スルガ銀行に警告、検査忌避について
2018/05/18 金融法務, 民法・商法
1 はじめに
日経新聞電子版によりますと、シェアハウスへの投資をめぐるトラブルで、問題の経緯を知ると思われるスルガ銀行の行員が解雇されたのことです。この件につき、金融庁はスルガ銀行に対し、「銀行法上の検査忌避になりうる」として、警告を行いました。そこで今回は①金融検査②検査忌避③今後の実務に向けての3点について検討していきます。
2 金融検査とは
金融検査(銀行法25条2項)とは、検査官と呼ばれる金融庁の職員が、金融機関の業務内容を調べる検査のことを言います。検査官は金融機関の本店や支店に行き、関係書類に目を通したり、役員らから事情を聴いたりします。金融庁が作成した金融検査マニュアル(中小企業融資編)によると、検査の際、検査官は以下の点をチェックするようです。
①代表者等との一体性
②企業の技術力、販売力、経営者の素質やこれらをふまえた成長性
③経営改善戦略
④貸出条件およびその履行状況
⑤貸出条件緩和債権
⑥企業・事業再編の取組みと要管理先に対する引当
⑦資本的劣後ローンの取り扱い
3 検査忌避とは
検査忌避とは、検査の際、検査を妨害する行為のことをいいます。銀行法63条3号には、検査忌避に該当する要件として、以下のことが記載されています。
①検査官の質問に対して答えないこと
②虚偽の答弁を行うこと
③検査を拒み、妨げ、忌避すること
4 今後の実務に向けて
シェアハウスへの投資をめぐる一連のトラブルで、スルガ銀行はシェアハウス所有者のほとんどに融資をしていたそうです。多くの融資を担当し、事情を知っていると思われる担当職員は3月で退職しており、他の職員らも退職の意思を示していたようです。退職した人間に対しては調査ができず、実態解明を困難にさせるという点で、③の類型に該当するおそれがあるとして、異例の警告に踏み切ったようです。スルガ銀行は「アンケート結果の記載内容を精査のうえ、きちんと調査する。その主体や方法は検討しており、第三者委員会も選択肢の1つだ」とコメントしています。金融庁によると、今後、悪質性が高いと判断した場合は、刑事告発も視野に入れているとのことです。
銀行法63条の検査忌避をしたと認められ、刑事告発された場合、代表者に対しては懲役刑(1年以下)、会社に対しては罰金(300万円)が科せられる可能性があります。信用業である銀行からすると、信用の失墜は大きな問題であるため、刑事告発とならないよう、立入検査の際にとるべき行動の指針を立てておく必要があるでしょう。
調査官側の要求に真摯に対応し、証拠隠滅・隠匿等の妨害行為を行わないことが基本方針です。①誰が責任者として対応するのか②どこにどのような資料が保管されているのか③大人数が入り込んで大量の資料を扱うだけの十分なスペースが確保されているか等を事前に決定したり、確認したりしておくことは、スムーズな応対のために役立つでしょう。
自社の利益を守る必要もあります。①令状その他それに準ずるような紙面の提示を求める②押収される資料の把握・原本ではなくコピーの提出③調査官側に検査権限の無い文書につき調査・押収されないよう立ち会うことなどが有効であると考えられます。事情聴取の際も、質問に誠実に回答しつつも、何の根拠もなしに会社にとって不利益となる発言を控えるよう意識するべきです。検査終了後は、どのような資料が押収されたのかのリスト作成や、聴取内容等をまとめた報告書を作成し、今後に備えておくことが必要です。
【参考サイト】
コトバンクー検査忌避
└金融検査
DIAMOND onlineー突然オフィスに当局の立入検査が!会社を致命的な窮地に追い込む“失敗な対応”
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