消費者庁が改善指導実施状況を公表、虚偽・誇大表示とネット監視について
2023/04/26 広告法務, 景品表示法
はじめに
消費者庁は25日、令和5年1月~3月のインターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示の監視実施状況を公表しました。167の事業者に改善指導を行ったとのことです。今回は消費者庁によるインターネット監視と誇大表示について見ていきます。
事案の概要
消費者庁はかねてよりインターネット上の健康食品等における虚偽・誇大表示の監視を行っており、今年1月~3月の実施状況を発表しました。ネット上で健康食品等を販売している167の事業者による170の商品について健康増進法に違反する文言があったとして、該当事業者に表示の改善指導を行うとともにショッピングモール運営事業者に対しても表示の適正化についての協力を依頼したとされます。監視方法はロボット型全文検索システムを用いて検索キーワードによる無作為検索の上、検索された商品のサイトを目視で確認するというもので、検索キーワードは「生活習慣病」「動脈硬化」「免疫力」「肝機能」などであったとのことです。
ロボット型検索システムとは
ロボット型検索システムとは、インターネット上で提供される検索エンジンの一つで、情報収集プログラムが世界中のWEBサーバーを巡回して自動的にWEBページに関する情報を収集し、データベース化するというものです。ユーザーが検索キーワードを入力するより以前にこれらの作業は終了しており、検索ワードを入力すると、データベースから該当するWEBサイトが表示されます。GoogleやYahooもこのタイプの検索エンジンと言えます。このロボット型検索エンジンはプログラムが世界中のWEBページを巡回し、膨大な情報を網羅することができる反面、検索キーワードによっては検索エンジンがユーザーの意図を読み取れず、ユーザーが求めている情報が適切に表示されないという欠点も指摘されております。
健康増進法による規制
健康増進法65条1項によりますと、「何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない」とされております。健康食品などで実際と著しく異なる効果を表示してはならないということです。内閣総理大臣または都道府県知事は違反した表示があり、国民の健康の保持増進および国民に対する正確な情報の伝達に重大な影響を与えるおそれがあると認めるときは表示に関し、必要な措置をとるべき旨を勧告することができ(66条1項)、勧告を受けた者が正当な理由なくその勧告に係る措置をとらなかったときは措置をとるべきことを命じることができるとされます(同2項)。この命令に違反した場合は6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金となっております(71条)。
その他の誇大広告規制
健康増進法上の誇大広告規制以外でまず挙げられるのは景表法の優良誤認表示です。この規定は商品・役務について実際のものや競合他社のものよりも著しく優良であると示して顧客を誘引し消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害する表示を禁止しております(5条1号)。また消費者庁による指定で、無果汁清涼飲料水や商品の原産国についての不当表示、消費者信用の利息や手数料についての不当表示、不動産のおとり表示、有料老人ホームに関する不法表示なども規定されております。また医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器等については名称や製造方法、効能、効果、性能についての虚偽または誇大広告が禁止されております(薬機法66条1項)。違反した場合は2年以下の懲役または200万円以下の罰金となっております(85条)。
コメント
消費者庁の発表によりますと、実際に見つかった誇大表示としては、生鮮食品や加工食品について生活習慣病や動脈硬化、高血圧予防などの効果を標榜するもの、またカプセルや錠剤などの健康食品では生活習慣病予防、腸管免疫力アップ、脂肪肝、骨粗しょう症予防などが標榜されていたとされます。そして令和3年度は735の事業者、760の商品で、令和4年度は637の事業者で640の商品で改善指導を行ったとのことです。件数は毎年400~600程度の事業者で推移しており今年度も最終的には同様の件数が予想できます。広告にはある程度の誇張が含まれることも多いと言えますが、商慣習や社会通念に逸脱した誇大表示は違法となります。今一度自社製品の広告表示を見直しておくことが重要と言えるでしょう。
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