パナソニックが導入か、「時間単位年休」について
2018/03/13 労務法務, 労働法全般
はじめに
日経新聞電子版は13日、パナソニックが労使交渉で1時間単位で有給を取得できる制度の導入に向けて検討に入っている旨報じました。従業員のより柔軟な有給取得を目指した制度。今回は年次有給休暇制度と時間単位年休について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、パナソニックでは配偶者の出産や育児、親の介護など家庭の事情で取得できる「ファミリーサポート休暇」制度を採用しているとされます。これは有給休暇の一種で、年5日を限度として半日単位で有給休暇を取得できるとのことです。現在山場を迎える春季労使交渉で、パナソニック労組はこのファミリーサポート休暇を1時間単位で取得できるよう、制度の変更を求めています。これにより、より柔軟に有給を取得でき、有給消化率の向上が見込めるとのことです。
年次有給休暇とは
労働基準法39条では、労働者の心身の疲労の回復とゆとりある生活の実現を目的に一定の要件のもとで年次有給休暇を与えることになっております。使用者は雇用の日から6ヶ月間継続勤務し、80%以上出勤した労働者に10日の有給休暇を与えることになっております。さらにその6ヶ月経過した日から1年経過すれば1日、2年経過すれば2日、3年で4日、4年で6日と加算されていきます。6年と6ヶ月経過した場合、合計で20日となります。この年次有給休暇の付与は使用者の法的な義務であり、労働者にとっては権利と言えます。しかし会社の事業の正常な運営を妨げる場合には「他の時季」に与えることができます(同5項)。これを時季変更権といいます。また有給取得請求は2年で時効となります(115条)。
時間単位年休
39条4項によりますと、労働組合、または労働者の過半数を代表する者との労使協定により、年5日分を限度として時間単位で有給休暇の取得を認めることができます。これを時間単位年休と言います。この制度を採用するためには労使協定で①対象労働者の範囲、②時間単位で与えることができる日数、③1日あたりの時間数、④1時間以外の時間単位を定める場合はその時間を定める必要があります。またその旨就業規則に記載する必要もあります(89条1号)。
具体例
たとえば勤続年数が6年半以上で、1日の所定労働時間が8時間の場合、8時間✕5日で40時間が1年間に与えることのできる時間単位年休となります。つまり1年で20日、そのうち40時間(5日分)を時間単位で与えることができます。1日の所定時間が1時間に満たない端数がある場合、たとえば7時間30分といった場合には8時間というように1時間単位に切り上げて計算することになります。
コメント
厚労省の就労条件総合調査によりますと、2016年の有給取得率は49.4%となっております。日本の取得率は世界30カ国では最低とされ、政府が目指す2020年までに70%の取得率は程遠いとされております。時間単位年休制度を導入することによって、たとえば午前中2時間を育児や介護に充てるといった取得が可能となり、従業員のワークライフバランスと取得率の向上が期待できると言えます。パナソニックだけでなくNECも時間単位年休の導入にむけて協議を行っており、また島津製作所も既に導入しているとのことです。以上のとおり有給休暇付与は労基法上の義務であり、就業規則での記載事項でもあります。法定要件を正確に把握し、柔軟に制度を採用していくことが重要と言えるでしょう。
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