不動産ネット取引のメリット・デメリット
2015/02/02 不動産法務, 民法・商法, 住宅・不動産
不動産ネット取引の概要
国土交通省の有識者検討会は、インターネットを使った不動産取引のあり方について報告書をまとめた。それによれば、今夏頃から試験的に実施し、検証を行った後、問題がなければ本格的に運用するとのことである。
現在は、不動産会社に対して、契約条件等の重要事項の説明は対面で行い、契約内容が記載された書面を交付することを義務付けている(宅地建物取引業法35条)。なお、明文上は「対面」を必要としているわけではないが、解釈によって必要とされている。
これを、法人間の取引と個人との賃貸借契約に限って、重要事項説明はテレビ電話でもできるようにする、ということが今回の制度変更の内容である。その趣旨は、法人は専門的知識にも対応可能であり消費者保護の要請はなく、また、個人であっても賃貸借契約は売買契約と比べればトラブルの被害が小さいためである。また、手段としてテレビ電話のみが認められたのは、互いに相手方の表情を確認できるからである。
それでは、以下では不動産ネット取引のメリット・デメリットを検討しておく。
不動産ネット取引のメリット・デメリット
メリット
①何度も足を運ぶ手間が省けるため、遠隔地への転居や急遽の転居の場合には、利便性が大きい。また、特に高齢者や障害者にとってはその利便性は大きいといえる。
②重要事項説明の様子を録画・保存できるために、業者の説明不足や消費者の理解不足などを理由とするトラブルを防止できる可能性が高まり、かえって消費者保護にも資する。
③遠隔地との取引が活発化し、海外から日本への投資の拡大も期待でき、不動産市場全体の活性化につながる。
デメリット
①個人のネット・リテラシーには差があるにもかかわらず、業者によりネット取引へと誘導される危険性がある。
②テレビ電話の映像だけで相手方の表情や仕草、動作等を充分に把握できるかは疑わしい。そのため、複雑な内容である重要事項説明について業者が消費者の理解を十分に確認できないまま次の説明へと移行してしまう等適切な説明を行いにくい。
また、これらとは別の視点からの意見として、重要事項説明を対面で行うと言っても、現実には形式的になっており、そもそも、対面を要することは消費者保護に本当の意味では寄与しておらず、対面・非対面は消費者保護とは直接の関係がない、といった指摘もある。こうした指摘が正しいとすれば、ネット取引自体は積極的に推進しつつ、消費者保護については第三者の立会い等のより実質的効果が期待できる別個の手段によって実現することを検討すべきなのかもしれない。
いずれにしても、今夏以降の試験実施の後の検証段階で、さらに議論が深められていくだろう。今はまず、今夏以降の試験実施を待ちたい。
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