KDDI、ローソンで手続き完了、スクイーズアウトについて
2024/08/26 契約法務, 商事法務, 戦略法務, 会社法
はじめに
KDDIが進めていたローソンとの資本業務提携の手続きが15日に完了していたことがわかりました。これによりローソンの株主はKDDIと三菱商事だけになるとのことです。今回はスクイーズアウトについて見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、KDDIと三菱商事はローソンの共同経営に関する資本業務提携契約を締結し、KDDIによりローソン株式のTOBが実施されていたとされます。TOBは4月26日に成立し、7月3日に開催されたローソンの臨時株主総会決議に基づいて同月25日に自己株式消却、26日に株式併合が実施されたとのことです。この株式併合で三菱商事に端株が発生しており、8月15日のKDDIに対する端株譲渡によってローソン株のスクイーズアウト手続きが完了したとされます。これによりローソンの発行済株式は2株となり、株主はKDDIと三菱商事のみとなりました。
スクイーズアウトとは
スクイーズアウトとは、個別の株主の同意を得ずに強制的に少数株主の株式を取得し、少数株主を締め出すことを言います。これにより持株比率を100%にしたり、完全子会社化が可能となります。このスクイーズアウトはM&Aや上場廃止をする場合に利用されます。スクイーズアウトのメリットとしては、少数株主を排除することによって会社の意思決定をスムーズに行うことが可能となります。会社の実質的所有者である株主の意見を経営に反映させることは重要ですが、ときに柔軟で迅速な経営判断を阻害することがあり、そのような事態を回避できます。また完全子会社化による税制上の優遇や、上場廃止による敵対的買収の回避といったメリットもあります。中小企業の場合は株主が単一になることによる株主総会の開催省略も大きいと言えます。一方でスクイーズアウトには多額の資金が必要であったり、少数株主からの訴訟、上場による資金調達ができなくなるといったデメリットもあります。
スクイーズアウトの手法
スクイーズアウトの具体的な手法としては、株式併合や特別支配株主の売渡請求、株式交換が挙げられます。株式併合は複数の株式を1つの株式に圧縮する手続きです(会社法182条)。通常は市場に出回りすぎた株式を減少させ、1株あたりの株価を上昇させるといった場合に利用されますが、少数株主の株式を1株未満となる併合割合で圧縮し、強制的に買い取るといったやり方でスクイーズアウトにも利用されます。株式併合を行うには株主総会の特別決議が必要であることから、議決権の3分の2の確保は必要となってきます(180条~182条の6)。すでに90%以上の議決権を確保できている場合は、特別支配株主の株式売渡請求を行うことが可能です(179条1項)。これは株主総会決議を経ることなく強制的に少数株主の株式を買い取ることができる制度です。会社が会社を完全子会社化する場合にしか利用できませんが株式交換という方法もあります。これは株主総会の特別決議によって行いますが、子会社となる会社の株式を強制的に親会社となる会社に取得させる制度です(769条1項)。なおかつては全部取得条項付種類株式が利用されておりました。これはすべての株式を全部取得条項付種類株式として即取得してしまうというものでした。現在では株式併合などが主に利用されております。
少数株主からの対抗策
このようなスクイーズアウトでは、少数株主を強制的に退場させるものであることから、株主側にも一定の対抗策が用意されております。具体的には、差止請求、反対株主の株式買取請求、価格決定申立、株主総会決議取消の訴えなどが挙げられます。まず株式併合が法令・定款に違反し、株主が不利益を受けるおそれがある場合には株式併合の差止を請求することが可能です(182条の3)。株主総会決議に取消事由がある場合や、株主への事前の通知・公告を欠いていた場合などが差止事由と言えます。次に株式併合によって1株未満の端数が生じる場合は、反対株主は公正な価格で買い取ることを請求できます(182条の4第1項)。買取請求をするには株主総会に先立って反対する旨を会社に通知し、実際に決議で反対する必要があります(同2項)。そして株式併合等のスクイーズアウトでは多くの場合株主総会決議による承認が必要となりますが、その手続き等に法令・定款違反がある場合には決議取消の訴え等が提起されることもあると言えます(831条1項1号)。
コメント
本件でローソンでは約5000万株を1株とする株式併合がなされ、約1億株が消滅し発行済株式総数は2株となりました。これによりローソン株は7月23日まで整理銘柄となり7月24日をもって上場廃止となりました。発生した端株は8月15日にKDDIに譲渡されスクイーズアウトの手続きが完了したこととなります。以上のように会社法ではいくつかのスクイーズアウトの手法が用意されております。その目的やその時点での議決権割合などに応じて利用できる手法も変わってきます。また追い出されることとなる少数株主についてはそれぞれ差止請求などの対抗策も用意されております。それぞれの手法の手続きやメリット・デメリット、少数株主の意向などを踏まえて、自社にあった手続きを慎重に検討していくことが重要と言えるでしょう。
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