ネットの風評被害への対応
2018/11/27 コンプライアンス, 民法・商法
1.はじめに
現代では、ネットが普及し、誰でも簡単にアクセスし、自由に企業等の口コミを書くことができるようになっています。そのような書込みには、企業の評判を上げるような良い書込みもあれば、逆に企業の評判を貶めるような悪い書込みもあります。悪い噂は真実であるかどうかは関係無しにあっという間に広がり、企業の評判や信用をおとし、企業が採用面で苦労したり、業績を悪化させてしまう事態を引き起こす可能性があります。そのような風評被害についてどのように対策をすべきでしょうか、以下、説明していきたいと思います。
2.対応
(1)削除請求
まず、口コミサイトや掲示板に風評被害につながる書込みがなされた場合、そのサイト管理者に当該書込みの削除請求を依頼することが挙げられます。しかしながら、この依頼はあくまで任意削除の依頼であって強制力はありません。サイト管理者もクレームがはいったからといっていちいち投稿を確認・削除するような手間はかけないと考えられます。そこで、実効性を高めるために、削除依頼の際には、企業がどのような権利侵害を受けたかを具体的に説明した上で、サイト管理者だけでなく、ウェブサイト管理者、サーバー管理者、接続プロバイダの管理者にも削除請求をするのがよいと考えられます。また、その際には、サイト内の削除に関するガイドライン等を確認し、削除を請求できる案件かどうかの確認もしたほうがよいと思われます。
(2)仮処分
次に、削除申請をしても投稿が削除されない場合には、法的手段を講じることが考えられます。具体的には、インターネット上の情報拡散のスピードに対応するために、迅速に対応できる仮処分を行うことが挙げられます。「仮」であっても裁判所による判断がなされた場合、サイト管理者等は、書込みを削除するケースが多いので、仮処分でも充分な解決が期待できると思われます。仮処分を認めてもらうためには「権利侵害」「保全の必要性」「担保金の供託」の要件を充たす必要があります。特に「権利の侵害」はどのような書込みがあり、それによって企業のどのような権利が侵害されたかを詳しく説明できるようにする必要があると思われます。
(3)投稿者の特定
一人の人物が繰り返し悪評を書き込んでいた場合、上記(1)(2)の方法でひとつの記事を消したとしても、次々と悪評をばら撒かれるおそれがあるのであまり意味は無いと思われます。そのような場合には、発信者情報開示請求によって、投稿した発信者を特定し、その個人に対して、差止請求、損害賠償請求、名誉毀損による刑事告訴などをすることが考えられます。
3.法務部員の対応
現代社会において、ネットは身近な存在であり、企業間の取引や就職活動においてもネットから企業の情報を得ることが考えら得ます。そのような中で、根拠の無い悪評が出回っているせいで、仕事が上手く回らないケースも多々あります。そして、インターネットによる情報の拡散スピードが非常に早いことから、悪評を見つけ次第、スピーディに対応することが求められます。しかしながら、このような悪評は営業や採用の担当者が不審に思って発見する場合が多いと思われるので、法的手段を講じる必要も場合によってはあるのに、法務部員の対応まで回ってこないおそれがあります。そこで、法務部員は、自分たちがそのような悪評等に法的な対応ができるということを周知させ、さらに、社内の法律相談で企業の悪評に関する相談受けるを体制を整備して行く必要があると考えられます。また、法務部員は迅速な対応を実行するために、ネットに対する法的対応を学ぶとともに、仮処分等の要件をしっかり把握することを徹底すべきと考えます。
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