公取委が「取引公正化推進アクションプラン」を策定、コスト転嫁推進へ
2022/04/08 コンプライアンス, 下請法, 独占禁止法
はじめに
公正取引委員会は3月30日、「令和4年中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」を策定し中小企業の取引公正化に向けた計画を公表しました。独禁法等の執行強化で対応するとのことです。今回は公取委のアクションプランを概観していきます。
策定の経緯
公取委は、昨今の原材料費や労務費、エネルギーコストなどの上昇を踏まえ、それらが適切に転嫁されず、中小事業者等に不当なしわ寄せが生じるといった事態を想定し、取引の公正化を推進するため「中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」を策定しました。転嫁拒否などが行われるおそれがある業種などを選定した上で調査を強化し、独禁法や下請法の適用を強化していく方針とされます。また厚労省などの関係省庁と緊密に連携を図り、中小事業者等から寄せられる情報なども活用して取引適正化推進体制を強化していくとのことです。公取委では転嫁拒否などの違反が疑われる場合に、中小事業者向けに情報提供フォームも設置しております。
独禁法の執行強化
公取委のアクションプランでは大きく分けて独禁法と下請法の執行強化に分けられます。独禁法では優越的地位の濫用と荷主と物流事業者との取引調査に主眼が置かれております。労務費やエネルギーコスト上昇分の転嫁拒否が疑われる対象業種を選定し、緊急調査したうえ、調査結果を公表して転嫁拒否が疑われる事案については立ち入り調査を行うとされます。大企業とスタートアップ企業との取引についても同様です。そして公取委は荷主による物流事業者に対する優越的地位の濫用を効果的に規制する観点から、特殊指定として「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」を指定し荷主30000名と物流事業者40000名を対象に調査を進めてきたとされます。また「優越的地位濫用未然防止対策調査室」を設置し、調査を強化していくとのことです。
下請法の執行強化
原材料費やエネルギーコストの上昇分を取引価格に反映しない取引が下請法の「買いたたき」に該当するおそれがあることから、下請法に関する運用基準(平成15年公取委事務総長通達18号)を改正し、下請法Q&Aにも反映しております。また昨年11月以降、下請事業者30万名を対象とした定期調査で特に買いたたきとして指導した実績が多い業種を中心に調査の拡大とコスト上昇の影響についても情報収集を強化しているとされます。さらに下請法違反行為を行っているおそれが強い事業者を抽出して優先的に調査するため、過去の指導や勧告の情報、関係省庁の提供する情報、申告情報などを一元的に管理できる情報システムを新たに構築するとしております。また不当なしわ寄せに関する下請相談窓口(電話番号0120-060-110)も設置されております。
その他の取り組み
上記以外にも下請事業者が匿名で買いたたきなどの違反行為を行っている親事業者に関する情報を提供できる「違反行為情報提供フォーム」を通じて広範囲に情報を受け付け、今年2月までにすでに77件の情報が寄せられたとされます。今後も情報提供フォームや関係省庁からの情報を受け、6月までに違反事例や実績、業種別状況等を中小企業庁ととも報告書を取りまとめ、特に違反が多くみられる業種については事業者団体を通じて改善を行うよう要請していく予定とのことです。さらに毎年3業種ずつ対象を定めて立ち入り調査を行っていくとしております。
コメント
近年長引くコロナ禍や不安定な世界情勢によって各業界で原材料費や運送コスト、人件費などが上昇しており、自社製品の値上げを余儀なくされている例は少なくありません。しかし日本国内の景気回復の兆しは依然として見えず、一般消費者は値上げに敏感で売上の低下に繋がります。そこでコスト増加分を下請事業者に負担させるといった事例の増加が懸念されております。今回の公取委の取り組みもそういった観点から中小事業者を保護しようとする趣旨です。上記のように公取委では特にコスト転嫁拒否が起きやすそうな業種を特定して重点的に調査、指導を行っていく方針としております。自社の取引先に対して値段の据え置きを強いていないか、また取引先に買い叩かれていないかを今一度調査し、対処していくことが重要と言えるでしょう。
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