ぼったくり水道工事で逮捕、クーリングオフ制度について
2021/02/10 消費者取引関連法務, 特定商取引法, その他
はじめに
兵庫県加古川市に住む女性(65)にトイレ工事の契約を解除する際「クーリングオフはできない」などと嘘を伝えた疑いで元水道工事業者の男(24)が逮捕されていたことがわかりました。関西では近年同様の被害が相次いでいるとのことです。今回は各種法令で規定されているクーリングオフについてみていきます。
事件の概要
報道などによりますと、元水道事業者の小泉容疑者は昨年10月、加古川市内に住む女性宅でトイレ工事を行い、女性が契約解除をする際に「クーリングオフはできない」などと伝えたとされます。県内ではトイレや風呂場などの水道工事の際、見積もりも出さずに不要な工事を行い法外な料金を請求するケースが相次いでいるとのことです。逮捕された小泉容疑者は容疑を否認しております。
クーリングオフとは
クーリングオフとは、特定の契約について、一定期間、消費者が無条件で申し込みの撤回または契約解除ができる制度を言います。訪問販売など不意の勧誘により消費者が冷静に判断できていないまま契約を締結してしまうことが多く、一旦時間を置いて頭を冷やして再考する機会を与えることが目的と言われております。クーリングオフ制度は主に特定商取引法に規定されておりますが、それ以外にも割賦販売法や宅建業法、保険業法などにも同様の規定が見られます。なおこの制度はあくまで一般消費者保護を目的としていることから契約相手が事業者である場合には適用されません。零細な個人事業主である場合も同様です。
クーリングオフ期間
クーリングオフの期間はそれぞれ対象となる契約によって異なります。キャッチセールス、アポイントメントセールスを含む訪問販売では書面を受領した日から8日間(過量販売の場合は1年間)(特定商取引法9条、9条の2)、電話勧誘販売の場合も書面を受領した日から8日間となります(同24条)。マルチ商法の場合は書面受領日から20日間(40条)、語学教室や学習塾、エステなどの継続的役務提供契約も書面受領日から8日間です(48条)。ダイレクトメールの宛名書きを行い、それにより商品が購入された場合に業者から収入が得られるといった業務提供誘引販売取引の場合は20日間です(58条)。それ以外にも宅建取引やゴルフ会員権契約、保険契約も8日間となっております(保険業法309条、宅建業法37条の2等)。
虚偽説明の禁止
特定商取引法では事業者に対し、氏名等の明示義務、虚偽・誇大公告の禁止、書面交付などを義務付けております。価格や支払い条件などについて虚偽の説明をしたり勧誘に際して威迫を行うことなども禁止されております。そして相手方の申し込みの撤回や契約の解除に関する事項についての虚偽の説明も禁止されます(6条1項5号、9条)。これは当然クーリングオフに関する事項が含まれており、違反した場合には8日間が経過した後でも、当該業者が改めてクーリングオフ等ができる旨を記載した書面を交付した日からさらに8日間経過するまで契約解除することができます(9条1項カッコ書き)。またこれらの禁止行為や義務違反に対しては消費者庁による業務改善指示、業務停止命令などが出されることがあります(14条、15条、22条、23条等)。更に罰則として3年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれらの併科が規定されております(70条1号)。
コメント
本件で小泉容疑者はトイレ工事の契約を解除する際に「クーリングオフはできない」などと虚偽の説明をしたとされます。詳細は不明ですが消費者が業者を呼んで依頼する際、それ以外の商品やサービスを勧誘し契約させた場合はクーリングオフの対象となります。これに関する虚偽説明も上記のとおり違法となります。近年水道工事の際に見積もりも出さず不要な工事を行い、数100万円に登る法外な代金を請求する事例が増加していると言われております。このような場合にも特定商取引法は適用され、違反の際には重い罰則の適用も有りえます。今一度これらの規制内容を確認し、自社での販売方法を見直しておくことが重要と言えるでしょう。
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