スクウェア・エニックス元社員、ファイナルファンタジーを巡るインサイダー取引で逮捕
2022/12/09 コンプライアンス, 金融商品取引法
はじめに
人気RPGゲーム「ファイナルファンタジー」シリーズ(スクウェア・エニックスとエイチームが共同開発)のゲーム開発を巡ってインサイダー取引を行ったとして、東京地検特捜部は7日、金融商品取引法違反の疑いでいずれもスクウェア・エニックス元社員の会社役員の男と事務作業員の男を再逮捕しました。2人は先月も人気ゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズの開発情報をめぐり、インサイダー取引の疑いで逮捕され、起訴されています。
事件の経緯
2021年2月、株式会社スクウェア・エニックスと株式会社エイチームはスマートフォン向けゲーム「ファイナルファンタジーⅦ ザ ファーストソルジャー」を共同開発すると公表していました。
報道などによりますと、今回逮捕された2人は新作ゲーム開発について両社が業務提携するという未公開情報を得て、2021年1月下旬~2月下旬ごろ、エイチームの株式を購入。事務作業員の男は計約9万1千株を約1億500万円、会社役員の男は計約12万株を約1億4470万円で買い付けた疑いがあり、2人は合わせて数億円の利益を得たということです。
事務作業員の男はこの情報を知人にも伝え、その知人も計約1万株、約1180万円を購入したとされています。
特捜部はスマートフォン向けゲーム「ドラゴンクエストタクト」をめぐっても2人がインサイダー取引を行っていたとして先月逮捕しており、再逮捕された今月7日に起訴されています。
インサイダー取引
インサイダー取引とは、上場会社の関係者等が、その職務や地位により知り得た、投資者の投資判断に重大な影響を与える未公表の会社情報を利用して、自社株等を売買することで、自己の利益を図ろうとするものです。
インサイダー取引規制の対象は主に次のものが挙げられます。
・上場会社についての株式・ 新株予約権証券・社債
・J-REIT(不動産での賃料収入などで得た利益を分配する投資信託)
・上場インフラファンド (インフラファンド市場に上場しているファンド)
一方で、ETF(東京証券取引所などの金融商品取引所に上場している投資信託)や一般に販売されている大部分の投資信託はインサイダー取引規制の対象ではありません。
インサイダー取引によって市場の公平・公正が侵害されると、一般の投資家の投資行動が抑制されるなど、悪影響を及ぼします。
そこでインサイダー取引は金融商品取引法で帰省され、違反をすれば証券取引等監視委員会による刑事告発や課徴金納付命令の勧告が行われます。
刑事告発され有罪となった場合、「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」が科されます。また、会社の代表者・代理人・使用人その他の従業者が、会社の業務・財産に関してインサイダー取引を行った場合、法人罰として会社に「5億円以下の罰金」が科されます。
インサイダー取引の規制対象として当てはまるのは、以下のとおりです。
・会社関係者
・公開買付者等関係者
・第一次情報受領者
上場会社等の役員、代理人、使用人、その他の従業者、一定以上の株式を保有する株主など。また、取引先や、役職を退いてから1年以内の者も該当するため、元会社関係者も含まれます。
インサイダー取引を防止するには
上場会社において、投資判断に重大な影響を与える会社情報の適時開示に積極的に対応し、適時適切な開示を行うことが重要とされています。
例えば未公表の会社情報が他に漏れたり不正に利用されたりすることのないよう社内体制を整備し、適切な情報の管理を徹底すること。また、インサイダー取引規制の意義や内容について従業員全体に周知徹底を図ることが大切となります。
具体的に取れる対策としては以下が挙げられます。
(1)社員研修の実施
コンプライアンスや金融取引法などの基礎知識を身に付け、規制の意義などを共有することができます。
(2)株式取引の承認制を導入
株式取引を行う際に、会社の事前承認を必要とすることを就業規則などに定 める狙いがあります
(3)社内監査部を設置
情報管理体制の運用状況の内部監査を実施する旨を社内規則に明記することで、より実効性を確保することが可能です。
(4)誓約書の提出
インサイダー取引をしないことを文書で求めることで抑制につながるとされています。
コメント
言うまでもありませんが、従業員によるインサイダー取引は、会社の信頼を大きく傷つけるものとなります。かつては、株式の売買のみがインサイダー取引として規制されていましたが、現在では「情報を流す行為」、「取引を勧める行為」も規制されています。その意味で、上場企業に勤める従業員は、自社の情報管理に関し厳格な責任を負っているといえます。
最近は、従業員がSNSで情報発信を行う機会も増えています。SNS上で、自社の未公開の新製品情報を先出ししたり、自社の不祥事を匂わせたりなどの不用意な情報発信が、インサイダー取引規制に引っ掛かる可能性もあります。
この事件を機会に、今一度、社内でインサイダー取引の要件とリスクについて周知しておくとよいかもしれません。
【関連リンク】
インサイダー取引とは(金融庁)
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