夢グループの元部長らを背任容疑で逮捕
2024/05/30 コンプライアンス, 危機管理, 刑事法
はじめに
通信販売や、コンサートのイベント企画などを行う株式会社夢グループ。社長と専属歌手が出演する自社CMで有名です。その夢グループに約3700万円の損害を与えたとして、5月23日、同社の元企画宣伝部長とイベント企画会社の代表取締役が、背任容疑で逮捕されたことが分かりました。
知名度の高い会社での背任事件とあって、世間では驚きの声が上がっています。
広告費の一部を2人で山分けか
通信販売等を行う夢グループは、客に郵送する商品カタログに、各社のチラシを同封しています。チラシの同封を希望する企業は、夢グループが契約する広告代理店にそのための広告費を支払い、広告代理店は、受け取った広告費を夢グループに支払う流れとなっていたといます。
そんな中、夢グループの元企画宣伝部長と、イベント会社、ワイルドワン有限会社の代表取締役は、共謀の上、2019年12月から2021年12月にかけ、約30回にわたり、広告代理店から夢グループに支払われる広告費の一部をワイルドワンの口座に入金させる手口で、約3700万円の損害を夢グループに与えた疑いが持たれています。
元部長は広告代理店に対して、「便宜的に支払先を分けた」などと嘘の説明をし、広告費の一部を振り込ませていた。
また、不正を始めたのと同じ時期に広告単価も上げたことから、広告代理店から夢グループへの入金額に従前と大きな変化がなく、発覚が遅くなったとみられています。
逮捕容疑以外にも、2人には余罪があるとみられていて、2018年9月から2023年4月にかけて、同様の手口で夢グループから約1億30000万円を不正に得た疑いも持たれています。不正に得た金は、2人で山分けし、旅行や飲食などの遊興費のほか、高級車や不動産の購入、会社の運転資金などに充てられたとされています。
事件報道後、夢グループの社長が記者からの問いに答え、不正は2023年の春頃、社内調査で判明したと明かしました。きっかけは同社の従業員が立て続けに退職したことだといいます。退職者の多さを不審に思ったスタッフが、改めて退職理由を確認したところ、逮捕された元部長に関連して「会社が怖くなってしまった」とする回答があったとのことです。
元部長は約10年勤務していましたが、問題発覚後の2023年10月に自主退社したとされています。
背任罪とは
今回の事件の逮捕容疑となった背任罪。
背任罪は、「他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたとき」に成立すると定められています(刑法第247条)。
財産上の損害には、お金や物を不正に得ることに限らず、本来であれば得られるはずだった利益や、機会を失うことなども含まれます。
罰則として、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される可能性があります。
商品値引きでも背任成立?
背任罪となりうる典型的な事例として、以下の事例が挙げられます。
・会社の従業員が、取引先からキックバックを受ける
・金融機関の担当者が、財務状態の悪い会社に担保なしで貸付をする
・営業秘密を流出させる
これ以外にも、会社の商品やサービスを勝手に値引きすることで背任罪が成立するケースもあります。
例えば、知人などに対し会社に無断で商品の値引きをした場合、「第三者の利益を図った」として、図利加害目的が認められると考えられるからです。
一方で、商品に人気がなく在庫が余っていた状態で、在庫処分の意味合いでやむなく値引きをした際には、図利加害目的が認められず、背任罪は成立しないとされています。
コメント
会社CMに、社長自らが出演し、話題を呼んでいた夢グループ。
今回の事件を受け、SNSでも一時「夢グループ」がトレンドワードとなるなど、注目度の高さがうかがえました。
背任容疑で社員が逮捕されたことは、言うまでもなく、会社にとってマイナスな事態ですが、一方で、社長が逮捕前に元部長の男と真摯に話し合いをしたことや、逮捕後の記者会見で誠実に説明する姿を評価する声も上がっています。
事件やトラブルが起きた時に、会社のトップが社員の不祥事に適切に対応し、外部への説明責任を真摯に果たすことの重要性を再認識させる一件ともなりました。
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