ほっともっとに是正措置取らず、フランチャイズと優越的地位の濫用について
2020/08/05 フランチャイズ, 独禁法対応, 独占禁止法, その他
はじめに
弁当店チェーン「ほっともっと」の加盟店オーナーが運営会社に商品の値引きなどを強制されたとして是正を求めていた問題で、公正取引委員会は是正措置を取らないとの判断をしていたことがわかりました。オーナー側は今後民事訴訟で争うとのことです。今回はフランチャイズ契約と優越的地位の濫用について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、「ほっともっと」苫小牧末広店のオーナーは運営会社のプレナスから商品の値引きを強制されたり、過剰な広告費の負担を求められたとし、これらは独禁法上の優越的地位の濫用に当たるとして公取委に是正措置を求めていたとされます。これに対し公取委側は、独禁法上の問題とすることは難しく措置は取らなかった旨通知していたとのことです。オーナー側は加盟店が本部に逆らいにくい構造があり、公取委に積極的に介入してほしかったとしています。
フランチャイズ契約と独禁法
近年コンビニや外食産業を中心にフランチャイズ契約による全国的な事業の展開が増加しております。本部側にとっては他人の資本や人材を活用でき、また加盟者側にとっては本部から提供されるノウハウやブランド力、流通システム等を利用できることから互いにメリットも多く今後も拡大していくことが予想されます。一方で構造的に立場の強い本部側に加盟者側が逆らいにくい状況となりやすく独禁法上の問題点も多々指摘されております。主に優越的地位の濫用や抱き合わせ販売、拘束条件付取引などが問題となりやすいとされております。以下優越的地位の濫用について見ていきます。
フランチャイズ契約と優越的地位の濫用
公取委のガイドラインによりますと、フランチャイズシステムによる営業を的確に実施する限度にとどまるものであれば直ちに独禁法上問題となるものではないが、契約または本部の行為がその限度を超えて正常な商慣習に照らし不当に加盟者に不利益を与える場合は優越的地位の濫用に該当するとしています(独禁法2条9項5号)。そしてこの場合における優越的地位とは、加盟者にとって本部との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、自己に著しく不利益なものであっても本部の要請を受け入れざるを得ないような場合とされます。その判断に当たっては取引依存度、本部の市場における地位、加盟者の取引先変更可能性、本部と加盟者間の事業規模の格差等を考慮するとされます。基本的には通常の優越的地位の濫用の判断基準と変わらないもとの言えます。
主な具体例
フランチャイズにおける優越的地位の濫用の具体例としては次のようなものが挙げられます。まず商品、原材料、店舗掃除や内装工事等の依頼先を正当な理由がないのに特定業者にみに制限すること。本部が必要な範囲を超えて仕入れ量を強制すること。正当な理由がないのに見切り品の販売を禁止し、売れ残り品の廃棄を余儀なくさせること。当初の契約にない新規事業の導入を強制すること。本部が加盟者に対して供与したノウハウ等の保護に必要な範囲を超える地域、期間、内容の競業禁止義務を課すことなどが挙げられております。特にコンビニの見切り品販売の制限については過去に排除措置命令が出された例があります。
コメント
本件で加盟店オーナー側の主張では本部プレナスから商品の値引きを強制されたり、過剰な広告費の負担を求められたとしています。両者の市場における地位や取引依存度、事業格差や取引先変更の可能性等から考えても、プレナスに優越的地位が認められる可能性は高いと言えます。しかし公取委は現段階で独禁法上の問題とすることは困難としました。詳細は不明ですがフランチャイズシステムの適切な運営の限度を超える濫用行為が確認できなかったのではないかと考えられます。以上のようにフランチャイズ契約では統一的なフランチャイズシステムを適切に確保する範囲ではある程度の制約は認められると言えます。しかし正当な理由のない制限や強制は優越的地位の濫用と判断される可能性が高くなります。フランチャイズシステムを採用している場合は今一度加盟店との関係を確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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