テキシアジャパン幹部を起訴、預かり金の禁止について
2019/05/07 コンプライアンス, 出資法
はじめに
架空の投資話で多額の出資金を集めた事件で名古屋地検は先月24日、投資コンサルティング会社「テキシアジャパンホールディングス」(千葉市)の幹部遠藤善治容疑者(49)を起訴していたことがわかりました。同社経営者は既に詐欺罪で起訴されております。今回は出資法の預かり金規制を見直します。
事件の概要
報道などによりますと、テキシアジャパンは平成25年7月~29年9月にかけて架空の出資話で全国の会員約1万3千人から計約460億円を集めたとされます。その際に元本を保証した上で年36%の利息をつけて返還するなどと説明していたとのことです。同社の実質的経営者である銅子正人被告(41)は既に詐欺罪と出資法違反で起訴されており、同社幹部の男女8人もそれぞれ出資法違反で起訴されております。この件で先月18日に被害対策弁護団が結成されており今後訴訟も視野に準備を進めていくとしています。
出資法による規制
出資法2条1項によりますと、「他の法律の特別の規定のある者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない」とされております。つまり銀行などの金融機関でない者が預貯金等に類する行為を行うことはできないということです。違反した場合には3年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれらの併科となります(8条3項1号)。以下要件を具体的に見ていきます。
預り金の要件
出資法が規制する預り金に該当するための要件としてはまず、①不特定多数の人間への勧誘が挙げられます。狭い範囲の会員に限定されている場合などは該当しません。そして②元本保証の下に③金銭その他有価証券等を集めること、それに対し④金銭が返還されることとなります。つまり金銭や有価証券等を集め、マイナスとならない元本保証をした上で金銭を返還するといった内容で資金を集めることが違法となります。その際の名目は問わないと言われており、たとえば入会金や融資、出資金、借入金、利益分配金等どのような名目で行われても、実質的に上記内容となっているのであれば違法となります。
罪数および詐欺罪との関係
預り金の勧誘行為は通常、不特定多数の人間に行われ、多数の人間から多数回にわたり金銭を受けるといった例が多いと言えます。この場合でも勧誘内容が同一であれば全体で一つ罪になると考えられております。また預り金の受け入れは同時に刑法の詐欺罪(246条)に該当することもあります。詐欺罪にも該当する場合とは、返還が不能であることを認識しつつ勧誘するなど、騙し取る意思(故意)がある場合などが挙げられます。この場合は実務上は詐欺罪だけが適用されると言われております。
コメント
本件でテキシアジャパンは架空の投資話で全国の不特定多数の人間に対し元本保証を謳った上で出資を募っていたと言われております。これらの行為は出資法の預り金に該当すると判断される可能性が高いと言えます。以上のように出資法の預り金は不特定多数への勧誘と元本保証がポイントとなります。本来この規定は詐欺罪が適用できない事例、つまり詐取の故意が立証できない場合を想定して制定されたという背景があり、だまし取るつもりは無かった場合、事業のための出資のつもりであり問題なく返還できると考えられていた場合などでも適用があります。共同で事業を行うなど、多数の者から資金を集める場合には上記の要件を念頭に、違法な預り金に該当しないよう慎重に行うことが重要と言えるでしょう。
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