屋根の修繕工事でクーリング・オフを故意に伝えず契約か?社長逮捕
2024/11/21   コンプライアンス, 行政対応, 消費者取引関連法務, 特定商取引法, 建設

はじめに


屋根の修繕工事を勧誘する際、「クーリング・オフ」について意図的に説明しなかったなどとして、リフォーム会社(大阪市中央区)の社長が特定商取引法違反の疑いで逮捕されました。

京都府内では今年9月以降、「屋根の修理で点検商法を受けている」などの通報や相談が約300件寄せられていたということです。

 

クーリング・オフを説明せず書面でも交付せずか


報道などによりますと、逮捕されたのは、大阪市にあるリフォーム会社「株式会社新日立建託」の社長の男(27)です。社長は今年9月、京都府に住む男性(72)と住宅の屋根の修繕工事を契約しました。その際、社長は契約後でも期間内であれば契約を解除できる「クーリング・オフ」について故意に説明しなかった上、書面でも交付しなかった特定商取引法違反の疑いがもたれています。

社長は、いわゆる“点検商法”をしていたとも報じられています。
“点検商法”の典型的な手口は以下のとおりです。

・営業担当などが家庭を訪問。その際、「家屋等の無料点検」を提案する
・家主の了承を得ると、点検を実施、または点検したふりをする
・点検の結果、「屋根がずれている」「水漏れの恐れがある」などと伝え、顧客の不安をあおる(または、しつこい勧誘により断りきれない状態にする)
・不必要または法外な価格のリフォーム工事や商品交換、駆除作業等を行う契約を締結する

今回の事件でも、営業担当アルバイトによる訪問営業をきっかけに社長が屋根の点検を実施。その際、「瓦がつぶれていてこのままだと水がしみこみ屋根がつぶれる。すぐに直さないといけない」などと家主の男性に対して伝えていたということです。また、社長は契約について「誰にも言わないでください」とも話していたといいます。

新日立建託では、27人の営業担当アルバイトが訪問営業を行い、屋根の点検を勧誘していたといいますが、これらのアルバイトをSNSなどで集めていた疑いが持たれています。警察は、社長が匿名・流動型犯罪グループ、いわゆる“トクリュウ”を形成していたとみて捜査を進めているということです。

なお、京都府内では今年9月以降、屋根の修理で点検商法を受けているなどの通報や相談が約300件寄せられていたということです。
顧客の中には新日立建託と約800万円の契約を締結した人もいたといいます。

 

クーリング・オフについて


クーリング・オフとは、いったん契約の申し込みや契約の締結をした場合でも、一定の期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりできる制度です。
消費者が契約後に、内容を再度検討できるように配慮したものです。

特定商取引法におけるクーリング・オフ期間は、8日または20日間となっており、取引内容によって異なります。

○8日間
・訪問販売
・電話勧誘販売
・特定継続的役務提供
(エステ、美容医療、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスなど)
・訪問購入
(業者が消費者の自宅などを訪ねて、商品の買い取りを行うもの)

○20日間
・連鎖販売取引
・業務提供誘引販売取引
(内職商法、モニター商法等)

国民生活センター(独立行政法人)

事業者は、契約の申込みを受けたとき又は契約を締結したときには、クーリング・オフなどについて記載した書面を消費者に交付しなければなりません。
クーリング・オフの起算日は、この書面を消費者が受領した日を1日目として数えます。

ちなみに、消費者に対し交付する書面には、以下を記載する必要があります。

1. 商品(権利、役務)の種類
2. 販売価格(役務の対価)
3. 代金(対価)の支払時期、方法
4. 商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
5. 契約の申込みの撤回(契約の解除)に関する事項(クーリング・オフができない部分的適用除外がある場合はその旨含む。)
6. 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
7. 契約の申込み又は締結を担当した者の氏名
8. 契約の申込み又は締結の年月日
9. 商品名及び商品の商標又は製造業者名
10. 商品の型式
11. 商品の数量
12. 引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
13. 契約の解除に関する定めがあるときには、その内容
14. そのほか特約があるときには、その内容

なお、クーリング・オフに関する事項については、赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。さらに、書面中の字の大きさは8ポイント以上であることが求められています。

 

コメント


特定商取引法の規定に違反した場合、業務改善指示や業務停止命令・業務禁止命令などの行政処分の対象となります。また、場合によっては罰則が科されることがあります。

特に訪問販売等については、消費者保護のため、かなり厳格な規制が行われています。クーリング・オフをはじめとする制度や規制をしっかり理解して、事業を進めることが重要です。

 

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