独占禁止法における垂直的制限行為に関する新ガイドライン
2015/02/16 独禁法対応, 独占禁止法, その他
流通・取引慣行ガイドラインの改正案の概要
流通・取引慣行ガイドラインとは、事業者が独占禁止法に違反せず安心して適法に事業活動を行えるようにすることを目的として、公正取引委員会が、流通・取引慣行のうちのどのような行為が独占禁止法に違反するかについて規定したものである。
今回の改正案で明確化された事項は、以下の5つである。すなわち、①垂直的制限行為が競争に及ぼす影響についての基本的な考え方、②垂直的制限行為に係わる適法・違法性判断基準、③流通調査、④選択的流通、⑤再販売価格維持行為規制における「正当な理由」である。
※垂直的制限行為:メーカーが流通業者(卸売業者、小売業者等)の販売価格・取扱商品・販売地域・取引先等の制限を行う行為(契約による制限のみならず、要請等による事実上の制限も含む)
※選択的流通:メーカーが一定基準を満たした流通業者に限定して自社商品の取扱を認める場合に、当該流通業者に対して自社商品の取扱を認めていない流通業者への転売を禁止すること
※再販売価格維持行為:メーカーが指定した価格で販売しない流通業者に対して、卸価格を高くしたり、出荷を停止したりして、流通業者に指定した価格を守らせること
以下では、特に重要な改正内容である、垂直的制限行為について説明する。
垂直的制限行為の規制について
公正な競争を阻害するおそれがある行為は不公正な取引方法として禁止されている(独占禁止法19条)が、垂直的制限行為が公正な競争を阻害するおそれがあるといえるかどうかについては、メーカー間競争の状況、流通業者間競争の状況、メーカーの市場における地位、流通業者の市場における地位、流通業者の事業活動への影響、流通業者の数等を総合的に考慮して判断する。そして、この判断においては、垂直的制限行為によって生じうる流通業者間の競争やメーカー間の競争を阻害する効果に加え、競争を促進する効果も考慮する、とされた。
このように、垂直的制限行為は、競争阻害効果のみならず、状況によっては競争促進効果を生ずることもあり、それらは状況次第であることが明示された。
具体的には、新商品の販売の促進、新規参入の容易化、品質・サービスの向上などが認められる場合には、競争促進効果が認められうる。そして、それらの典型例も列挙されている。
ⅰメーカー商品の需要が他の流通業者によって既に喚起されている場合には新たな流通業者は自ら費用をかけては販売促進活動を行わなくなり、結果としてメーカーが期待する売上を実現できないことがある。こうしたいわゆるフリーライダー問題が起こりうる場合に、当該メーカーが一定地域を一流通業者のみに限定することは、フリーライダー問題を解消する有効策となりうる。
ⅱメーカーが自社商品の高品質の評判を確保するためには、販売先を、高品質な商品のみを取り扱うという評判を有する小売業者に限定することが有効策となりうる
ⅲメーカーが自社商品販売に際して流通業者に対して専用設備の設置等特有の投資を求めたい場合には、一定地域を特定流通業者にのみ限定することが有効策となりうる。
ⅳメーカーが自社商品に対する顧客の信頼(いわゆるブランドイメージ)を高めるために、流通業者に対してサービスの統一性や質の標準化を求めることによって、販売先や販売方法を制限することが有効策となりうる。
今回の改正案は、独占禁止法に抵触する行為について具体的・類型的に予見可能性を高めるものとなっているといえ、従来企業が萎縮しがちだった垂直的制限行為について、より安心してビジネスを展開しやすくなるといえるだろう。
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