CGC管理に開始命令、会社法の特別清算手続について
2018/07/06 事業再生・倒産, 会社法
はじめに
ゴルフ場を管理運営するCGC管理(名古屋市)が先月の20日までに名古屋地裁から特別清算開始命令を受けていたことがわかりました。負債総額は145億円とのこと。今回は会社法の特別清算について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、「CGC管理株式会社」は1993年頃から「中京ゴルフ倶楽部石野コース」をオープンし運営してきました。その後ゴルフ場の造成やクラブハウスの建設に加え、ゴルフブームの低迷や近隣ゴルフ場との競争激化などによって経営が悪化し、会社分割や事業譲渡などを繰り返してきたとのことです。昨年度期末時点での負債総額は約145億円で現在ゴルフ場は譲渡先会社が運営しているとされます。
会社法上の精算
一般的に会社が解散した場合、会社は精算手続に入り清算人が選任され、現務の結了、債権債務の処理、残余財産の分配がなされ、株主総会での決算報告書の承認を経て精算結了となります。これが通常精算です。しかしここで「精算の遂行に著しい支障を来すべき事情」がある場合または「債務超過の疑い」がある場合には特別清算によることになります(会社法510条)。債権者、清算人、監査役、株主は裁判所に特別清算開始の申立を行うことができます(511条1項)。なお「債務超過の疑い」がある場合には清算人は申立が義務付けられます。また精算会社の財産が明らかに「債務を完済するのに足りない」場合は破産手続開始の申立が義務となります(484条1項)。
特別清算とは
裁判所により特別清算開始命令が出されますと会社の精算手続は裁判所の監督のもとで行われることになります(519条1項)。財産の処分や借財、訴えの提起、和解などの行為は裁判所の許可を要することになります(535条1項各号)。そして会社財産を裁判所主導のもとで換価配当し、残債務を「協定」に従って弁済していくことになります。「協定」とは残債務について減免や期限の猶予などを債権者の同意のもとで決定していく今後の弁済案のようなものを言います(564条~567条)。
特別清算の手続の流れ
特別清算開始命令が出されると、破産手続き申立や会社への強制執行、仮差押などの手続きが禁止され、すでに行われている場合は中止されます(515条1項)。担保権の実行や会社に対する相殺も禁止され(516条、517条)、財産目録が作成され(521条)、会社財産が強制執行手続きのもとで換価されていきます(538条1項)。その後遅滞なく債権者集会を開催し財産状況や今後の精算の方針などを説明します(562条)。その後協定案を作成し再び債権者集会を開催して債権者の3分の2以上の同意による可決と、裁判所の認可を経て協定通りに弁済が実行されていきます(567条、568条)。最後に裁判所による精算終結決定により精算手続終了となります(573条)。
コメント
本件でCGC管理は負債総額が145億円となっており「債務超過の疑い」が裁判所に認められたことになります。「債務超過の疑い」は基本的には解散時の貸借対照表上債務超過であればよいと言われております。今後裁判所監督のもとで財産調査、債権者集会、財産の処分、換価・配当、協定案の策定などに入っていくものと考えられます。以上のように会社が解散した際の財産状況によって精算の手続きが変わってきます。なお会社法の特別清算手続を利用できるのは株式会社のみとなっております。合名会社、合資会社、合同会社などの持分会社や特例有限会社は利用できず、破産手続によることになります。会社自身、またはグループ内の子会社を整理して解散する場合にはどの手続によって精算していく必要があるかを見定めて遂行していくことが重要と言えるでしょう。
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