トヨタファイナンスが利回りゼロで発行、社債について
2019/10/31 商事法務, 会社法
はじめに
日経新聞電子版は28日、トヨタ自動車グループのトヨタファイナンス(名古屋市)が利回りゼロの社債を発行していた旨報じております。
一般企業が発行する社債で利回りゼロは国内初とのことです。
今回は企業の資金調達方法の一つである社債について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、トヨタファイナンスは償還期限3年間で利率0.001%の社債は200億円発行するとされます。
額面100円あたりの発行価格は100円00銭3厘であることから3年間での金利負担は実質ゼロとなり利回り0%の社債となります。
申込み期限は10月11日で払込期日は同月25日となっております。
投資会社や金融機関などから発行額の2倍にあたる400億円分の申込みがあったとのことです。
社債とは
社債とは株式発行や金融機関からの借り入れと並ぶ資金調達方法の一つで会社を債務者とする金銭債権を言います。
株式発行と違い会社の支配関係に影響をおよぼさず公衆から資金調達を行うことができます。
また投資家から見ても償還期限に利息付きで返済されることから銀行預金よりも高い利息を得られる手段となります。
反面株式と違い会社の業績に合わせた利益を得られることはできず、また会社が倒産した場合には貸し倒れとなるリスクもあります。
社債の発行手続き
(1)社債発行の決定
社債発行の決定は業務執行の一環であることから取締役会設置会社では取締役会で(会社法362条4項5号)、取締役会非設置会社では取締役の過半数で決定することとなります(348条2項)。
委員会設置会社の場合は決定を執行役に委任することも可能です(416条4項)。
また取締役会非設置会社では株主総会によって決定することもできます(295条1項)。
(2)決定事項
募集社債発行をする際には、①募集社債の総額、②各募集社債の金額、③利率、④償還方法と期限、⑤利息支払い方法と期限、⑥社債券を発行する場合はその旨、⑦記名式、無記名式の転換を制限する場合はその旨、⑧社債管理者が社債権者集会によらずに訴訟行為などをすることができることとする場合はその旨、⑨各募集社債の払込金額、⑩払込期日、⑪打切発行をしない場合にはその旨、⑫その他施行規則162条で定める事項を決定することとなります(676条)。
(3)申込みと割当
上記募集事項を決定したら引受ようとする者に通知することとなります(677条1項)。
これを受け申込みをしようとする者は氏名・名称、希望の社債の金額、数を書面で会社に交付することとなります(同2項)。
それを受け会社は誰にいくら引き受けてもらうかを決定することになります。
この決定は募集株式と同様に会社側が自由に決定することができ、平等に割り当てる必要はありません(204条1項)。
そして割当を受けた者は払込期日に払込をします。
社債管理者
社債を発行する場合は原則として社債管理者を定める必要があります(702条)。
しかし社債権者が50人を下回る場合や各社債の金額が1億円以上である場合は設置義務はありません(同ただし書、施行規則169条)。
これらの場合は社債権者が金融機関などのいわゆる金融のプロであることから社債権者保護の必要性に乏しいからです。
コメント
社債は株式発行と違い株式会社以外の会社でも行うことができ、また借り入れと違い有価証券の一種と言えることから流動性があり多数の小口投資家から資金調達を行えるという特徴があります。
反面株式と異なり償還する必要がありまた社債管理者の設置義務などがあります。
投資家側から見れば預金よりも割の良い利息収入が見込める投資先と言えます。
しかし本件でトヨタファイナンスは国内で初の利回りゼロ社債を発行しました。
これは一般投資家向けではなく金融機関向け社債と言えます。
日銀による社債買い入れでの利益を見越したものと言われております。
以上のように会社には様々な資金調達手段がありますが、利回りゼロ社債も選択肢の一つとなったと言えるのかもしれません。
それぞれのメリット・デメリットなどを踏まえて最適な資金調達を選択していくことが重要と言えるでしょう。
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