食品スーパー「DZマート」運営会社、優越的地位の濫用疑いで警告
2024/12/19 コンプライアンス, 行政対応, 独禁法対応, 独占禁止法, 小売
はじめに
公正取引委員会は12月13日、スーパー「DZマート」を運営するダイゼンに独占禁止法違反(優越的地位の乱用)のおそれがあるとして警告を行いました。納入業者から不当に協賛金を徴収するなどしたと指摘されています。
取引先からの協賛金については、今回のように優越的地位の濫用と判断されるケースもあり、慎重な取り扱いが必要になります。
納入業者からセール名目で協賛金
今回、警告を受けたのは、北海道で食品スーパー30店舗を運営している株式会社ダイゼンです。
公正取引員会などによりますと、ダイゼンは2022年6月から今年11月3日までの期間、自社に継続して商品を納入している約50の納入業者に対し、次の行為を行ったとされています。
(1)協賛金の負担要請
自社店舗の新規開店セール・決算セール(毎年9月)・歳末セール(毎年12月)などの際に協賛金を提供させた。協賛金の負担額の算出根拠・使途などは明確にされておらず、また、納入業者はこれらのセールによる販売促進効果等の利益を得る取引関係にはなかった。
(2)従業員の派遣要請
自社店舗の新規開店または改装開店にあたり、商品の陳列などの開店準備作業を行わせるため、納入業者に対し、従業員などを店舗に派遣するよう要請していた。その際、あらかじめ派遣条件は明確にされておらず、また、納入業者は新規開店または改装開店による販売促進効果等の利益を得る取引関係にはなかった。
報道などによりますと、ダイゼンは協賛金として、一社につき数万円から数十万円を提供させていたということです。また、納入業者に派遣させた従業員に対し、他の納入業者が納品した商品の陳列なども行わせていたと報じられています。
公正取引委員会は、ダイゼンの一連の行為が、独占禁止法が禁止する「優越的な地位の濫用(第2条9項5号ロ)」に該当するおそれがあるとして警告を行いました。
ダイゼンは警告を受けてコメントを発表。今回の警告を重く受け止め、今後は法令遵守の意識をさらに高め、社内体制の見直しを行うとしています。
協賛金が問題となるケース
今回のダイゼンのケースでも問題となった「協賛金」。取引上の地位が相手方に優越している事業者(主要取引先など)からの金銭の負担要請が次のいずれかに当てはまる場合、独占禁止法違反のおそれがあります。
(1)あらかじめ計算できない不利益を相手方に与えることになる場合
(2)相手方が得ることになる直接の利益(売上増など)に照らし、合理的と認められる範囲を超えた負担を課し、不利益を与える場合
一方で、協賛金の負担が、納入業者が得ることになる直接利益の範囲内で、自由な意思によるものであれば、独占禁止法上、問題とはならないとされています。
「協賛金」をめぐる問題は、スーパーマーケットと納入業者のほか、家電量販店と家電メーカー、ホームセンターと納入業者との間など、複数の業界で見られています。
2018年に公正取引委員会が行った調査では、ドラッグストアなど大型小売店と納入業者の取引の1割以上で、セール協賛金の負担などの取引があることがわかったといいます。
公正取引委員会は、こうした協賛金の負担要請が独占禁止法に違反するおそれがあるとして、日本チェーンドラッグストア協会などの業界団体に改善を求めています。
コメント
協賛金を巡っては、過去にアマゾンジャパンが約1400の取引業者に対し、「協賛金」の名目で仕入金額に一定の料率を乗じて算出した金額の支払いを求めていたとして問題となりました。その総額は約20億円にのぼるとされています。
これを受けて、公正取引委員会は2020年7月10日に確約手続を実施。アマゾンジャパンは、
・独占禁止法違反行為を行わないこと
・履行状況を今後3年間報告すること
・取引業者に対し、損害相当額を返金すること
などの内容をまとめた確約計画を公正取引委員会に提出しています。
このように、協賛金の支払い要請が「優越的地位の濫用」と判断された場合、消費者や取引先からの企業イメージが低下するうえ、損害相当額の全額返金を求められるなど、大きなリスクを負うことになります。
その一方で、こうした協賛金に関するやり取りは現場レベルで行われることも少なくありません。
社内あまねく、独占禁止法について周知・啓蒙することが求められています。
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