類似店名差止訴訟で「すしざんまい」が逆転敗訴、不正競争防止法の規制について
2024/11/01 コンプライアンス, 訴訟対応, 不正競争防止法, 外食
はじめに
すしチェーン「すしざんまい」を展開する喜代村(東京)が「ダイショージャパン」(中央区)に対し、「Sushi
Zanmai」という店名の使用差止を求めた訴訟の控訴審で知財高裁が30日、喜代村側の逆転敗訴判決を出していたことがわかりました。すしざんまいと誤認する可能性は低いとのことです。今回は不正競争防止法による規制について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、ダイショージャパンはマレーシアで「Sushi
Zanmai」の店名で飲食店を経営し、遅くとも2014年からホームページに「寿司三昧」「Sushi
Zanmai」と表示していたとされます。これに対し、「すしざんまい」を運営する喜代村は商標権侵害や不正競争防止法の不正競争行為に該当するとして、店名やホームページでの表示の差止と、計1100万円の損害賠償を求め東京地裁に提訴していたとのことです。一審東京地裁は、漢字やアルファベットといった表記上の違いはあっても、呼称や「すしに熱中する」という観念は同一であり表示が類似しているとして、ホームページからの削除や600万円の支払いを命じました。
不正競争防止法による表示規制
不正競争防止法2条1項1号および2号によりますと、他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一もしくは類似の商品等表示を使用し他人の商品または営業と混同を生じさせる行為、または自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一もしくは類似のものを使用する行為を不正競争行為の一種として禁止しております。これを一般に「周知表示混同惹起行為」と言います。他社の有名な商品名やロゴ、パッケージデザインなどを無断で使用し、消費者に出所を誤認させるといった行為です。有名なレストラン等の店舗のデザインや看板、また営業形態自体もその対象となります。以下具体的に要件を見ていきます。
周知表示混同惹起行為の要件
周知表示混同惹起行為の具体的な要件は大きく次の4つとなります。(1)他人の「商品等表示」であること、(2)周知性、(3)無断使用、(4)混同のおそれとなります。商品等表示とは、氏名や商号、看板、特徴的な店舗表示、商品の容器、商品形態、店舗の外観、営業手法などやらゆるものが該当する可能性があります。これは商標法の商標や意匠などよりも広い概念と言えます。近年では「コメダ珈琲」や「や台ずし」の店舗の外観に商品等表示該当性が認められております(東京地裁平成28年12月19日等)。周知性とは、需要者の間に広く認識されている状態を言います。需要者とは当該商品の主な取引相手を言います。そしてその地理的範囲もその対象商品の市場内でよいとされます。そして混同は、商品や営業の主体について、需要者の間で誤認が生じることを言います。これは現実に誤認が発生している必要はなく、その可能性があるだけでよいとされております。
不正競争行為に対する是正措置
以上のような不正競争行為が行われ、それによって営業上の利益が侵害されるおそれがある場合、侵害の停止や予防を請求することができます(3条1項)。また侵害行為によって作成された物や侵害行為を構成した物を廃棄することを請求したり、営業上の信用を侵害された場合にはその信用を回復するに必要な措置を請求することもできます(14条)。また故意または過失により不正競争を行い、営業上の利益を侵害した者に対しては損害賠償請求も可能です(4条)。この場合、侵害者が侵害行為によって得た利益の額が権利者の損害額と推定する旨の規定が置かれており、権利者の立証の負担を軽減しております(5条)。
コメント
本件で東京地裁は、不正競争防止法以前に商標権侵害を認めホームページ上の表示の差止と約600万円の損害賠償を命じました。これに対し知財高裁は一審判決を破棄し請求を棄却しました。ホームページ上の「Sushi
Zanmai」の表示は日本国内の消費者に広告する目的ではなく、閲覧者が「すしざんまい」の広告と誤認する可能性は低いとのことです。以上のように不正競争防止法では、商標や商号、氏名や商品名、パッケージや店舗外観、販売手法など様々なものを商品等表示として、他社のものを無断で使用したり類似のものを使用することを禁止しております。古い例では通販カタログによる営業方法そのものを表示として認めた例も存在します(大阪高裁昭和58年3月3日)。どのような権利がどのような法律によって保護されているのかを把握し、自社のIPや営業手法をどのように守れるのかを検討しておくことが重要と言えるでしょう。
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