2018年休廃業数16000件、特例有限会社について
2019/03/27 会社設立, 会社法
はじめに
東京商工リサーチの2018年「休廃業・解散企業」動向調査によりますと、2018年は2016年以来2年ぶりに企業数が増加しましたが、休廃業・解散した企業数は4万6724件に達したとのことです。そのうち特例有限会社は約1万6000件にのぼります。先日は合同会社について見ていきましたが、今回は特例有限会社について見ていきます。
特例有限会社とは
平成17年商法改正以前では、株式会社の設立には資本金が最低1000万円以上、取締役3名以上、監査役1名以上が必要でした。これは小規模な事業を営もうとする場合には相当な負担でした。そこでより簡易な会社として有限会社を設立することができました。有限会社の場合は資本金は300万円、取締役も1名で設立が可能でした。平成17年商法改正に伴い有限会社法が廃止となり有限会社は以後設立ができなくなり、代わりに合同会社が導入されました。それまでに設立されていた有限会社は会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(整備法)の下で株式会社の一種である「特例有限会社」として存続しております。
特例有限会社の特徴
(1)株式について
特例有限会社も株式会社の一種であることから株式を発行することになります。株式会社同様、種類株式、新株予約権、のいずれも発行することが可能です。しかし株式会社と異なる点として株式の譲渡制限が強制されます(整備法9条1項)。つまり強制的に非公開会社となります。ただし株式の譲渡相手が同じ会社の他の株主である場合には譲渡を承認したものとみなされます(同3項)。
(2)機関について
特例有限会社も株式会社の一種であることから株主総会と取締役は必須となります。監査役は任意です。しかし取締役会、監査役会、会計参与、監査等委員会、指名委員会等を設置することはできません。また会計監査人も設置することはできません(整備法17条1項、2項、会社法326条、328条2項)。また取締役の任期は株式会社では通常2年、非公開会社では10年まで伸長できますが、特例有限会社では無制限です。
(3)株主総会について
特例有限会社は株式会社の非公開会社と基本同様に扱われることから株主総会でも招集通知は1週間前までに行い(会社法299条1項)、決議事項も会社に関する一切の事項に及び(295条1項)、議題等も通知は不要です(299条4項)。ただ決議要件に違いがあり、特例有限会社での特別決議は総株主の半数以上の頭数要件に加え議決権の4分の3以上という厳しいものとなっております。
(4)計算について
特例有限会社は株式会社同様に計算書類や事業報告、附属明細書の作成と本店備え置きは必要ですが決算公告は不要です(整備法28条、会社法440条)。また取締役会を置くことができないことから中間配当も不可能となります。
特例有限会社から株式会社へ
特例有限会社は定款変更を行い、商号を株式会社に変更することによって通常の株式会社に移行することができます。具体的には上記特別決議によって定款変更決議を行い、株式会社の設立登記と有限会社の解散登記を同時に行うことになります。この際取締役は既に移行後の任期よりも長く就任している場合は一旦退任となります。
コメント
平成17年の有限会社法廃止に伴い、それ以降は新たに有限会社を設立することはできません。そのため有限会社は年々減少し最終的には存在しなくなることが前提となっております。また上記のように「特例」として存続が認められているため通常の株式会社よりも制限が多く不便である場合も少なくありません。また一般的に特例有限会社よりも株式会社のほうが信用力が高く、融資などの場合でも不利な点もあると言われております。しかし一方で有限会社は古くから存在している場合が多く、長年続いている老舗としての見られる場合もあります。また決算公告が不要であったり、役員の任期に制限が無いなどメリットもあります。今現在特例有限会社である場合はそれらのメリット・デメリットを考慮して、株式会社に移行するかそのまま継続するかを慎重に判断していくことが重要と言えるでしょう。
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