「選択的夫婦別姓」、立民が法案提出へ 公明・国民民主も前向き
2025/01/16 労務法務, 情報セキュリティ, 労働法全般, 法改正, 女性活躍推進法
はじめに
秋の総裁選でも注目された、「選択的夫婦別姓制度」。立憲民主党が同制度の導入を目指し、必要な法案を通常国会に提出する方針で、今後、議論が活発になる見通しです。
2021年には「夫婦別姓を選べないのは憲法違反である」と主張する原告の訴えを棄却する判決が最高裁判所で下されています。
立憲が法案提出へ 今後議論活発に
立憲民主党の野田佳彦代表は1月4日、選択的夫婦別姓制度を実現する法案について「約30年にわたる宿題を議論の俎上に載せ、成立に向けて努力したい」「野党としての考え方をまとめて通していきたい」と述べました。
与党の公明党や、国民民主党も導入に前向きな姿勢を見せていることから、1月24日からの通常国会で他の野党と法案を共同提出する考えです。
選択的夫婦別姓制度の導入をめぐっては、一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)などからも実現を求める声が上がっています。
2024年10月1日に開催されたシンポジウムでは「各企業が女性活躍の取り組みを推進する際、障壁となっている社会制度の一つが、夫婦同姓制度である」として、自由に姓を選択できる制度の整備を強く要望しました。
こうした状況に対し、石破首相は自民党内での議論を活発化させていく考えです。自民党内では導入に前向きな姿勢を見せる議員がいる一方、根強い慎重論が残っています。慎重派の意見としては、「子どもの姓をどうするのか」、「家族観や社会のあり方に大きく影響を与える」といったものがあり、十分な議論を尽くすべきとしています。
一方、日本維新の会は、夫婦別姓を認めるべきだとし、「旧姓に一定の法的根拠を認めることでそれが実現できるのでは」と主張しています。
サイボウズ社長ら「夫婦別姓認めないのは憲法違反」提訴も最高裁が合憲判断
夫婦別姓をめぐり、最高裁判所が判断を下した事例があります。
ソフトウェア開発会社「サイボウズ株式会社」の社長ら4人が、夫婦別姓を認める法制度がないのは憲法違反であるとして国を訴えた裁判です。
夫婦の姓については、民法750条で「夫婦は婚姻の際に夫または妻の氏を称する」と定められています。
原告側は、「日本人と外国人が結婚した場合には、戸籍法で同姓か別姓かを選択可能である」と指摘。それにも関わらず、日本人同士でこうした選択ができないのは“法の下の平等”などに反し、違憲であると主張しました。
2021年6月23日、最高裁判所は「夫婦同姓を定める民法が合憲である以上、不利益への対処は国会の立法裁量に委ねられている」として、原告らの訴えを棄却。憲法違反ではないとする判決を下しました。
もっとも、この判決では、裁判官15人のうち4人が「違憲」と判断しています。
原告の一人であるサイボウズの青野慶久社長は、結婚時に妻の姓で婚姻届を提出。仕事などでは旧姓の「青野」を名乗っていますが、不便さを感じてきたといいます。
日本では現在、夫婦別姓を選択することはできません。そのため、仕事で旧姓を継続して使用する人が少なくありません。
職場での呼称が旧姓であっても表向き問題は生じませんが、契約締結の場面や海外出張時のパスポート提示の場面などで、使用している姓と法律上の姓が異なることでトラブルとなった事例が確認されているということです。
コメント
現状、結婚にあたり、夫婦の95%が男性側の姓を選択しているといわれています。その結果、健康保険証や運転免許証をはじめとする身分証明書の改姓手続き、銀行口座・携帯電話・クレジットカードなどの名義変更など、「名字の変更による不便や不利益の負担が女性に偏っている(経団連談)」という実態があります。
もし、今後、「選択的夫婦別姓制度」が導入された場合、旧姓に戻すことを希望する人が一定数出て来ると考えられます。
その場合、事業者の立場では、労働者名簿・社員名簿の更新、社員の租税や社会保障に係る変更手続き、給与振込先口座情報の一部変更、取引先情報の更新などの対応が求められることになります。
法改正時に迅速に対応ができるよう、引き続き動向を注視することが大切です。
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