日大アメフト部大麻事件にみる薬物蔓延、社員が薬物で逮捕されたときの対応
2023/08/18 労務法務, 危機管理, 労働法全般, 刑事法
はじめに
日本大学アメリカンフットボール部員が覚醒剤の錠剤と大麻を所持したとして覚醒剤取締法違反容疑などで逮捕された事件は、連日の報道などでご存知の方も多いのではないでしょうか。
ほぼ同じ時期に、他の大学でもラグビー部員3人が、大麻を有償で譲り渡した疑いで逮捕されるなど、大麻に関する報道が相次ぎました。
今回はいずれも学生による事件でしたが、若い世代を中心に大麻が蔓延している昨今、自社の従業員が大麻所持等で逮捕される可能性もあります。本記事では、日大アメフト部大麻事件を紐解きつつ、従業員が大麻事犯等で逮捕された場合に企業として求められる対応について概説します。
日大アメフト部大麻事件
日本大学によりますと、逮捕されたのはアメリカンフットボール部に所属する男子部員です。都内にある部の学生寮で、覚醒剤の成分を含む錠剤約0.2グラムと乾燥大麻約0.02グラムを所持したとして、8月5日に大麻取締法違反及び覚醒剤取締法違反の疑いで逮捕されました。
男子部員は、逮捕前に警察による任意聴取に応じており、その際、「大麻は購入し、覚せい剤を含む錠剤についてはおまけでもらった」と話していたということです。この一連の事件を受け、日本大学は記者会見を開き、発覚までの経緯について次のように説明しました。
■6月30日:
アメフト部の学生寮で大麻使用の可能性があると警察から連絡。
その日中に、副学長と競技スポーツ部長がアメフト部の寮を視察も、違法な薬物と思われるものの発見には至らなかった。
■7月6日:
再度、警察から大麻疑惑の指摘
部員らの持ち物検査、ヒアリングを開始
持ち物検査で細かい茶葉のようなものがわずかに付着した小さなビニール袋と、内容が不明の容器を発見。
そして発見の12日後の18日に警察に相談。
20日に違法な薬物かどうかを鑑定していたということです。
■8月3日:
発見された不審物が違法な薬物であると警察から日大へ連絡
学生寮が家宅捜索
■8月5日
部員が逮捕
記者会見では、大学側より、
・保護者からの情報提供が事件よりも前に何度もされていたこと
・去年11月下旬にアメリカンフットボール部の学生1人が大麻と思われるものを吸ったという自己申告があったこと
なども報告もされました。
大学側はアメリカンフットボー部の無期限活動停止処分を決定。それを受け、関東学生アメリカンフットボール連盟は、8月10日、秋から始まるリーグ戦に関し、日本大学の出場資格の当面の停止を発表しました。
その後、大学側は無期限活動停止処分を解除し、アメリカンフットボール部は練習を再開しているといいます。一方で、関東学生アメリカンフットボール連盟は、日本大学のリーグ戦出場資格の停止解除について、「各試合日の1か月前を期限として、大学側からの説明がしっかり行われ問題がクリアしたと認められた場合に、リーグ戦出場を許可する」としています。
なお、日本大学がリーグ戦に途中から出場することになった場合、同大の試合は「参考試合」として、対戦相手を含め、勝敗はカウントしないということです。
社員が大麻事犯等で逮捕されたら?
20代の大麻事犯の検挙人員数は令和4年度が2853名と、過去最多を記録しており、平成28年度の988名の約3倍に増加しています。若者を中心に大麻等が蔓延している中、自社の従業員が大麻事犯等で逮捕される可能性も十分にあるといえます。
実際、2019年には証券会社最大手の野村証券株式会社の社員2名が、社員寮の自室で大麻を所持していたとして、大麻取締法違反(所持)容疑で逮捕、起訴されました。会社は2人を懲戒解雇しています。
では、社員が大麻事犯などで逮捕された場合、会社はどういった対応をするべきなのでしょうか。
1.本人との接見
まずは、本人と接見を図り、状況把握に努めます。①薬物は自分で吸う目的だったのか、②譲渡・販売や栽培などをしていないかなどが大きな質問事項となるでしょう。万が一、複数の社員が関与していた場合には会社が家宅捜索を受ける可能性もりますので、対応の準備が必要となります。
また、仮に、接見禁止が付いている場合には、弁護士を通じて、罪状認否、解雇の覚悟の有無、勾留期間を有給休暇で充てるか等を確認することが大切です。
2.就業規則の確認
社員の懲戒処分に関しては、それぞれの企業の就業規則にしたがって行われます。
就業規則の解雇事由を確認し、逮捕・起訴されたら解雇するのか、裁判で有罪判決を受けたらどうなるのか、不起訴になった場合の処分範囲など、逮捕が本業に及ぼす影響を見積もりながら、しっかりと確認しておく必要があります。
コメント
8月16日にドイツ政府が、大麻を個人が嗜好品として所持・栽培することを認める法案を閣議決定するなど、世界的に大麻を合法化する動きが見られます。また、アメリカでは、嗜好用大麻を合法とする州が4割近くにのぼります。
このように、大麻に対する諸外国とのスタンスのギャップから、外国で大麻を使用していた人が帰国後も国内で使用し逮捕されるケースが少なくないといいます。国内での使用もさることながら、海外へ出張に行った際など、大麻等とどのように付き合うべきか、基本的な考え方を会社として発信することが重要になります。
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