中小企業海外知的財産支援制度とは?
2016/03/25 知財・ライセンス, 特許法, 商標法, その他
はじめに
事業のグローバル化に伴い、海外進出を考える中小企業が増えてまいりました。その際問題となるのが特許や商標といった知的財産権の扱いです。今回は特許庁と日本貿易振興機構(ジェトロ)による、中小企業への海外進出を支援する制度の概要を見ていきたいと思います。
中小企業海外進出支援の概要
海外に進出して事業を展開するに際し、一番問題となってくるのが特許や商標といった知的財産権です。たとえば外国での特許取得には数100万円単位で費用がかかりますが、どの国で特許を取得して事業展開するのが良いかはまだ判断が付かない場合も多々あります。特許は通常一つの国で取得し事業展開してから他国で出願しても、新規性が認められない等により特許取得はできません。かと言って手当たり次第出願しておくということは実際的ではないでしょう。そこで特許庁による助成金とPCT国際出願が考えられます。また外国で特許権商標権侵害の被害にあった場合には特許庁による模倣品対策支援事業及び、防衛型侵害対策支援事業が活用できます。
PCT国際出願
PCT国際出願とは、特許協力条約(PCT)に基いてスイスにある世界知的所有権機関(WIPO)にする出願のことです。特許庁を通じてWIPOに国際出願を行うと、締約国の全てで同時に出願を行ったことになります。締約国は台湾を除くほぼ全ての国が含まれており、出願の日から20ヶ月から30ヶ月の猶予期間が与えられます。これはあくまでも出願であって、実際に特許を取得するためには、それぞれの国での手続きを経る必要があります。つまり猶予期間内に希望の国で手続きを行えば最初に特許庁に行った日にその国で出願したという扱いを受けることが出来ます。これにより複数の国で順次特許取得をしていくということが可能となります。そして特許庁ではジェトロを窓口として、国際出願をする中小企業に対し、一社300万円を上限として出願費用の半額を助成しています。
模倣品対策支援事業
海外で模倣品等、特許権や商標権侵害の被害にあった場合、独自に調査して対策することは相当の労力と費用を要します。そこで特許庁がジェトロを通じて、当該国で調査委会社と契約、侵害調査、模倣品業者への警告、行政摘発の申請を代行します。400万円を上限額として経費の3分の2が助成されます。これにより海外での模倣品被害対策の労力と費用を大幅に抑えることが出来ます。
防衛型侵害対策支援事業
日本企業の社名や商標を先に登録(冒認出願)され海外進出後、逆に外国企業から訴えられるという事態が増加しております。このような悪意ある海外企業によるトラブルに巻き込まれた場合に訴訟費用等が助成されます。まずこういったトラブルが生じた場合、ジェトロに補助金申請を行います。審査後、助成の決定がなされた場合、その後にかかった弁理士、弁護士費用、訴訟費用等が500万円を上限として3分の2が助成されます。
コメント
大企業に比して資力に乏しい中小企業にとって、このような海外での知的財産活動にかかる費用は相当の負担になります。また国により言語はもとより知的財産の扱いや法制度、救済方法も異なり、それぞれの国で個別に対応することは困難と言えるでしょう。そこでこれらの制度を活用することによって零細な中小企業でも海外進出が容易になってくるのではないでしょうか。企業が独自で対応することが困難なことでも、各省庁では様々な支援事業を展開しております。まずは担当官庁に問い合わせしてみることをおすすめしたいと思います。
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