高見沢が株式併合を発表、株式併合の手続について
2017/08/29 商事法務, 会社法
はじめに
建設用資材等の販売を手がける高見沢(長野市)が来年1月1日付で5株を1株に株式併合を行う旨発表しました。またそれに伴い単元株式数の変更も行うとしています。今回は株式併合とその手続について見ていきます。
事案の概要
株式会社高見沢の発表によりますと、28日開催の取締役会で発行済み株式5株を1株にする株式併合を行ない、さらに単元株式数を1000株から100株に変更する旨決定したとのことです。その目的は現在証券取引所が進める投資単位の100株への統一と5万円以上50万円未満という投資単位水準に合わせることとしています。同社では発行済株式数が現在約880万株で併合後は約175万株となる予定です。5株に満たない株式を有する株主が全株主の1割ほど存在し、併合後は株主としての地位を失うことになります。それらの端数については金銭による補償となるとしています。また発行可能株式総数も約1,900万株から約380万株に変更となります。
株式併合とは
複数の株式を併せて、それよりも少数の株式とすることを株式併合と言います。株価が下がりすぎたり、株式の価値と管理コストが見合わなくなった場合などに利用され、資本金に影響を与えずに発行済株式数を減少させることができます。株式分割と異なり併合割合によっては1株に満たない端株が生じることになり、株主としての地位を失う場合もあることから株主保護のための特別の手続が用意されております。公開会社では発行可能株式総数は発行済株式数の4倍を超えることができないという、いわゆる4倍ルールがありますが(会社法113条3項)、以前はこの株式併合を使うことによって潜脱が可能と言われておりました。しかし平成26年改正で株式併合でも規制されることとなりました(180条3項)。
株式併合の手続
株式併合を行うには株主総会の特別決議により①併合割合、②効力発生日、③併合する株式の種類、④効力発生日における発行可能株式総数を定めることになります(180条2項、309条2項4号)。取締役会決議で決定できる株式分割との違いです。そして株式併合を行う旨決定した場合、取締役はなぜ株式併合が必要なのか、その理由を株主総会で説明する義務を負います(180条4項)。また上場会社の場合は併合を行う旨の適時の開示が求められます(東証有価証券上場規定402条1号)。なお発行可能株式総数について定めることを要しますが、これは必ずしも併合割合に合わせる必要はなく、4倍ルールの範囲内であれば良いとされます。そして効力発生日の2週間前までに株主と登録株式質権者に通知または公告し(181条)、株券発行会社では株券提供公告を行ないます(219条)。併合により1株に満たない端数が発生する場合は金銭で処理します(235条)。
反対株主保護規定
平成26年改正により、1株に満たない端数が生じる場合には「反対株主」は会社に対して株式を公正な価格で買取ることを請求できるようになりました(182条の4)。効力発生日の20日前から前日までに請求することができます。また株式併合が法令・定款に違反する場合には株式併合の差止請求も可能となりました(182条の3)。
コメント
現在証券取引所では上場会社の株式の売買単位を100株に統一することを進めています。現在は全ての上場会社が100株1単元か1000株1単元のどちらかを採用しています。本来会社法上1単元の株式数は発行済み株式数の200分の1か1000株を上限としており、その範囲で決めることができます(188条2項、施行規則34条)。しかし投資家としては上場会社の単元数がまちまちではその都度調べる必要があり、また単元数を間違って買い注文してしまうケースも散見されました。そこで全国の証券取引所では2018年10月1日までに全ての上場企業の売買単位を100株に統一するとしています。本件で高見沢もこの動きに併せて証券取引所が望ましいとする投資単位の水準になるよう5株を1株とし、1単元を100株となるよう単元株式数も併せて変更するとしています。証券取引所に上場している場合は、4倍ルールや少数株主の保護に留意しつつ1単元100株への移行手続を慎重に進めることが重要と言えるでしょう。
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