労基署が名古屋市大に是正勧告、労基法の残業規制について
2021/09/29 労務法務, コンプライアンス, 労働法全般
はじめに
名古屋市立大学が職員にサービス残業をさせていたなどとして、労働基準監督署から是正監督を受けていたことがわかりました。労基署は10月18日までに是正を求めているとのことです。今回は労基法の残業規制について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、労基署は8月10日、名古屋市立大学に立ち入り調査に入り、同大学本部の職員100人について調査を行ったところ、勤怠管理システムの記録と鍵の返却簿などからサービス残業を疑わせる時間のズレがみられたとされます。また職員が年次有給休暇を法定数取得していなかったり、労働時間をタイムカードなどの客観的な方法で把握していなかったとのことです。同大では西部、東部医療センターの2021年度からの大学病院化に伴う事務負担の増加が背景にあるとされております。労基署は勤務実態の確認と未払い賃金の支払を命じる是正勧告を8月26日付で出しております。
労働時間に関する規制
労働基準法によりますと、使用者は原則として労働者を、1日8時間、1週間に40時間を超えて労働させることができません(32条)。労働時間が6時間を超える場合には45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与える必要があります(34条)。また毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日も与える必要があります(35条)。この法定労働時間を超えて時間外労働を労働させるには、労働者の過半数で組織する労働組合か労働者の過半数を代表する者との労使協定を結び、労基署に届け出る必要があります(36条、36協定)。
時間外労働の上限規制
働き方改革関連法により大企業は2019年4月から、中小企業2020年4月から時間外労働に上限が設けられました。これによりますと、時間外労働は原則として月45時間、年360時間が法定上限となります(36条4項)。例外として、突発的な仕様変更や機械トラブル、大規模クレームへの対応など臨時的な特別事情がある場合に労使で合意することによって、年720時間以内、複数月平均80時間以内、月100時間未満の範囲で時間外労働が可能です(同5項)。この法定上限に違反した場合には、罰則として6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が規定されております(119条1号)。
時間外労働等の割増賃金
1日8時間の法定労働時間を超えた場合、月60時間までは25%以上、月60時間を超える部分については50%以上の割増賃金を支払う必要があります(37条1項)。22時から翌5時までの時間に労働をさせる場合は深夜労働として20%以上(同4項)、休日の場合は35%以上の割増賃金が必要です(同1項)。なお時間外動労と深夜労働が重複する場合は、月60時間までの部分では50%以上、月60時間を超える部分では75%条の割増賃金となります。休日と深夜労働が重複する場合は60%以上となります。
コメント
本件で名古屋市大は職員の労働時間をタイムカードなどの客観的方法で把握しておらず、時間外労働分の賃金や割増賃金の支払いが行なわれていなかったとされます。またそれ以外でも健康診断結果の記載不備など労働安全衛生法違反も指摘されていたとのことです。同大は2022年度からはタイムレコーダー等を導入して勤怠管理を改善するとしております。以上のように労基法では従業員の労働時間とその賃金についてはかなり厳格な規定を置いております。また昨年からは法定上限を超えた場合は罰則が適用されることとなっております。近年は減少したものの、定時にタイムカードを押させて、引き続き労働させるといった事業場も依然存在が確認されております。今一度自社での勤怠管理の状況を見直しておくことが重要と言えるでしょう。
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