公取委がパルシステムに是正勧告、下請法の運用状況について
2024/09/07   契約法務, コンプライアンス, 下請法

はじめに


公正取引委員会は4日、「パルシステム生活協同組合連合会」に対し下請法に違反する行為があったとして是正を求める勧告を行っていたことがわかりました。商品を仕入れる際に不当に減額していたとのことです。今回は下請法の規制と運用状況を見ていきます。
 

事案の概要


 報道などによりますと、パルシステムは2023年4月から2024年6月に、メーカーから自社のプライベートブランドの商品を仕入れる際に、不当に代金を減額していたとされます。具体的には、セールで消費者に値引きをする際、発注後の支払い段階になって、メーカーなどに対して支払う発注代金を減額していたとのことです。これにより下請事業者4社に対して総額1340万1664円差し引き、また配送センターを利用する際には「DC使用料」として1社に対して1430万7414円を差し引いていたとされており、違反額は総額約2700万円にのぼるとされます。同社は既に違反行為を認め、全額を下請事業者に支払済みとのことです。
 

下請法の適用対象


 下請法は親事業者側と下請事業者の資本金の過多で適用が決まる仕組みとなっております(2条1項~8項)。たとえば物品の製造・修理委託や政令で定める情報成果物・役務提供委託の場合、親事業者の資本金が3億円超の場合、下請事業者の資本金が3億円以下で下請法が適用となります。親事業者の資本金が1000万円超~3億円以下の場合は下請事業者の資本金が1000万円となります。これは個人事業主も含まれます。これ以外の情報成果物作成・役務提供委託の場合は親事業者で5000万円超、下請事業者が5000万円以下、または親事業者の資本金が1000万円超~5000万円以下で下請事業者が1000万円以下となります。
 

下請法による規制

 下請法が適用される場合、親事業者には様々な義務と禁止事項が課されることとなります。義務としては書面の交付義務(3条)、書類の作成保存義務(5条)、代金支払期日を定める義務(2条の2)、遅延利息支払い義務(4条の2)などがあります。そして禁止事項としては、受領拒否(4条1項1号)、代金支払遅延(同2号)、代金減額(同3号)、返品(同4号)、買いたたき(同5号)、購入・利用強制(同6号)、報復措置(同7号)、有償支給原材料等の対価の早期決済(2項1号)、割引困難な手形の交付(同2号)、不当な経済上の利益提供要請(同3号)、不当な給付内容の変更・やり直し(同4号)が禁止されます。違反した場合には公取委からの勧告がなされ(7条)、書面交付義務、書類の作成義務に違反した場合は罰則として50万円以下の罰金が規定されております(10条)。

 

下請法の運用状況

 公取委が発表した昨年度の下請法運用状況によりますと、昨年度の勧告件数は13件とのことです。対象となった行為類型の内訳は減額が6件、返品が2件、買いたたきが1件、購入等強制が3件、不当な経済上の利益提供要請が4件、やり直し等が1件とされます。過去5年間の推移では、令和元年9件だったものが令和2年に5件に減少したものの、そこからまた年々増加しており、令和4年で7件、そして昨年13件と再び右肩上がりで推移しております。下請事業者が被った不利益の原状回復額は令和5年度が37置く2789万円と過去5年で最高額となっております。なお指導件数は令和5年度が8,268件で過去5年間ほぼ横ばい状態と言えます。

 

コメント

 本件でパルシステムは出資金約159億円の事業者で、資本金3億円以下の事業者に対し、責に帰すべき理由がないのに下請代金額を一方的に減額し、その総額が2880万9078円とされます。これに対し公取委は違反事実を理事会で確認すること、再発防止のための研修や体制の整備を行うこと、それらの措置を採ったことと減額分を下請事業者に支払ったことを役員と職員に周知すること、取引先にも通知することを内容とする勧告を出しました。以上のように下請法では、下請事業者に対する不当な減額行為や買いたたきなどを禁止しております。また書面の作成や交付も義務付けられております。これは契約違反などの際に下請事業者に訴訟等の便宜を図るためと言えます。近年、一時減少していた下請法違反は再び増加傾向にあります。自社で取引先に無理に代金を減額したりしていないか、今一度現場を確認しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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