鋼球製造業者の独占禁止法違反
2014/09/29 独禁法対応, 独占禁止法, その他
価格カルテルとは
価格カルテルとは,事業者又は業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い,本来,各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決める行為をいいます。
たとえば,公共団体が発注した競争入札において,入札者が話し合いをして高い金額で受注するということをした場合には,一般的に談合と呼ばれるものも,価格カルテルの一種です。
本件では,以下のような合意に基づく決定が,価格カルテル(独占禁止法上は「不当な取引制限」)に当たると判断されました。
2 違反行為の概要
(1) ツバキ・ナカシマ及び天辻鋼球製作所の2社(以下「2社」という。)は,遅くとも平成22年10月7日以降,鋼球の販売価格の低落を防止し自社の利益の確保を図るため,共同して販売価格を引き上げ又は維持する旨の合意の下に
ア 鋼材の仕入価格の変動状況について情報交換を行い,鋼球の販売価格の改定方針を決定した上,需要者等に提示する現行の鋼球の販売価格からの改定率等を決定する
イ 主要な需要者等からのコストダウン要請の状況について情報交換を行い,当該需要者等に提示する現行の鋼球の販売価格からの改定率等を決定するなどしていた。
排除措置命令はどんなものか
独占禁止法によれば,公正取引委員会は,事業者に対して,独占禁止法違反が行われた状況を取り除くための必要な措置をとるように,命じることができるとされています。
この排除措置命令では,かなり具体的な行動をとるように命令されることになっており,本件においても、以下のような命令が出ています。
3 排除措置命令の概要
⑴ ツバキ・ナカシマは,次の事項を,取締役会において決議しなければならない。
ア 前記2⑴の合意が消滅していることを確認すること。
イ 今後,他の事業者と共同して,鋼球の販売価格を決定せず,自主的に決めること。
ウ 今後,他の事業者と,鋼球の原材料である鋼材の仕入価格の変動状況又は鋼球の販売価格に関する情報交換を行わないこと。
⑵ ツバキ・ナカシマは,前記⑴に基づいて採った措置を,天辻鋼球製作所に通知するとともに,自社の鋼球の需要者及び自社の鋼球の取引先である販売代理店等に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。
⑶ ツバキ・ナカシマは,今後,他の事業者と共同して,鋼球の販売価格を決定してはならない。
⑷ ツバキ・ナカシマは,今後,他の事業者と,鋼球の原材料である鋼材の仕入価格の変動状況又は鋼球の販売価格に関する情報交換を行ってはならない。
⑸ ツバキ・ナカシマは,次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。
ア 自社の商品の販売活動に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成及び自社の従業員に対する周知徹底
イ 鋼球の販売活動に関する独占禁止法の遵守についての,鋼球の営業担当者に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査
課徴金納付命令
公正取引委員会は,価格カルテルを行った事業者に対して,課徴金納付を命じることができるとされています。
過去には,今年の3月に日本郵船に対して131億円の課徴金が課されるなど,高額な課徴金が課されることもあります。
本件では,13億2471万円の課徴金が課されました。
なお,上記排除措置命令や課徴金納付命令に従わない場合には,刑事罰が科されることもあるため,命令には必ず従わなければなりません。
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