ヤマト運輸 3月末にメール便廃止
2015/01/23 法務相談一般, 民法・商法, その他
事案の概要
ヤマト運輸は1月22日、3月末でメール便サービスを廃止する旨発表した。メール便に手紙などの「信書」を同梱するという、郵便法に違反した誤った利用を避けるためである。メール便事業では、信書の取り扱いについてヤマト運輸と総務省の間で争点となっている。
現在ヤマト運輸では、「クロネコメール便」の名称でメール便を全国展開している。宅急便に比べ割安な価格で消費者の郵便ポストに届けるのが特長である。利用客の大半は法人であり、主にカタログ・パンフレット等の送付に用いられている。また、近年では、ネットオークションやネット通販上で化粧品など小容量の物品を配送するために利用する個人も少なくない。
郵便法は、信書を「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、または事実を通知する文書」と規定しており、主にはがきや手紙などがこれにあたる。加えて、郵便法は、原則として日本郵便以外の者が信書の送達を業として行ってはならないとして信書送達事業の独占を定めている。これに反し信書送達を業として行う者に対して、信書送達を委託することも許されない。例えば、田舎の両親が宅配便で家で採れた野菜や米を都会で暮らす子どもに送り、その中に「○○君へ、体に気をつけてね」というメモを同梱するといった形や、企業がカタログをメール便で送付するにあたって、文書自体に受取人が記載されているようなダイレクトメールを同封するような形で、手紙などの信書を宅配便やメール便などに同梱して送付した場合、運送会社だけでなく、送達を委託した送り主にも「事業の独占を乱す罪」として3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられるおそれがある。現に、郵便法違反は2010年度までの5年間で79件発生している。ヤマト運輸だけでも、郵便法違反容疑で警察から事情聴取されたり書類送検されたりする事例が、2009年以降、8件発生している。
新サービスについて
4月から、3つの新サービスが開始される予定である。法人向けでは、「クロネコDM便」というサービスが開始する。これは、信書が入っていないことを確認できるものに限り受託するものであり、消費者にカタログ・パンフレットを送付する企業などの利用を想定している。料金は顧客との個別交渉で決めるが、引き上げることはない。
法人・個人向けのものでは、化粧品等の小口の荷物を対象にした、現在の宅急便の最小サイズより一回り小さい容量のサービスを追加する。時間指定手渡しなどの付加価値が加えられるかわりに、従来のメール便に比べ料金が上がる。
さらに、DVDなどの荷物を対象にした、住宅のポストに入れて配達するサービスも用意し、配達時に電子メールも送信する。料金は未定であり、3月に発表される予定である。
コメント
信書の定義や範囲は曖昧であり、利用者は、何が信書で何が信書でないかの判断に迷う。ドイツや米国では、送付物の重さや大きさによって規制の対象となる信書の範囲を明確にしており、こうした外形基準を導入すれば、無用の混乱は回避できるとの意見もあるが、これには、線引きをどこに置くのかという課題がある。
今回のヤマト運輸のメール便廃止及び新サービス導入がなされれば、知らずに郵便法違反にあたる行為をしてしまうケースを減らすことができると思われる。
関連サイト
- ヤマト運輸:「メール便」3月で廃止 - 毎日新聞(リンク切れ)→アーカイブ
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