企業の女性登用の促進に関して
2015/03/02 労務法務, 労働法全般, その他
事実の概要
政府は2月20日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」を閣議でまとめました。これは、昨年末の衆院解散に伴い廃案になっていたもので、今国会に再提出され成立する見通しです。
働く女性の現状
2012年の日本の女性雇用者数は2,357万人で、雇用者総数に占める女性の割合は43%となっています。そして、管理職の女性比率はおよそ11%となっています。アメリカの管理職の女性比率は44%、欧州では30%を超えるところも多いことから、日本の女性比率は非常に低いものとなっています。賃金の水準も同年代の男性の平均と比較すると70%程となっており、欧米諸国と比較しても低いものとなっています。
法案の内容
女性が活躍できる社会環境の整備について、以下のような基本理念・基本事項が挙げられています。
①女性に対する採用、昇進等の機会の積極的な提供及びその活用が行われること
②職業生活と家庭生活との両立を図るために必要な環境の整備により、職業生活と家庭生活との円滑かつ継続的な両立を可能にすること
③女性の職業生活と家庭生活との両立に関し、本人の意思が尊重されるべきこと
その中でも具体的な内容として注目されるのが、従業員301人以上の企業に女性登用の数値目標や行動計画の策定と公表を義務付けるものとなっている点です。数値目標の達成が義務付けられているわけではないので、数値目標を達成出来なかった際の罰則は特にありません。もっとも、罰則はないにしても、国は必要に応じて助言、指導、勧告ができることになっています。また、女性の登用に特に力を注ぐ企業に対しては補助金や公共調達を増やして積極登用を促すことも記されています。さらに、2020年までに指導的地位にある者に占める女性の割合を3割とすることを目標とすることも明記されています。
そして、このような社会環境の整備に必要な「法制上の措置については、この法律の施行後2年以内を目途として講ずる」としています。
企業が今から取り組むべきこと
まず、女性登用促進に向けて、自らの企業の女性の採用比率や勤続年数の男女差、労働時間状況などを把握・分析し、行動計画・数値目標を設定することになります。その際には、女性の登用を阻んでいる残業・時間外労働の慣行の是正、短縮労働や在宅勤務の推進などの問題も併せて見直してみるべきでしょう。
次に、2020年に「女性管理職30%」という目標を掲げた以上、女性管理職のクオータ制(割当制)の導入などの法的措置も今後、本格的に検討されることとなります。そこで、従来の雇用管理に性的差別がないかなどを見直し、今のうちから女性の昇進を積極的に行っておくなど対策をしておくべきでしょう。
また、女性役員の登用に関しては現状、女性の管理職比率自体が低いことから、適任者を探すのに苦労されると思われますが、社内で適任者がうまく見つからない場合、社外取締役や監査役に就いてもらうことで対応できます。そのことにより社外の視点や女性ならではの視点などを取り込むことができ、企業にとっても大きなメリットとなることでしょう。
コメント
企業が女性を登用するメリットはいくつかありますが、まず、消費者のニーズが多様化する中で、女性ならではの視点で多様性をもたらすことができます。また、女性の採用・昇進が増えれば女性社員のキャリアアップのモデルができて、それに続く女性の仕事に対するモチベーションが向上することになり、企業にとってもプラスになるはずです。そして、働きやすい職場であると社会に示すことができて企業のイメージが良くなり、商品・サービスの売上の向上はもちろんのこと、男女を問わず優秀な人材を採用することにもつながります。
法律の成立・施行を控えており、法律の施行に伴いこれから女性の登用を考えている企業は上記の企業の取り組むべきことなどを参考にされてみてはいかがでしょうか。
参考
労働政策研究・研修機構 ハンドブック2014
厚生労働省 報道・資料
衆議院ホームページ 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」 資料
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