加え, ウクライナ情勢の影響により, 安定供給に支障が生じている原材料等の供給途絶リスクも見据え, 半導体製造プロセス用ガス, パラジウム, 石炭等, 我が国サプライチェーンの途絶によるリスクが大きい重要な原材料等の国内での生産拠点等の整備を行う企業に対して補助を行うものであり, このたび, 以下のとおり公募を行います。」
[20]日本経済新聞「経済安保法案, 罰則を一部削除 供給網調査の拒否に 政府・与党方針」2022年2月15日
[21] (提言p 20,21)「制度は, ...内外無差別の制度となっている。政府において具体的に制度を設計・運用していく際には, 我が国が締結している国際約束との整合性に留意する必要がある。このため, 新たな制度において, 我が国の基幹インフラ事業者が利用する設備を供給する事業者や, 当該設備の維持管理等を受託する事業者の国籍のみをもって差別的な取り扱いをすることは適切ではない。また, 専ら外国資本等のみを対象とする制度を設ければ, WTO 協定等の国際ルールにも抵触するおそれがあるため, これも適切ではない。
[22] (参考)(1)自由民主党 政務調査会 新国際秩序創造戦略本部 『「経済安全保障戦略」の策定に向けて』2020年12月16日 p 14, 15には「デジタル製品の開発・製造・設置・保守・管理・廃棄等の過程で, 情報の窃取・破壊や悪意ある機能が組み込まれる「サプライチェーンリスク」について, 脆弱性の把握, 信頼のおけない機器等への依存の回避等の対策を講じることが重要である」とある。 (2) Jordan Robertson, Jamie Tarabay 「中国の通信スパイ活動, 豪米は12年から把握か-ファーウェイ製品経由」2021年12月21日, Bloomberg
[23] 【出願公開制度の例外】「防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」により米国秘密特許出願(米国特許法181条~188条)に基づく我が国出願は同条約(3条)によりその秘密解除まで公開されない(特許法26条)。
[24] 毎日新聞「<日本の核技術>流出, 初確認 韓国で資料押収 IAEA, 04年査察」2015/11/4
[25] (参考)国際原子力機関(IAEA)Senior Nuclear Engineer八木雅浩「韓国の未申告レーザーウラン濃縮実験と我が国特許法制上の問題─やはり拡散していた我が国特許出願公開情報─」 CISTEC Journal 2016.1 No.161 p 56-64
[26] 【我が国の旧秘密特許制度】我が国でも明治32年(1899年)法以来, 昭和23年の特許法改正により廃止されるまで秘密特許制度があった(例えば, 大正10年法63条但書, 73条6項等参照) — 吉藤幸朔「特許法概説 第13版」p 5
[27] 2022年3月23日衆議院内閣員会での木村政府参考人回答:「そこで, 出願人が実体審査を求めまして出願審査の請求をした場合には, これに応じて出願書類の補正のやり取りを行いますなど, 最終的な査定の手前まで審査を進めることが出願人の保護に資するという観点から, 出願公開及び最終的な特許査定又は拒絶査定の手続のみを留保し, それ以外の御指摘ございましたような手続は行える, このような制度とさせていただいているところでございます。」
[28] 2022年3月23日衆議院内閣員会での木村政府参考人回答:「分割出願につきましては, 特段, 禁止する旨の規定を設けておりませんので, 分割後の出願に保全指定がされた部分が含まれていなければ通常の出願と同等の取扱いになるもの, このように整理させていただいているところでございます。」
[29] 【土地利用規制法の対象土地】 (参考) 産経新聞「土地規制法, 来年9月に区域公示 概算要求に24億円」2021/8/25
[30] 【政府研究費支出指針の改定】 (参考) (1)日本経済新聞「研究支援, 外国資金に開示義務 政府22年度から新指針」2021年11月29日。(2)産経新聞「〈独自〉研究者の情報開示要求 技術流出阻止へ指針」 2021/12/17, (3)産経新聞『研究費指針改定を発表 担当相「経済安保に資する」』2021/12/17。
[31] (参考) 経済産業省<「みなし輸出」管理の運用明確化の概要>2021年11月
[32] 【「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」制度導入の可能性】 (参考) (1)金子かおり「アングル:機密資格見送り, 経済安保法の成立優先 参院選後の焦点に」2022年5月11日, ロイター。(2)時事通信「機密資格, 今秋法制化 経済安保, 臨時国会に法案」2022年02月21日。(2)日本経済新聞「経済安保法案, 特許の公開制限を先行 適格性評価は後に」2021年12月4日.
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