鳥取県日野町社協で規定改ざん、就業規則について
2021/02/22 労務法務, 労働法全般, その他
はじめに
鳥取県日野町の社会福祉協議会で法定の手続きを踏まずに就業規則を書き換え、休職した職員の給与を減額していたことがわかりました。規定を改ざんしたとされる会長は解任されたとのことです。今回は就業規則の変更について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、同社協の就業規則では休職している職員には給与の80%を支給すると規定されているところ、その部分が50%に書き換えられ、休職中の女性職員に支払われていたとされます。同女性職員が町の事務局に照会したところ書き換えられた規定のコピーが送らてきたことから発覚し、理事会の内部調査で改ざんが認められ規定変更の無効が決定されたとのことです。調査では期末手当、勤勉手当も削除されており、長期休職の給与の支給率も60%から30%に改ざんされていたことがわかっております。改ざんを行ったとされる同社協の会長は辞表を提出しておりましたが理事会は解任したとされます。
就業規則とは
就業規則とは、労働者の賃金や労働時間などの労働条件に関する職場内での規律を定めた規則集を言います。これにより労使間のトラブルを防止し労使双方が安心して事業活動を行うことができます。就業規則は常時10人以上の労働者を使用する場合に作成が義務付けられ、行政官庁に届け出る必要があります(労基法89条)。就業規則は法令や労働協約に反することはできず(92条)、また就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約はその部分については無効となり、無効となった部分は就業規則の基準が適用されることとなります(労基法93条、労働契約法12条)。以下記載事項について見ていきます。
就業規則の記載事項
(1)絶対的記載事項
就業規則には必ず記載しなければならない事項である絶対的記載事項があります。①始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制の場合は就業時転換に関する事項、②賃金の決定、計算、支払いの方法、賃金の締め切りおよび支払い時期、昇給に関する事項、③退職、解雇等に関する事項となります。これらは必ず規定して記載することとなります。
(2)相対的記載事項
上記必要的記載事項の他に、当該事業場で定めをする場合には記載することとなる事項として相対的記載事項があります。①退職手当に関する事項、②賞与、最低賃金に関する事項、③食費、作業用品などの負担に関する事項、④安全衛生に関する事項、⑤職業訓練に関する事項、⑥災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項、⑦表彰、制裁に関する事項、⑧その他全労働者に適用される事項となっております。
就業規則の変更
就業規則を労働者の不利益に変更するには原則として労働者との合意を要します(労働契約法9条)。しかし例外として次の場合には合意なく変更することができるとされます。変更後の就業規則を労働者に周知し、かつ変更による労働者の受ける不利益の程度、労働条件変更の必要性、変更後の内容の相当性、労組との交渉の状況その他変更にかかる事情に照らし合理的である場合は変更は有効とされます(10条)。なお予め使用者と労働者で変更されない労働条件として合意していた項目についてはこれによる変更はできないとされます(同ただし書き)。変更した場合は労基署に届け出ることとなります。
コメント
本件で日野町社協の会長は就業規則の期末手当、勤勉手当を削除した上で休職時の給与支給率を80%から50%に、長期休職時の支給率を60%から30%に改ざんしていたとされます。これらは就業規則の不利益変更となることから原則として労働者との合意が必要な事項となります。米子労基署も労働契約法に抵触するとしており、理事会は変更部分は無効として女性職員に差額分を支払うとのことです。以上のように就業規則は従業員が10人以上の場合は必須となり、会社側が一方的に変更することはできません。近年の新型コロナウイルス等の影響でテレワーク導入など就業規則の見直しが必要な場合も多いと言えます。就業規則に記載しなければならない事項や変更の手続きなどをあらかじめ正確に把握しておくことが重要と言えるでしょう。
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