フリー素材と誤認してイラスト無断使用、市が損害賠償 ー大分県中津市
2023/12/06 知財・ライセンス, 著作権法
はじめに
市立中学校のホームページなどに掲載したイラストが有料イラストの無断使用だったとして、大分県中津市はイラストレーターに約25万円の賠償金を支払いました。
フリー素材だと思っていた
報道などによりますと、大分県中津市は11月27日、市内の中学校で発行していた「ほけんだより」や学校HPに掲載していたイラスト1点について、著作権の侵害があったと発表しました。「ほけんだより」は2016年9月に発行されたもので、約3年間、学校のホームページで公開されていました。その後、当該ページは削除されていましたが、サーバー上にはデータが残ったままとなっていました。
今年7月、イラストレーターより連絡があり、中津市側は無断使用を認識。最終的に、2016年~2023年の7年間分の使用料相当額として25万3000円をイラストレーターに支払うことで示談が成立したということです。
教諭がイラスト素材を探していた際、インターネットで問題のイラストを発見。フリー素材をうたうサイトからイラストを転載していたため、無料で使用できると誤認したといいます。しかし、問題発覚後、中津市の教育委員会が利用規約を調べたところ、「使用料が発生する」といった記載があったということです。
イラストの無断使用による著作権侵害が相次ぐ
無料で使えるフリー素材と誤認していたケースは、中津市の学校以外でも確認されています。
千葉県・成田市の小学校では、昨年4月から約9カ月間にわたり、複数の学年だよりとHPで有料のイラストを無断で使用していたということです。
こちらは、今年1月にイラストを管理する会社から指摘を受けたことで無断使用が発覚しました。成田市は今年5月下旬、市がイラスト作者などに正規料金として総額54万5600円を支払うことで和解したといいます。
また、イラスト素材をめぐっては、適切に料金を支払っていたつもりでも、いつの間にか作者の著作権侵害を行っていたというケースもあります。
ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社が提供する、光インターネット回線「NURO光」の公式Xで今年8月末に投稿されたPR広告。同広告に使用されたイラストが自身の作品の無断使用であると作者が訴え出ました。
NURO光側は即座に対応。調査の結果、問題のイラストは広告代理店が海外の有料素材サイトから購入したものであるとわかりました。有料素材サイト上にあったそのイラストは、作者ではない人物が素材サイトに無断転載したものだったといいます。
NURO光は、広告の配信を停止し作者へ謝罪したということです。また、問題となったイラストは有料素材サイトからも削除されたといいます。
著作権フリーでも注意が必要
場合によっては、刑事罰が科されるおそれもあるイラスト素材の無断使用問題。特に、フリー素材を謳ったイラストを利用する際は要注意です。では、そもそもフリー素材とはどういったものなのでしょうか?
近年、「著作権フリー イラスト」などと検索するとたくさんの検索結果が出てきます。イラストの著作権が“フリー”となっている場合、著作権を持つ個人・団体に対し使用許諾申請をする必要もなく、使用料などの支払いも発生しません。具体的には、以下のようなものがフリー素材とされます。
(1)著作権者が著作権放棄しているイラスト
無料素材サイトなどに掲載されているもの
(2)著作権の保護期間が満了しているイラスト
著作権法上、著作権の保護期間は、原則、著作者が著作物を創作した時点から著作者の死後70年を経過するまでです。
また、映画や団体名義の著作物の保護期間は、公表後または創作から70年などとなっています。
著作権は永遠に保護されるの?(公益社団法人著作権情報センター)
(3)著作権対象外のイラスト
憲法、法令、裁判所の判決や決定、国や地方公共団体が作成するものなど
もっとも、著作権フリーだとしても、著作者人格権までが放棄されているわけではありません。作品の勝手な改変、著作者が氏名の表示を求めているにも関わらず氏名の表示行わないなどの行為は、著作者人格権を構成する、同一性保持権や氏名表示権の侵害にあたる可能性があるため、注意が必要です。
著作者にはどんな権利がある?(公益社団法人著作権情報センター)
コメント
自社HPやSNSに広告。企業による発信の機会が増えている中、イラスト素材を利用するケースが増えています。一方、イラストの購入・選定などは、現場主導で行われることも多く、なかなか一つ一つの事案に法務の目が行き届かないところがあります。現場に対する、イラスト素材の利用・購入ルールの策定と周知が重要になります。
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