電話勧誘で規制違反 注意すべき点は
2018/02/28 コンプライアンス, 特定商取引法
はじめに
東京都は2月1日、電話勧誘販売業者フリーコネクトに対し、特定商取引法(以下、「法」といいます。)16条に違反する事実があったとして業務改善指示を行ったと発表しました。
消費者に対する電話による勧誘では、電話担当者が契約締結を急ぐあまり必要な説明を欠いてしまうことが起こってしまうかもしれません。しかし、そのような事態が生じれば企業や電話担当者にペナルティが課せられることになってしまいます。
電話勧誘販売においては法において様々な規制が設けられていますが、今回は電話勧誘販売とは何であるのかと、電話勧誘販売における法16条の規制について見たうえで、法務担当者として電話担当者による違反行為を回避するためにどのような提案ができるか考えてみたいと思います。
事案の概要
東京都の発表によると、フリーコネクトは消費者に対して電話勧誘販売をするにあたり、勧誘に先立ってその電話が都市ガスの供給役務契約の勧誘をするためのものであることを告げていなかったということです。この、勧誘に先立って勧誘目的を告げなかったことが、法16条が禁止する勧誘目的不明示にあたると判断され、(1)勧誘に先立って勧誘目的を告げること、(2)顧客の知識、経験に照らして不適当と認められる勧誘を行わないことを内容とする業務改善指示がなされました。
法16条 電話勧誘販売における氏名等の明示
電話勧誘販売は事業者が電話で勧誘して申し込みを受ける取引で、法律上、次のように定義されています。
特定商取引法2条3項
この章及び第五十八条の二十第一項において「電話勧誘販売」とは、販売業者又は役務提供事業者が、電話をかけ又は政令で定める方法により電話をかけさせ、その電話において行う売買契約又は役務提供契約の締結についての勧誘(以下「電話勧誘行為」という。)により、その相手方(以下「電話勧誘顧客」という。)から当該売買契約の申込みを郵便等により受け、若しくは電話勧誘顧客と当該売買契約を郵便等により締結して行う商品若しくは特定権利の販売又は電話勧誘顧客から当該役務提供契約の申込みを郵便等により受け、若しくは電話勧誘顧客と当該役務提供契約を郵便等により締結して 行う役務の提供をいう。
これを要約すると電話勧誘販売は、「商品やサービスの提供する事業者が、消費者に電話をかけたり、政令で定める方法を用いて消費者に電話をかけさせて、その電話で商品やサービスの契約締結を勧誘したうえで、その契約を締結し、商品やサービスを提供すること」といえるでしょう。
政令で定める方法とは、具体的には(1) 当該契約の締結について勧誘するためのものであることを告げずに電話をかけることを要請すること、(2) ほかの者に比して著しく有利な条件で契約を締結できることを告げて電話をかけることを要請することとされています。
そして、特定商取引法16条では、電話勧誘販売での勧誘に先立って、(1)事業者の氏名(名称)、(2)勧誘を行う者の氏名、(3)販売しようとする商品(権利、役務)の種類、(4)契約の締結について勧誘する目的である旨を明示しなければならないとされています。この法16条の規定違反すると、業務改善指示(法第22条)や業務停止命令(法第23条)、業務禁止命令(法第23条の2)がなされることになります。
さらに、指示等に従わない場合は、勧誘行為を行ったものに対して懲役や罰金の制裁(法70条、71条)、企業に対しての罰金の制裁(法74条)がなされることになります。
近年の他の例
(1)平成28年11月22日 同盟出版サービス株式会社
東京都の発表によると、電話勧誘販売に係る売買契約について勧誘するに先立って、登記簿上の名称を告げず、また勧誘を行う担当者の氏名について偽名を告げており、さらに、勧誘するに先立ってその電話が売買契約の締結について勧誘するためのものであることを告げていなかったということです。これらが名称不明示、勧誘目的不明示として法16条に違反するとされました。
(2)平成25年9月9日 日本サプリメント合同会社
東京都の発表によると、電話勧誘販売をするに際し、消費者に対し勧誘目的であることを告げず、「注文した健康食品ができたので、お届けにあがります。」などと告げて勧誘を始めていたということで、勧誘目的不明示として法16条に違反するとされました。
コメント
電話勧誘の担当者が販売数を伸ばしたいがために消費者に対して勧誘目的の電話であることを告げずに話を進め、強引に勧誘しようとする事態が生じるかもしれません。また、電話担当者の不注意から告知漏れが生じることもあるかもしれません。そのような事態が生じれば企業に対して業務改善指示等がなされ企業名が公表されることとなり、企業のイメージ悪化につながります。
また、改善指示等に従わなければ、行為者に懲役や罰金の制裁がなされ、企業に対しても罰金の制裁がなされる仕組みになっていますので、企業にとっても大きな損失となります。
法務担当者としてはその対策としてまず、電話勧誘の担当部門と連携して、勧誘の本題に入る前の告知事項をチェックリスト化して見える場所に置くことで不注意による漏れを防ぐ、定期的な研修を制度化して実際に勧誘を担当する者を交えて会話例などの具体的なデモンストレーションを行うことで注意喚起を図る、といった提案をすることが考えられます。また、電話の担当者の発言を録音・チェックできるように通話録音システムを導入して不当な勧誘があれば直ちにやめさせる、さらに、業務改善指示等がなされた後も改善がなければ企業のみならず勧誘を行った本人に対しても罰金等の罰則があることを明確に伝えることで不当な勧誘を防止する、といった提案をすることも考えられるでしょう。
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