東芝の特設注意銘柄、解除判断について
2016/12/16 コンプライアンス, 商事法務, 会社法, メーカー
事案の概要
日本取引所グループ傘下の東京証券取引所は、東芝の特設注意市場銘柄を解除するかどうかの判断を2017年春まで延ばすこととしました。東芝は今期に前期決算数値を訂正したほか、11月には子会社で売上高の過大計上が新たに発覚しました。東証は年内にも特注解除の結論を出すとみられていましたが、東芝全体の改善状況を確認するには慎重な審査が必要と判断しました。
特設注意市場銘柄
東京証券取引所が企業統治に問題があると判断した上場企業を指定する制度です。特設注意市場銘柄に指定された銘柄は、特設注意市場において、通常の取引銘柄と区別されて売買取引を行うこととなります。
どのような場合に特設注意市場銘柄を受けるかは以下のとおりです。
①上場会社が以下に掲げる事項に該当する場合
・虚偽記載
上場会社が有価証券報告書等に虚偽記載(有価証券上場規程第2条第30号)を行った場合。
・不適正意見等
上場会社の財務諸表等に添付される監査報告書等において、公認会計士等によって、「不適正意見」又は「意見の表明をしない」旨が記載された場合。
ただし、「意見の表明をしない」旨が記載された場合であって、当該記載が天災地変等、上場会社の責めに帰すべからざる事由によるものであるときを除く。
②上場会社が適時開示に係る規定に違反したと東証が認めた場合。
③上場会社が企業行動規範の「遵守すべき事項」に係る規定に違反したと東証が認めた場合。
④上場会社が適時開示・企業行動規範に係る改善報告書を提出した場合において、改善措置の実施状況及び運用状況に改善が認められないと東証が認めた場合。
特設注意市場銘柄へ指定されている上場株券等の発行者である上場会社は、当該指定から1年経過後速やかに、内部管理体制の状況等について記載した「内部管理体制確認書」を提出することが義務づけられます。
東証は、上場会社より提出された内部管理体制確認書の内容等に基づき審査を行い、内部管理体制等に問題があると認められない場合には、その指定の解除を行うこととしています。
指定から3年を経過し、かつ、内部管理体制等に引き続き問題がある場合や、内部管理体制確認書の提出を求めたにもかかわらず提出がない場合、内部管理体制等について改善される見込みがない場合に上場廃止になります。
日本取引所グループ
上場廃止
上場廃止をした場合、どのような不利益が生じるのでしょうか。上場廃止後も会社が存続する場合と、会社が倒産する場合がありますが、今回は上場廃止後も企業が存在する場合を想定することとします。存続企業の業績や状況によって、上場廃止決定後の株価は変わっていきます。会社が存続するため、株式価値は一定以上の価値があるとみなされ、株主としての権利は持ち続けることになります。ただし、上場廃止後には市場で株は売れなくなってしまうので著しく流動性が悪化し、資金調達が困難になるなど発行会社や株主に影響が及ぶことになるというリスクがあります。また、上場廃止になることで上場会社としてのステータスの喪失、企業の社会的信用が低下することも考えられます。
コメント
日本を代表する企業が組織的に不正な会計処理をおこなっていたことが明るみになり問題となっています。上場廃止になった場合、会社には上記に述べた不利益が生じ、株主からの責任追及も行われることになり、経営にも大きな影響を与えることになります。企業法務担当者としては、上場することで得られる利益、どのような場合に上場廃止になるか、上場廃止になってしまった場合に生じる不利益などを研修やガイダンスの実施、パンフレット作成等で周知していくとよいのではないでしょうか。
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