葬儀仲介で公取委がユニクエストを審査、排他条件付取引について
2021/12/03 契約法務, コンプライアンス, 独占禁止法
はじめに
公正取引委員会は2日、インターネット上で葬儀社を仲介する「ユニクエスト」(大阪市)を独禁法違反の疑いで審査していたことを発表しました。葬儀社との間で競合他社との取引を禁止する契約を結んでいたとのことです。今回は排他条件付取引について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、葬儀社仲介サイト「小さなお葬式」を運営するユニクエストは2018年から、競合他社と取引していない葬儀社を特約加盟店として手数料を多く支払う制度を採用していたとされます。同社ではインターネット上で他の仲介サイトに掲載の有無を確認し、掲載されていないことが確認できた葬儀社を特約加盟店とし、その後掲載が確認された葬儀社に対して他の仲介サイトとの取引を継続して手数料の低い一般加盟店に戻るか、取引を辞めて特約加盟店に留まるかの選択を強いていたとのことです。同社仲介サイトでの特約加盟店の数は全体の2割強であったとされます。
排他条件付取引
排他条件付取引とは、「不当に、相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引し、競争者の取引の機会を減少させるおそれがあること」を言い、不公正な取引方法の一つとして禁止されております(独禁法19条、一般指定11項)。メーカーが部品メーカーに他の競合メーカーに供給しないことを条件に取引したり、ライセンサーがライセンシーに競合他社の製品を作らないことを条件にライセンス使用許諾をするといった場合が挙げられます。また相手方が仕入れる量の全てを自社から購入するようにさせる全量購入契約(勧告審決昭和56年7月7日)や特約店契約も排他条件付取引に該当すると判断されております(東洋精米機事件、東京高裁昭和59年2月17日)。
公正競争阻害性
公取委のガイドラインによりますと、排他条件付取引の「不当」性、すなわち公正競争阻害性は「競争者の取引の機会が減少し、他に代わり得る取引先を容易に見いだすことができなくなるおそれがある場合」とされております。これを超えて他の取引先を見いだすことができない競争者の事業活動を困難にさせる場合には排除型私的独占に該当し得るとされております。これは事業者の市場におけるシェアなどから判断され、一般的にシェア20%以上の事業者が行う場合は可能性が高くなる傾向にあると考えられます。逆にシェア10%以下、市場での順位が4位以下であればセーフハーバーと言われております。なお50%を超える場合は私的独占の範囲に入ってくる可能性が出てくるとされます。
拘束条件付取引
排他条件付取引以外に、不当に相手方を拘束する条件をつけて取引する場合は拘束条件付取引に該当する場合があります(一般指定12項)。メーカーが卸売業者に対し、安売りをする小売業者に販売しないことを条件として取引する場合が典型例と言えます。それ以外にも特約店契約で価格や販売先、販売方法などを制限する閉鎖的流通システムを採用する場合や一定の販売方法を義務付け、それを守る業者にのみ販売するといった場合も該当するとされております。ただしガイドラインでは、商品の品質の維持や適切な使用方法の確保など消費者の利益の観点から基準を策定し、それに適合する業者とだけ取引をする場合には該当しないとされております。
コメント
本件でユニクエストは、他社の仲介サイトと取引している葬儀社とそうでない葬儀社を分け、前者を一般加盟店、後者を特約加盟店として後者には手数料を多く支払っていたとされます。そして特約加盟店が他社サイトと取引している場合には取引を辞めるか一般加盟店となるかの選択を強いていたとされます。公取委は葬儀社と他の仲介サイトとの取引機会を減少させるおそれがあるとして排他条件付取引または拘束条件付取引の疑いで調査しておりますた。その後同社は特約加盟店制度を廃止し葬儀社に周知したとして審査を終了したとのことです。以上のように競合他社と取引せず自社とだけ専属契約を結ぶ取引先を優遇する制度は独禁法に違反する可能性があると言えます。それ以外にも様々な条件を付け、それに従う業者とだけ取引をする場合も同様です。今一度自社の取引状況や市場でのシェア、相手方や消費者への影響などを見直しておくことが重要と言えるでしょう。
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