法務省が海外IT7社について過料求める、外国会社登記について
2022/07/06 海外進出, 会社法
はじめに
法務省は1日、日本で事業を行う海外IT企業のうち、登記の申請要請に応じなかった7社について会社法違反により過料を科すべきとの通知を東京地裁に行った旨発表しました。法務省が海外企業に対しこのような通知を行ったのは初とのことです。今回は会社法が規定する外国会社登記について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、法務省と総務省は3月、総務省に電気通信事業者として届出を出している企業のうち、未登記であったグーグルやツイッター、メタなど48の海外IT企業に対し、登記を行うよう要請していたとされます。それらの企業のうち8社が要請に応じて登記が完了し、31社が登記に前向きな意向を示しているものの、7社が登記しない旨回答しているとのことです。ネット上での誹謗中傷がなされた際の発信者情報開示手続きで、通信事業者が未登記の海外企業である場合、会社情報の取り寄せや訴状の送達などに時間や手間が生じ、被害回復の遅れが懸念されております。法務省は登記申請を拒否している7社に対し会社法違反による過料を科すよう東京地裁に求めました。
外国会社の登記義務
外国会社とは、外国の法令に基づいて設立された会社またはそれに類似するものを言うとされております。米MSやグーグル、アップルなど日本には多数の外国会社が活動しております。会社法818条1項によりますと、外国会社は日本で登記をしなければ、日本で継続して取引を行うことができないとされております。これに違反した外国会社と取引をした者は、その取引によって生じた債務を、当該外国会社と連帯して弁済する責任を負うこととなります(同2項)。これは外国会社が未登記である場合、支払いを求め提訴するなど追求ができない可能性があることから、当該外国会社と取引している国内会社にも連帯責任を追わせたものです。またこの登記義務に違反した場合、外国会社の日本における代表者に対して100万円以下の過料が科される可能性があります(976条1号)。
日本国内で必要な手続き
従来外国会社が日本で継続して取引を行うためには、日本に営業所を設けてその登記をする必要がありましたが平成14改正によって廃止されました。現在では日本における代表者を定める必要があります(817条1項)。日本に営業所を持たない場合は、その代表者の住所地を営業所所在地とみなされます(商業登記法127条)。そのため日本における代表者は最低1人は日本に住所を有することが必要です。なお日本人である必要はありません。この日本における代表者は日本国内に置いた営業所のすべてについて代表権を有するとされ、営業所が複数あってもそれぞれの営業所ごとに選任する必要は無いとされております。また日本における代表者を複数置いた場合はその全員の氏名と住所を登記する必要があるとされております。
外国会社の登記事項
外国会社にもとめられる登記事項は次の通りです。(1)外国会社の設立の準拠法、(2)日本における代表者の氏名・住所、(3)日本における会社で最も類似する会社が株式会社である場合は公告方法、(4)決算公告で電磁的公告を採用する場合はそのアドレス、(5)公告方法が電子公告である場合はそのアドレス、(6)広告方法の定めが無い場合は官報を公告方法とする旨となっております(933条2項)。準拠法とは例えばアメリカ合衆国カリフォルニア州法といったもので、それによってその会社の性質などが明らかとなります。登記すべき地は営業所を置いた場合はその所在地、置いていない場合は日本における代表者の住所地となっており期間は3週間以内です(同1項)。登録免許税は営業所を置く場合は1ヶ所につき9万円、置かない場合は6万円となっております。
コメント
現在日本では非常に多くの外国企業が国内で事業を行っております。大規模な会社では日本法人を設立する場合も多いですが、小規模な営業所を設置する場合や、それも無い場合など営業の形態は多岐にわたっております。日本で継続的に事業を行う場合、多くの取引先と債権債務が生じますが、日本に登記が無い場合は法的措置を取ることも困難となります。またそれが通信事業者である場合は発信者情報開示の手続きにも支障をきたします。そこで法務省では未登記の海外企業に対して登記を求めております。上記のように会社法でも継続して事業を行う場合は登記を義務付けており、未登記である場合は取引先である国内会社も連帯責任を負わされる場合があります。日本で事業を行う外国会社、またはそれらと取引をする場合は登記が完了しているかを確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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