音楽が安くなる?エイベックスが音楽著作権管理に本格参入
2016/01/08 知財・ライセンス, 著作権法, その他
1 概要
レコード会社で数々のヒット曲を有するエイベックスは、自社の音楽著作権の管理をJASRACから自社の子会社であるエイベックス・ミュージック・パブリッシング株式会社に移行することになった(なお、2017年4月から株式会社NexToneに移行する)。現在、日本の音楽著作権の使用料等の管理の約98%は、JASRAC(日本音楽著作権協会)が行っているが、この強力な寡占体制が崩れ、音楽が安く利用できる可能性がでてきた。
2 JASRACによる音楽著作権管理
テレビ等のメディア放送、カフェ、インターネットのBGM等で音楽を使用する場合、使用者は音楽の著作権者に使用料を支払わなければならない。この使用料の徴収を著作権者に代わって行ってきたのが、JASRACである。JASRACは、使用者との間で包括的利用許諾契約を締結して、音楽の使用を許諾している。この包括的利用許諾契約では、どの曲を何回使用したかに関わりなく一括して使用料が決定されている。
また、JASRACは、カフェでの音楽の無断使用に対し法的措置や、インターネットのBGMでの音楽使用についてもyoutubeやニコニコ動画との包括的使用契約を結ぶ活動もしている。
3 エイベックスが参入した背景
音楽業界は、90年代後半からのいわゆる音楽不況で売り上げが減少している。インターネット上への音楽ファイルの違法アップロードが原因とされている。それゆえ、著作権者は、減少した音楽売り上げの中から1円でも多くの著作権料を得たいと考えるようになった。しかし、JASRACの包括的利用許諾契約では、実際の利用実態にあった使用料配分がなされているかが疑問とされていた。また、徴収した使用料からJASRACが差し引く管理料は、徴収した使用料の6%から30%と割高であった。そのため、著作権者の不満が募っていた。
そこに、昨年4月28日、最高裁が、JASRACによる音楽著作権管理事業は他社の新規参入を阻害し、独占禁止法に違反するという判決を出した。
この最高裁判決の後を受けて、エイベックスは音楽著作権管理事業に本格参入したかたちだ。
4 音楽が安くなる?エイベックスの管理システム
エイベックスが管理を委託するエイベックス・ミュージック・パブリッシングは、権利者と使用者の双方にメリットが生じるように、管理料を5%と割安に設定する。また、エイベックス以外の大手レコード会社にも、同社の著作権管理事業への参加を呼びかけ、早期に業界シェア10%を目指している。多くの音楽会社が参加すれば、結果として音楽が安くなる可能性もある。
さらに、最新技術によって個別の曲ごとに使用料管理も可能にするということから、個別の権利者が曲を普及させるために安い使用料を設定することも可能になる。個人の音楽使用のみでなく、企業のHPや広告動画での音楽使用が安価でできる状況も期待できそうだ。
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