10月から中古車価格の総額表示が義務化、公正競争規約とは
2023/09/20 コンプライアンス, 行政対応, 消費者契約法, 自動車
はじめに
10月1日から中古車販売の価格表示について、最低限必要な全費用とその内訳表示が義務化されます。安い価格の表示で顧客を誘引しつつ、商談の際に表示価格を大きく上回る金額を請求するといったトラブルを防止する狙いがあるとされます。今回は公正競争規約について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、自動車などの公正な販売を推進する団体である「自動車公正取引協議会」(東京)が取り決めた「自動車公正競争規約」の改正案が消費者庁と公取委に提出され、今年3月に認定されたとされます。新ルールでは車両価格と諸費用を合算した支払総額を表示することが義務付けられるとのことです。これに違反した場合は自動車公正取引協議会により厳重警告、悪質な場合は違約金を課した上で事業者名が公表されることとなります。同会では消費者に諸費用込みの支払い総額で比較することを呼びかけております。
公正競争規約制度
景表法31条では、公取委と消費者庁長官の認定を受けることにより、事業者や事業者団体が表示または景品類に関する事項について自主的に業界ルールを定めることができるとしております。これを公正競争規約と呼びます。公正競争規約では、その業界の商品特性や取引の実態に即して、公告やカタログに必ず表示すべきことや、特定の表現を表示する場合の基準、景品類の提供制度などを定めて、一般消費者がより良い商品・サービスを安心して選ぶことができる環境作りを担っているとされております。本来景表法では不当表示として優良誤認表示や有利誤認表示が規定されておりますが、それぞれの業界特有の事情などを踏まえて業界団体が自主規制化し、商慣習として明文化することが狙いです。
公正競争規約の内容と認定要件
公正競争規約では、表示または景品類に関する事項について定めることができ、また規約を運用するために必要な組織や手続を盛り込むことも可能です。具体的には、表示に関する事項として原材料名、内容量、賞味期限、製造業者名、不動産広告の徒歩による所要時間、加工乳及び乳飲料には「牛乳」と表示しないなどです。そして公正競争規約として認定されるための要件として、(1)不当な顧客誘引を防止し一般消費者による自主的かつ合理的な選択および公正競争を確保するために適切であること、(2)一般消費者および関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと、(3)不当に差別的でないこと、(4)公正競争規約への参加または脱退について不当に制限しないこととされます。認定申請を受けた公取委および消費者庁長官は必要に応じてパブリックコメントを募集するなどして、これらの要件に適合していれば認定することとなります。
公正競争規約のメリット
公正競争規約は公取委や消費者庁長官が当該業界における公正な競争を確保するために適切なものであると認定したルールであることから、そのルールに参加し、そのルールを守ることによって消費者の信頼を高めることができるとされます。公正競争規約に参加してその内容を遵守している限り、景表法やその他の関係法令上問題とされることがないため安心して販売活動を行うことができるメリットがあると言われております。また公正競争規約は公取委と消費者庁長官が認定したものであることから、独禁法の手続規定も適用除外となります(景表法31条5項)。なお規約に参加していない事業者が不当表示等を行った場合は、普通に景表法等が適用されることとなります。
コメント
中古自動車販売を巡っては、かねてよりホームページなどで安価な価格を表示し、実際に訪れた消費者に対しては表示価格を大きく上回る金額を請求するといった悪質な販売手法が問題視されておりました。また昨今大手中古車販売のビッグモーターによる保険金不正請求事件に端を発する一連の中古自動車不正問題で同業界に対する消費者の信頼が失墜しております。今回の自動車公正競争規約改定では車両価格と諸費用を合算した総額表示が義務付けられます。定期点検整備や保証が付く場合もこれに含まれ、交渉の際に表示外の費用を付けることができなくなります。これにより消費者は安心して車両購入を検討することができるようになるとされます。以上のように各業界では業界団体による公正競争規約を規定することができます。違反には一定のペナルティも課すことが可能です。自社の属する業界ではどのようなルールがあるのかを今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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