最低利用期間を表示せず誤認の恐れ、消費者団体が都内のレンタルサーバー会社提訴
2024/07/05 コンプライアンス, 広告法務, 消費者契約法, 景品表示法, IT
はじめに
最低利用期間を表示することなく、「初期費用無しでレンタルサーバーを利用できる」と誤認させる表示をウェブサイト上で行ったのは、景品表示法違反(有利誤認)にあたるなどとして、5月20日、消費者団体がレンタルサーバー事業者を提訴していたことがわかりました。
初期費用に関する有利誤認表示の疑い
提訴されたのは、都内でレンタルサーバーやWEB制作事業などを行う株式会社オアシスです。オアシスは自社のウェブサイトのトップページに、「初心者アフィリエイター応援プラン」と称して、
・通常99,000円のところ、初期設定費用0円で自分のサイトが完成できること
・レンタルサーバーは月額9,800円で利用できること
などを表示しています。
その一方で、レンタルサーバー利用規約第13条にて、「初心者アフィリエイター応援プラン」の最低利用期間である1年以内の解約については、初期設定費用(99000円)を全額支払う必要がある旨を定めています。
しかし、当時、ウェブサイトのトップページ上に最低利用期間についての記載はなく(現在は追記済)、「月額9,800円を支払えば、いかなる場合も初期設定費用がかからず、レンタルサーバーを利用できる」かのような表示がなされていたといいます。
そうした中、ある消費者(A氏)が、アフィリエイトでの副業のため、オアシスとの間でレンタルサーバー契約を締結。しかし、思うようにアフィリエイト収入を得られなかったため、レンタルサーバー契約を直ちに解約したところ、オアシスから10万円以上の請求を受けたということです。
栃木県宇都宮市の適格消費者団体「とちぎ消費者リンク」は、A氏から消費生活センターなどを通じて、被害を把握。同様の被害相談が栃木県内の消費者センター、独立法人国民生活センターに多数寄せられていたことから、同団体は2023年6月以降、オアシスに是正の申し入れを行いました。
しかし、受け入れてもらえなかったため、消費者契約法に基づき消費者に代わり事業者の不当行為への差し止め請求権を有した同団体は、オアシスの提訴に踏み切ったということです。
同団体は訴状の中で「オアシスのWEBのトップページには、最低利用期間の記載はなく、月額9800円を支払えば、いかなる場合も初期費用がかからず、レンタルサーバーを利用することができるかのように表示されており、本件規約で定められた最低利用期間や同期間中の解約により、初期設定費用が発生することは読み取れない」と指摘。
景品表示法30条1項2号の「実際の価格よりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示(有利誤認表示)」にあたるとして、表示の差し止め等を求めました。
サブスク申込時に事業者が確認すべきこと
今回の訴訟で争点となった月額サービスの解約。昨今では、月額サービスなどの継続購入・定期購読などのサービスをオンライン上で契約し、利用開始する流れが一般的になりました。
オンライン上で契約手続きを完結できることで利便性の向上が見られた一方、消費者側の契約書の重要事項の読み飛ばしや事業者側の説明懈怠などの例が見られ、トラブルの源となっているといいます。
そのため、2022年6月1日の改正特定商取引法の施行に伴い、消費者庁は事業者に対し、ウェブサイトやアプリでサブスクリプションサービスを申し込む際の「最終確認画面」にて、以下の契約事項をサービス申込者が簡単に確認できるよう明示する必要があると告知しています。
■提供するサービスの期間・回数等に関する事項
・サービスの提供期間や提供時期(無期限や自動更新である場合には、その旨も)。
・期間内に利用可能な回数が決まっている場合には、その内容
・申し込んでいるサービスプラン
■提供するサービスの料金に関する事項
・無料で使える期間が終了すると自動で有料プランに移行するなど、途中から金額が変わる場合には“有料プランに切り替わる時期”や“有料プランで支払う金額“
・支払時期・方法(いつ、いくら支払うのか / どのような方法で支払うのか)
■キャンセル・解約に関する事項
・キャンセル・解約の方法(連絡方法・連絡先)や条件。特に、申込時と比べて制限的・複雑な方法が必要な場合には、その旨の最終確認画面への明示が必要
・解約等の申出期限がある場合には、いつまでに申し出る必要があるか
・違約金が発生するなどの不利益が生ずる場合には、その旨と内容
サブスクリプションサービスをオンライン契約により提供されている事業者様へのお知らせ 改正法への対応について(消費者庁)
コメント
今年1月に国民生活センターが行った発表によると、「通信販売での定期購入」に関する相談件数は2023年が10,558件で、2021年からの2年間で約80%増となっているということです。
中でも、購入は「1回限り」であることを確認したのに、複数回受け取ることが条件の定期購入になっていたケース、「いつでも解約可能」と謳いつつ、販売業者になかなか連絡が取れないケース、解約時に予期せぬ請求を受けるケースなど、解約や割引の条件をめぐる相談が後を絶たないといいます。
トラブルに対応する人的コスト、トラブル対応に追われる従業員のモチベーションの低下、噂が広まることによるレピュテーションリスク、後日の訴訟リスクなどを考えると、消費者に誤解が生じない表示を心掛けるメリットは、事業者側にとっても小さくないと考えられます。
消費者庁から告知された明示事項はもちろんのこと、自社における過去のトラブル事例なども踏まえ、適切な表示と説明を行うことが求められます。
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