ダイハツ工業が34万台の自動車のリコールを発表
2023/01/26 コンプライアンス, 製造物責任法, 自動車
はじめに
自動車メーカーのダイハツ工業株式会社は、1月19日、約34万件にのぼるリコールの届出を国土交通省に行いました。リコールの対象となったのは、2020年5月から2022年8月までに製造された8車種。プログラムの不具合で電動のパーキングブレーキが解除できなくなる恐れがあるということです。リコールが発覚したのは利用者からのクレームなどで、401件の不具合の報告があったということです。
リコールとは
リコールとは、製造過程でのミス等による製品の欠陥の判明や製品事故の発生の際、製品の回収または販売店舗での無償修理や部品交換、返金などの対応を行うことを指します。
今回のダイハツのリコールでは、電動パーキングブレーキを制御するコンピュータにおいて、ブレーキ解除時のプログラムが不適切なことでブレーキケーブルの戻し量が不足する場合があるということです。このままの状態で使用を繰り返していると、パーキングブレーキ作動時に異常を検出して警告灯が点灯し、最悪の場合、パーキングブレーキが解除できなくなるおそれがあるとホームページ内で触れています。
こうしたことから、全車両、電動パーキングブレーキアクチュエータ内の制御コンピュータのプログラムを修正すると発表。使用者へはダイレクトメールなどを通じてお知らせするということです。
ダイハツ タフト、タント、トール、ロッキーのリコールについて
経済産業省が公表をしているデータによりますと、2021年の重大製品事故受付件数は合わせて1042件。死亡事故は34件にのぼります。また、2021年に開始された自主リコールは93件でした。リコール対象製品による重大製品事故は重大製品事故全体の2割弱を占めています。
製品の欠陥が見つかったら
製品の欠陥が判明した場合や事故が発生した場合、企業側はリコールを行うことになります。基本的な対応としては、消費者への無償点検や部品交換などの呼びかけ実施が考えられます。一方、すでに消費者が長年その製品を使用している場合には、経年劣化による製品事故のおそれもあるため、状況によっては、自社サイトのみならず、テレビCMなど使用停止を広く呼びかける必要があります。
また、万が一、製品事故で消費者が亡くなってしまったり、重症を負うなどした場合には、「業務上過失致死傷罪」に問われることがあります。
○トレーラーのタイヤが脱落し、母子3人死亡事故
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企業の対応は
では、リコールが起きた場合、企業側はどのような対応を行うことになるのでしょうか。主に以下が挙げられます。
・所有者へのリコール通知
・消費者からの問い合わせ対応
・事故の原因究明
・社内、行政、取引先などとの対応協議
・製造中だった製品の設計変更や製造、納入などの対応
・企業から詳しい説明、場合によっては記者会見や取材対応
・製品回収(新しい製品・部品を用意したり、特設の相談窓口を設けるケースも)
・再発防止策の検討
・製造工程や検査手法の見直し
また、自動車リコールの場合には、改善措置の実施状況の国土交通省への報告が義務付けられています。さらに、重大製品事故が発生している場合には、上記に加え、消費者庁への報告(重大製品事故の発生を覚知した日から10日以内)も必要になります。
企業として対策は?
リコール防止の対策としては、製品の安全性の向上が挙げられます。ではどう言った対策が必要となるのでしょうか。それぞれの段階で見ていきます。
・設計段階:安全性に配慮した設計を行うこと。
製造物が設計、仕様どおりに製造されても、その設計・仕様自体が安全性を欠くものであれば問題となります。その設計に従って製造された製造物すべてに欠陥があることになり、損失も甚大となります。
・製造段階:製造物を設計・仕様どおりに製造し、欠陥を発生させないこと。
何らかの原因で異物混入が発生したり、不良品が発生することもありますが、そうした故意でないミスも「製造上の欠陥」として製造物責任の対象となり得ます。
・販売段階:製品を適切に使用する方法を説明し、事故防止のために危険な使用を行わないよう警告すること。
購入者や使用する人が、誤った使い方をしたり、目的外のことに使用しないよう説明する必要があります。この説明に関しては取扱説明書に詳細を記載することに加えて、PLラベルや警告ラベルなどと呼ばれるものを製造物に貼付するなどして活用する企業もあります。
コメント
リコールが起こった場合の対応についてまとめてみました。設計・製造・販売の各段階において、あらかじめ対策を講じることで、事故発生を予防し、なおかつ、製造物責任法関連の訴訟リスクを抑制することにも繋がります。製造物責任の要件である“欠陥”は、「製造上の欠陥」「設計上の欠陥」「指示・警告上の欠陥」の3種類で判断されていくためです。
なお、製造・販売からある程度時間が経過した後でも、後日問題が発覚した場合に責任を追及されることがあります。そのため、製造終了後も、一定期間は部品などを保管しておき、検証ができるよう備えておくことが重要です。
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