[独禁法]スーパー「オーケー」、納入業者への競合店対抗値下げ補填要請を取りやめ
2023/08/14 行政対応, 独禁法対応, 独占禁止法, 小売
はじめに
関東を中心にスーパーマーケット「オーケー」を展開するオーケー株式会社が、納入業者に対する競合店対抗値下げ補填を要請し、独占禁止法違反(優越的地位の濫用)の疑いが持たれていた問題で、公正取引委員会は8月10日、オーケーから自発的に補填を取りやめた旨の報告を受け、調査を終了することを発表しました。
値下げ発生額を取引業者に補填させる
『他店より高い商品あったら、お知らせください。値下げします。』
物価上昇で、値上げのニュースに憂うつさが募る中、店内にこうしたPOPが張られていると少し気持ちが上向くのではないでしょうか。ナショナルブランド商品に関し、地域一番の安値を目指しているオーケーでは、一部商品において競合店の売価を調査し、オーケーの価格が競合店の価格(特売品・目玉品を含む)よりも高かった場合、対抗して同額まで値引きするサービスを行っています。オーケーは、この値引き(競合店対抗値下げ)分に関し、約30社の取引業者に補塡させていたといいます。
近年、公正取引委員会は、大規模小売業者と納入業者との取引適正化のため、取引実態の情報収集を積極的に行っていましたが、その過程でオーケーにおける競合店対抗値下げ補填要請についての情報を得たということです。
仮に、オーケーが、納入業者に対し、取引上の地位を利用して競合店対抗値下げ補填の要請を行うことで、納入業者が今後の取引に与える影響を懸念して著しく低い価格で納入しなければならないような状況になっていた場合、独占禁止法第2条9項5号の優越的地位の濫用の問題が生じるおそれがあります。
そこで、公正取引委員会は、値引きなどの実態、運用などについて確認を行うため調査を行い、オーケーに対しても資料を求めるなどの問い合わせを行っていました。これに対し、オーケー側から自発的に値下げ補填自体を取りやめたという報告があったことから、公正取引委員会は、優越的地位の濫用の懸念は無くなったと判断し、8月10日、これ以上の調査その他の対応を行わない旨を発表しました。
オーケーは7月下旬に納入業者に対し、今後は値下げ補填を行わない旨の通知文を送っているとのことです。
公正取引委員会は、「オーケーが、競合店対抗値下げ補填を取りやめたとしても、今後、納入業者との納入価格の引下げに係る交渉において、取引の対価の一方的決定等が行われれば、優越的地位の濫用の問題となる」と考えており、オーケーに対する、優越的地位の濫用に関する考え方の説明と不当な価格の引き下げ要求の監視を続けていくとしています。
食品産業における取引慣行の実態調査(不当な値引き)
食品産業内での連携や近代化の推進を行う「一般財団法人 食品産業センター」では、毎年、優越的地位の濫用行為のおそれが高い取引慣行に関し、実態調査を行っています。
同法人が発表した『令和4年度 食品産業における取引慣行の実態調査』によると、小売業者から最近1年間で不当な値引きがあったと回答した事業所は全体の6.1%にとどまり、令和元年辺りから下げ止まり傾向がみられるといいます。それだけ、公正取引委員会などの規制が功を奏していると見ることができます。
また、不当な値引き要求への対応に関しては、「全く応じない」が26.6%、「ほとんど応じていない」が29.1%にのぼり、「ケースバイケースで応じている」が 32.9%、「全て応じざるを得ない」が6.3%、「ほとんど応じている」が 5.1%となっています。半数超の事業者が不当な値引き要求を拒絶できている一方、10%近くは相当頻度で値引きに応じていることになります。
調査では、不当な値引きに関する具体的事例についてもヒアリングしていますが、以下のような回答があったといいます。
・販売不振を理由に強制的に値引き販売される
・何の連絡もなく半額導入を称して値引をしてきた
・特売の強要(応じなければ取引カット)
・事前連絡なく「過剰仕入分を半値販売した」として事後補填を求められる
・商品入替時、前の商品を半額処分し、その差額処分代の負担を求められた
・他社の類似商品の方が安いため、そこまで下げて欲しいと要求された
・この納価では前年実績に達しないとの理由で納価を下げて欲しいと要求された
・通販会社より、値下げ要求を断るとそのモールでの広告を一切できなくなるという強制的な通知があった
コメント
原材料価格の高騰等により販売価格の値上げを行わざるをえない小売店が増えているといいます。そんな中、今回のオーケーの事例は、公正取引委員会の牽制機能が効果的に働き、早期解決に繋がった好例といえそうです。
先にご紹介した『食品産業における取引慣行の実態調査』では、最近3年間での取引慣行に関する小売側の改善状況に関し、「改善している」と好意的な回答を行った事業者が88.5%にのぼりました。これは過去10年間の調査で最も高い数字だといいます。
逆にいうと、不当な値引き行為を行っている小売店は悪目立ちし、公正取引委員会の調査対象となる可能性が高まっているとも考えられます。今一度、現場に対し、不当な値引き行為のリスクについて再確認しておく必要がありそうです。
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