「オワハラ」初の実態調査へ 文科省
2015/05/11 法務相談一般, 民法・商法, その他
事案の概要
企業が内々定を出した学生に対し以降の就職活動を終えるよう働きかける行為や、内定を出す際の条件として長期的に学生を拘束する行為等のうち過剰なものが「就活終われハラスメント(オワハラ)」と呼ばれ問題視されている。文部科学省は、今年度、大学の就職支援担当部署などを対象に、初の実態調査に乗り出す方針である。
オワハラの例として、具体的には、「就職活動を終えること」を条件に内々定を得たが、就職活動を続けていることを明かした途端、長時間の説教の末に内々定を取り消されたケースや、内定の条件として、研修期間の名目で長期間に亘り予定を空けておく旨の誓約書への署名を求められたケース、「内定を辞退したら訴える」と企業に脅されたケースが各大学キャリア支援センター等に報告されている。これらの行為は学生へのオワハラに該当する可能性がある。
文部科学省は、2月に、「内々定と引き換えに就職活動をやめるよう強要する」「8月1日以降、長時間拘束する選考会や行事の実施」などの例を挙げ、就活生へのハラスメントを控えるよう企業に求めている。
オワハラが問題化した背景
日本経済団体連合会(経団連)は、政府の要請を受けて今年から「新卒採用に関する指針」を見直し、2016年度春採用は、企業説明会などの広報活動の開始時期を従来よりも3か月後ろ倒しした3月1日以降、試験や面接などの選考活動の開始時期を従来よりも4か月後ろ倒しした8月1日とした。これは、学生が「本分となる学業に専念する十分な時間を確保すること」を目的とするものである。
外資系や非経団連系の中小・ベンチャー企業は当該指針に拘束されず、早い段階で選考を行うことができる。当該指針に拘束される経団連加盟企業についても、インターンシップや業界セミナーを通じて優秀な人材を見つけ他社ではなく自社の選考を受けるように誘導し、実質的な選考を前倒しで行うことも多いという。また、企業によっては、8月前に「面談」「質問会」「懇親会」と称して実質的な面接を実施することもある。
これにより、選考時期のばらつきが大きくなり、特に、非経団連系で早めに採用選考を行う中小企業ほど優秀な人材を大手企業に取られたくない心理的状況が生じたため、企業が学生の囲い込みに焦るようになった。
企業の対応
多くの企業は、学生の内定辞退対策につき、内定を出した学生と継続的に接点を持つなどといった適切な範囲に止めており、脅迫や強要などの違法性を帯びる行為を行う企業は一部とされる。
コメント
学生売り手市場とされる現状においては、企業にとって、優秀な人材の確保は死活問題である。しかし、人材の囲い込みに焦るあまり、就活生の自由な選択を阻害する拘束はするべきではない。就活生に対して不誠実な対応を行うことは、会社の評判を落とし、利害関係者の信用も損なうことになりかねない。悪評が広まれば、優秀な人材は敬遠するようになり、人材確保も困難になる。また、オワハラによって人材を確保したとしても、その人材が自身にハラスメント行為をした企業で長期的に働くかどうか疑問であり、すぐに転職されてしまう可能性が大きい。
学生にとっては勿論のこと、企業にとっても、このようなオワハラを行うことは長期的に見て有害でしかない。企業には、就活生の自由意思に配慮した適正な範囲での人材確保活動が望まれる。
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